「グローバル時代における経営者マインド」

           小松電機産業株式会社代表取締役 社長
           財団法人 人間自然科学研究所 理事長  小松昭夫


 ヨロブン、アンニョンハシッミカ(皆さん、こんにちは)

先ほどご紹介させて頂きました小松昭夫でございます。このような場を提供してくださっ
た木曜学術会 常勤副学長であり、月刊市民時代編集長の除世旭(ソ・セウク)先生にお
礼を申し上げます。

特にソ・セウク先生には、短期間にも関わらず、深い洞察力で私の活動と実績を正確な形
で、市民時代七月号、続く特別号で取り上げていただきました。この場を借りまして深い
感謝をささげますとともに、日韓相互理解のために微力ながら尽くすことで、返礼とさせ
ていただきたく存じます。

 世界が存立しなければ、企業は存在しません。企業が安定的な活動ができる世界とは何
か考察する立場から、グローバル時代における「民主主義」「国家」「企業」の順でお話
いたします。


1、グローバル時代の民主主義

 近代国家は民主主義を標榜しています。それに自由と、基本的人権。この三つを柱にし
ており、これが民主主義のベースだといっています。

 21世紀の民主主義の原点は、人類は上下の格差をなくし、現状認識を共有化し、当事者
意識を持って、論理的に議論することを条件に自由を保障すれば、困難を克服する新たな
知を生み出すことができる、ということです。このことをギリシアでは“偉大な生命体”
を意味するマクロビウスといっております。こうした条件を備えてのち、初めて市民、人
間として認められるといいます。

 今までの民主主義は大衆を愚民化する方策を取っていました。つまり、掌握する方とさ
れる方の二極化をすることで出来上がった文化の上で、花開いた文明です。多少の変化は
始まっていますが、いまでも大多数が学校に行き、卒業すれば就職することに異を唱えて
いません。 飢餓と殺戮を克服し、衣食住が足りた後は、人は掌握する、される関係では
なく、パートナーシップの関係になります。ここに行くことによって楽しく、持続的に生
きることができます。

 IT技術の発達によって、現実の社会問題を共通認識化することができます。そして経緯
と背景を学ぶことができます。そのことによって21世紀の民主主義が見えてきます。

2、グローバル時代における国家とは

「企業」を語る前に、グローバル時代における「国家」とは何かを考えないといけません。
グローバル時代とは国境・国という概念がだんだん衰退していくことだと考えがちですが、
グローバル時代には国という概念がものものすごく重要になっていきます。それは、グロー
バル化によって、国家の定義が変わっていくからです。

まず、「グローバル時代」とは何か。金利の自由化が進むにつれ、投資家は利回りに敏感
となり企業の資金調達も銀行借入(間接金融)から、株式など市場から直接資金を受け取
る直接金融へとシフトしてきました。

企業に投資するのはもはや国内の資本家に限りません。金融市場から資金を調達するため
には、当然、全世界的な意義と目的を構築することが求められます。
  
 グローバル化時代にあっては、どの国も一国のみでは生きられません。人、物、金、情
報が、時間と空間を超えてつながっており、相乗効果で進化していきます。また、退化し
ていくこともあるでしょう。

 これまでは海を隔てていたり、距離があったために、お互いに干渉することがなかった
文化と文明が、時間と空間を超えて交流するようになっております。当然、そこに異なる
文化と、文明の衝突が起きる懸念があります。
 
今の時代は一国では生きることが出来ず、かつ、隣の国は換えられません。世界、北東ア
ジアの中で自国の役割は何なのか、そして、国家、業界の中での自分たちの会社はどんな
役割を果たすのか、それを、北東アジア、韓国、釜山といった地理、気候、環境、歴史的
な要素を総合的に調和させ、役割と使命を担わなければなりません。

飢餓と殺戮が終わった韓国、日本地域の場合は、いまだ残る「飢餓と殺戮の社会」を生き
る地域をサポートすると共に、さらに「楽しく持続可能な社会」を作るために、どのよう
な役割を果たすべきなのか、というところから政治の目的を定めないといけません。それ
は、そもそも政治が安定され、衣食住が足りる社会を目指し、努力する国にはお金が集ま
るようになっているからであります。

 人は衣食住が足りた社会では、より楽しく生きたいと欲求が生まれます。楽しく生きる
とは、自他共に認められる社会に生きることであります。そのためには国家の報奨制度な
どによって、「ほめる」文化が必要です。その文化は他地域にとっては魅力的であります
から、その文化を腕力で奪おうとします。いわゆるハードパワーです。

 一方、「ぜひ文化力のある国と仲良くしたい」。「そこの国と仲良くなることが必要だ」。
「その国と仲良くすることが早く飢餓と殺戮から抜け出せる」と考えることが、ソフトパ
ワーです。

3、グローバル時代における企業とは

そうしたら、企業の本質とは何か。企業は国内・国際の法律によって守られるのが半分、
また、規制されるが半分であります。そして、もっともお金の影響を受ける組織でありま
す。
企業は人の集まりであるために、生命・人類とは何かということから追求しなければ、そ
の本質は見えません。生命・人類の特性とは何かを追求し、その特性を生かし、飢餓と殺
戮を効率的に解消し、楽しく持続的に生きられる社会を創造する政治的な目的を効率的に
実現するための組織が、企業であります。

