古川 和男―略歴 


  株式会社 インターナショナル トリウムエナジー& 熔融塩テクノロジー会長・研究所長

生まれ:1927年(昭和 2年)2月13日 (昭和の51日目)  大分県 北海部郡 佐賀関町古宮社宅
学歴:大分市中島小学校、大分中学校、第五高等学校 理科乙類 (敗戦後半年、病気休学)
1951年(昭和 26年)3月 京都大学 理学部 化学 卒業。
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職 暦:

1951年(昭和 26年)4月 東北大学金属材料研究所,無機液体構造化学の研究
1960年(昭和 35年)8月―1961年(昭和36年)11月 英国科学工業研究省(DSIR)の特別研究費で
 London大学 Birkbeck College物理教室(J.D.Bernal教授)より招聘さる

1961年(昭和 36年)12月 東北大学助教授
1962年(昭和 37年)2月 日本原子力研究所に出向、高温融体の核エネルギー利用研究
1964年(昭和 39年)4月 副主任研究員
1966年(昭和 41年)4月 材料工学研究室長 5月ナトリウム研究室長
1966年(昭和41年)6月 動力炉開発推進本部(総理府)専門委員 69年7月 主任研究員
1971年(昭和46年)4月 高温融体材料研究室長
1983年(昭和58年)4月 東海大学 開発技術研究所 教授
1996年(平成8年)3月 退職

1996年(平成8年)4月 トリウム熔融塩国際フオーラム 代表
2002年(平成14年)7月 トリウム熔融塩国際研究所 所長(社長)
2006年(平成18年)6月 佐藤栄作記念財団応募論文[核拡散防止]に「最優秀賞」
2008年(平成20年)10月 NPOトリウム熔融塩国際フォーラム 理事長
2010年(平成20年)6月 株式会社 インターナショナル・トリウムエナジー& 熔融塩テクノロジー
 会長・研究所長【註:1997年以降は、当用漢字に縛られず”熔融塩“の字句使用を推奨。】

学位・資格等:
理学博士 (京都大学:1960年 9月)『熔融体の構造の研究』
Ukrainian Academy of Science: foreign member
International Disordered-System Associates: former President
熔融塩熱技術研究協会:元会長 NPOトリウム熔融塩国際フォーラム:理事長その他

代表的「研究開發」項目:

(1)無機液体構造化学の体系化: 単原子液体、液体金属、熔融塩、ガラス等。
(2)高速増殖炉用 液体ナトリウム技術の基礎作り。
(3)高温融体(液体金属・熔融塩)の 核エネルギーシステムへの応用:
   核分裂炉・核融合炉・加速器(核スポレーシヨン)炉などへ。
(4)トリウム熔融塩核エネルギー協働システム(THPIMS−NES)、国際共同開発。

 論文・解説等:無機液体構造関係、融体技術関係、トリウムエネルギー関係― 各約百篇ずつ。
 特許: 国内・外      合計約70件。


  補足情報(ネット上) 補足資料はこちら    Who's Whoはこちら

  
「原発革命」5月30日_2011, 改定新版文春より発売!詳細はこちら
   緊急増補新版を立花隆が激賞!週刊文春P116-117,6月9日(木)号
(平成23年)
                           記事はこちら  
   
週刊文春(ワード形式)  116頁、 117頁
   
   月刊『致知』6月号40〜44頁はこちら


“核分裂エネルギー”を全人類のものに!"   2010.7.25

米英訪問記                2010.11.7   

核拡散防止への実効ある提言       2006.6.30

エネルギー技術革新を求めて50年―核拡散のない液体燃料トリウム熔融塩炉―
       
古川 和男(東海大学紀要工学部Vol.,49 No.2,2009,pp.1-10)

50 Years of Searching for Means of Energy Technology Revolution?
  Thorium Molten-Salt Reactors without Nuclear Proliferation ?
                  by Kazuo Furukawa) (Abstract)

The InternationalThorium Molten-Salt Reactor Developmental activities
 
  Kazuo Furukawa(Invited Lecture at Oak Ridge National Laboratory, Oct.25, 2010)

International Thorium Molten-Salt Forum (ITHMSF, President)
  International Thorium Energy & Molten-Salt Technology Inc. (IThEMS, Chairman)

A road map for the realization of global-scale thorium breeding
fuel cycle by single molten-fluoride flow

 
 Kazuo Furukawa (Energy Conversion and Management 49 (2008)


朝日新聞 「私の視点」 投稿原稿 2011.3,17

  
「福島緊急事態への対処体制へ疑念」

      NPO・トリウム熔融塩国際フォーラム・(元東海大学教授)古川 和男

一昨日辺りには、福島原発の事態もピークを越したのではないかと思いつつあった。しかし今
は違う。私より何十倍も情報を持ち、あの原発の設計に関わった友人から「少なくも4号は、
注水に失敗すればチャイナシンドロームである。しかも、注水困難な場所で500トンの水必
要。今後の数日が運命の分かれ目。」と聞かされたからである。

今頃になって、「5,6号も危いので電源工事に掛るが、放射能が高いので今夜は見合わせる。」
と報道している。真相は知るべくもないが、今まで何をしていたのであろう? また、今朝の
報道で、「内閣官房参与に、放射線安全専門の小佐野氏任命」とあった。良い人事とは認める
が、今頃寝言ではないかと思う。

これは最高度水準の「国難対処プロジェクト」なのである。しかし、その自覚が菅首相にも東
電社長にもあるとはとても思えない。否ある、と強弁するであろうが、「本質を知らない空威
張りか、格好付け宣伝」に見える。だから、官房長官などが無責任にもTVに出ずっぱりで、
「お疲れ様」と言われ今寝ていると。考えられない醜態である。あれは、広報部長の仕事であ
る。時に顔出すのは良いにしても。

「プロジェクト」とは、「プロジェクト・リーダーを任命する事」なのである。チェルノブイ
リ時の様に、「レガソフ」を任命することである。日本人は、遂にその原則を学習できていな
いのである。最近の、全ゆる種類の国内外問題は責任者不在で失敗しているではないか。これ
がまた露見したに過ぎないが、今度はこれでは済まされない。「国家転覆」の危機である。ま
だ遅くない。否遅くても「今日から目覚めて、実行を」。 菅首相は「原子力に強いのだ」と
胸をはったそうだが、知識の問題では無い。知恵、理念、思想の奥底の問題である。

どう言えば本当に判って貰えるのであろうか? レガソフは、事件の翌日からの超人的な苦闘
の末、2年後の事件記念日前夜にピストル自殺した。あの強大硬直したソ連体制と真っ向から
対決した(そして滅ぼした)からである。今の日本の、政府、業界、学界の低俗体質の全てに
挑戦せねば、この問題は解決できない。それは、全国民が一瞬一瞬に見せつけられている現実
の真相なのである。それを乗り越えて、この大国難に挑戦してくれるのが「プロジェクト・リー
ダー」であり、したがって『個人』以外には有りようが無いのである。「そんな事出来る訳が
無い」とあっさり逃避し続けてきたのが、少なくも私が生きて知っている「この3,40年の
日本」であった。しかし、繰り返すが「これは未曽有の大国難」なのである。菅首相は「理解
賛同して実行」する「重大な責務」を正に「自覚」願いたい。一刻を争う「非常時」が今であ
る。

聞いて頂きたかったのは以上であるが、レガソフに付き補足すると、彼は大学を出てすぐに原
発現場を知るべく修行し、現炉型は危険、恐らく「熔融塩炉型」が最良必須と決断し、上述の
任命1ヶ月前には熔融塩炉建設許可をえていたのである。彼らは、私にその3年前に共同開発
を提案していた。今は、漸く世界的にその炉の評価は定まりつつある。原理的に重大事故は起
こさないのである。   (以上)



 
補論  2011.3.21
                      
   
「世界原発戦略の破たんは日本の責任?」
     
        NPO・トリウム熔融塩国際フォーラム 古川 和男 (元東海大学教授)


炉停止後十日を経て炉内崩壊熱は数百kWになり、まだ今後の事態進行は予測困難ではあって
も、何とか最大の危機は脱したかに見える。それで、この大災害の意味する所は何か?如何に
対処すべきか?方向付けを試みたい。

戦後の「原発開発史」は間違:専ら世界の「平和利用」を論ずるが、それは「核戦略の隠れ蓑」
の色が余りに強かった。従って、(原潜用を含めての)早急な「発電実現」に狂奔しすぎ、核
技術の本質に忠実な炉の開発を怠った。

戦中にWignerが「王道」を予言:最初に(プルトニウム生産)実用炉を完成させた彼は、シカゴ
大学ゼミで、核物質の消費量が化石燃料の百万分の1でも、本質は「核物質が変化する(核)化
学反応」だから「炉は化学工学装置」であり、作業媒体は「液体」であらねばならず、恐らく
最良なのは「弗化物熔融塩燃料炉」であろうと予言していた。

高弟Weinbergが「王道」の基礎工事完成:1950‐76年の間、米オークリッジ研究所での努力に
よって、原理が単純で優れているため実に僅かな予算人員でその「技術的実現性を実証」した。
これは、「重大事故を原理的に起こさぬ唯一の炉型」であり、トリウム利用だから核拡散・核
廃棄物対策などにも優れる。

米・世界の核抑止戦略がそれを壊滅させた:それが未だに続いている。

 その帰結が福島原発災害であって、敢えて言えば「日本も被害者」である。何時か何処かで
起きる事態であって、まだ「日本」で良かったのかもしれない。

 日本の責任が重いのは自明であるが、実は「全く行き詰まっている“世界のエネルギー環境
戦略”」を見直す「新革新路線発進」の契機にし、それを世界に示す好機だと日本人は自覚・
自負しその先頭に立つべきである。

 核分裂は二十億年前には「天然原子炉」が稼働したほどの自然現象で、もっと有効に人類は
利用すべきである。少なくも「太陽から来ている核融合エネルギー」の量的有効利用技術が完
成する今世紀末までは。その「再出発の好機」である。日本の科学技術者はその新未来を「確
信」しつつ、志気高く「現実の災害克服・当面絶対必要な既存“原発の安全運転”」に堂々と
挑戦しようではないか!