衣食住が足った社会においては、より楽しく生きたいという欲求が生まれます。しかし、
価値観の多様化により、人それぞれの欲求は違っていきます。国民の価値観が多様化し、
企業の発展が必ずしも国民の利益と一致しないようになりました。その結果、自分たちが
一所懸命に努力をすればするほどおかしい社会を作ってしまうのです。

そのため、生命、人類の特性から考察した「楽しく持続可能な社会を作る」価値観に合わ
せる必要があります。人間の欲望・欲求を誘導・満たすと共に、有効的にお金と情報が回
るように誘導し、結果的に自国の利益にもつなげるのが21世紀の企業の役割であり、その
中から真の愛国者が生まれるのです。


しかし、国の中には内部矛盾により、その自国の役割や使命を果たすための方針が立てら
れない場合があります。その際に、その地域の特徴を生かす企業の出番が現れるのです。
意義の高い、解りやすい情報・技術の発信により共感し、過去の実績を知ることにより、
納得、賛同者が現れ、水平分業(パートナシップ)がはじまります

企業というのは人の集まりの形体にすぎないのです。それぞれ法律の枠組みの中でやりや
すい組織(株式会社、NPO、財団、自治体)が形成され、分業に繋がります。これがソフト
パワーであり、それに時代の先端技術とサービスをつけて社会変革に取り組むが本来の企
業活動であります。

その企業を引っ張っていくリーダに要求されるものは

①知識、能力もさることながら意識がもっとも重要であり、それは想像力、先見性、決断
力の三つによって表れます。実践においては見識、勇気、胆力を必要とします。

②出来るか、出来ないかは2番目、やる意義があるかが1番に考えないといけません。意義
の高い、解りやすい情報の発信により共感し、過去の実績を知ることにより、納得、水
平分業(パートナシップ)がはじまります。そこから各自の特性と価値観に合わせ、役
割分担を行うことも大事であります。

 その効率的な運用のための教育システムはどうあるべきなのかが決まっていく。そこの
中で一番のポイントは、そこの土地の地理的な位置、気候、歴史、文化をコアにして、企
業マインドが出来上がります。


4、まとめ
 人類の歴史の中でいま、北東アジア、特に韓国、北朝鮮、日本の連携により大きな役割
を果たす時期に来ていると認識しています。

朝鮮半島は、北東アジアの歴史の中で長い間、苦難の歴史が続きました。日本、中国、ロ
シアは武力を背景とした封建時代を経て近代が始まりました。常に日本、中国、ロシアそ
の他の諸外国からの圧迫を受けてきました。これが朝鮮半島の歴史であると認識していま
す。

特に北東アジアには、日本が深く関わった、激動の歴史の中から生まれた韓国・北朝鮮分
断国家が存在します。それが東西冷戦の残滓として残っています。戦後60年経っても解
決の見通しがつかず、最近特に緊張が高まっています。このような状況を打開するには、
生命の起源、人類の特性、人間の定義という根源的なところから見直すしかありません。

東洋・西洋文明の融合から生まれた日本は、敗戦国にも関わらず、戦後、産業基盤を確立、
豊かな生活をしてきました。日本が世界に先駆け、韓国、北朝鮮とともに、大国である米
国、中国、ロシアの理解を得て、ソフトパワーで、平和への潮流を生み出す時に来ていま
す。

 私が住む日本の山陰地域は、地理的にも韓国、北朝鮮、中国の対岸に位置します。また
第二次世界大戦末期、七千人を超す若者が終結し、日本本土決戦のための航空基地が建設
されましたが、山脈を隔てた広島への原爆投下によって終戦時期が早まり、廃塵に帰すこ
とを免れた地域であります。

 この地域が戦火から残された意味を考えるとき、国に代わって地域が、ソフトパワーによって

 飢餓と殺戮の国にはこうする

 飢餓と殺戮が終わった国にはこうする

 楽しく持続的に生きられるためにはこうする

 と方策を話し合うことができる場を提供し、参加者が話し合いの結果を持ち帰って、平
和、環境、健康のそれぞれの立場で実行することが、国際貢献であると考えます。その方
策を、韓国、北朝鮮とともにつくり、人類に示すことが、日本・山陰地域の使命であると
考えます。日本全体では、歴史認識の相違から、また戦後、国家の原則を作り出してこな
かったことから難しいのです。

 核大国である中国、ロシア、米国の賛同を受けた上で、共感と納得ができる平和のモデ
ルを作ることが、この地域にはできます。楽しく持続的に生きられる地球社会を作るため
のモデルを、韓国、北朝鮮とともに作る必要があります。

成功すれば三カ国はもとより人類進化に大きな貢献をすることになります。これに失敗す
れば人類の歴史に大きな禍根を残し、朝鮮半島と日本の未来が、国内外に大きな問題を抱
えている大国である中国、ロシア、米国はもとより、他の国々にも大きな悪影響を与える
と思われます。

いろいろとお話申し上げましたが、私の話が少しでもこれからの経営活動と日韓友好関係
にお役に立てばこれ以上の喜びはありません。長時間、御静聴ありがとうございました。

ガムサハッミダ(ありがとうございました)。

「あらゆる財産と富は、正義に則し、人類の進歩のために責任を持って使われなければな
らない。経済的および政治的権力は、支配の道具としてではなく、経済的正義と社会的秩
序に役立つように使われなければならない。」 
(1997年「人間の責任に関する世界宣言」第11条)⇒詳細

                                 以 上