 それと同時に、全世界の人々に喜んで「受容」して貰える上記の“弗化物熔融塩燃料炉”、
即ち「トリウム熔融塩炉」の開発を本格化させようではないか。これは確かに「新路線」であ
り、「炉専門家達」は実用に数十年かかると断言する。 しかし、我々は国内外の同志の協力
をえてその打開に30年以上創意をめぐらせ、過去の遺産を生かしつつ単純で実現容易な方式
にまとめ、実に僅かな資金で先ず超小型炉を数年で実現させ、標準小型炉を10-15年で完成で
きる新戦略を、最近は特にチェコの協力を得て構築できている。

 これは架空では無い。初期にはソ連(ロシア)、仏電力庁、米オークリッジ研、等々から共
同開発の提案をうけ、最近は他の数ヶ国のほかに中国までが我々に接触してきて既に「国家開
発」を決定した。日本人は知らないが、既に世界は動き出している。

 この戦略は、現実路線を全く乱す事なく民間活力で推進できる。そして、次第に現路線の抱
える技術的諸難問、安全性・経済性だけでなくプルトニウム消滅・廃棄物対策に大きく貢献で
きるのである。                  (以上)



主要な著作・論文集:(詳しくは別記の「補足資料」参照)

“A Structural Model for Monatomic Liquids including Metallic Liquids”:
 Nature(Essay), Vol.184(1959)p.1209-1210

“Structure of Molten Salts near the Melting Point”
Discussins of The Faraday Society, (1962), No.32 P.53-62

“Radial Distribution Curves of Liquids by Diffraction Methods”:
  Report on Progress in Physics(London),Vol.25 (1962)p.395-440

“Ionic Liquids : Alkali Halides and Fluoro-Beryllates”,
  Condensed Matter Physics−Liquids and Solids, Chap.9,
  Ed.S.K.Srivastava, K.Furukawa and S.Baer(2000) INDIAS Pub.

“A Road Map for the Realization of Global-scale Thorium Breeding Fuel Cycle
 by Single Molten-Fluoride Flow“  (和訳あり)
古川和男,荒河一渡,L.Berrin Erbay(トルコ),伊藤靖彦,加藤義夫,Hanna Kiyavitskaya(ベラ
ルース), Alfred Lecocq(仏),三田地紘史,Ralph Moir(米),沼田博雄,J. Paul Pleasant(米),
佐藤譲,島津洋一郎,Vadim A.Simonenco(露),Din Dayal Sood(印),Carlos Urban(ブラジル),
吉岡律夫,17名(海外8名)

共著:Energy Conversion & .management Vol.49(2008)1832-1848.”液体ナトリウム技術”
「原子炉工学講座 第5巻」P.89〜148培風館 (1971).

“液体核燃料”,「第4巻」P.77〜113,培風館 (1971).

“トリウム・エネルギー”「エネルギー・資源ハンドブック」エネルギー・資源学会編,
  オーム社(1996)P.654〜659.

“無機融体の物性値(I)LiF-BeF2系溶融塩(Flibe)”,日本原子力情報センター(1980)

“来世紀の核エネルギーシステム”,「原子力工業」,37巻(1991)より12回掲載、110pp.

“「原発」革命“:「文春新書」、文芸春秋社(2001.8)

・「地球を救うために新しい原子力を!--トリウム熔融塩炉」仮印刷(2008)

・「トリウム溶融塩核エネルギー協働システム構想に関する論説・資料集」   
  [和文資料を収録] 三冊 計 約千ページ

・「Important Papers conc.Th M.S.Nucl.Ene.Synergetics[THORIMS-NES]」,
      [英文学術論文・資料を収録]  三冊 計 約千ページ

新合本:「核エネルギー序説篇」(180頁),「核エネルギー技術篇」(467頁)[2005]

共著:・「溶融塩増殖炉」,(改訂増補)321pp., 日本原子力学会,(1981).

・「スポレーション中性子工学」 ,234 PP., 日本原子力学会(1984).
・「溶融塩・熱技術の基礎」,溶融塩・熱技術研究会編著,アグネ技術センタ刊(1993)

訳書:ハームズ・ハインドラー著 :「核エネルギー協働システム概論」,
202 PP,古川監訳,培風館刊(1986).

・リリエンソール著:「岐路に立つ原子力」(訳)古川和男:日本生産性本部刊(1981)

受賞(2006.6.): 第22回佐藤栄作賞「核拡散防止」応募論文
 “核拡散防止への実効ある提言”「最優秀賞」(佐藤栄作[Nobel平和賞]記念国連大学協賛財団)