神話時代からの日韓交流史(1)

夢の「高天原故地」から韓国と日本を眺望する

李光洙は強烈なナショナリストであり、日本統治時代に東亜日報編集局長 

 李光洙は強烈なナショナリストであり、日本統治時代に東亜日報編集局長、朝鮮日報社副社長をつとめ、一九三七年に日本の警察によって検挙された。李光洙は『民族改造論』のなかで、韓族が衰退した原因として、新羅が唐を誘って、百済を滅亡させたことをあげている。それは夜間の不意討ちによるものであった。新羅はその八年後に、高句麗の内部が政争によって混乱していたのに乗じて攻め、滅亡させたうえで、満州からシベリア、沿海州までひろがつていった高句麗の広大な領土と同胞を唐に献上し、自ら属国になり下った。中国はどの時代にとっても今日に至るまで、かつて孔子を絶望させたように、つねに社会が腐敗してきた。この深い泥沼のような中国文化に組み込まれてしまったことが、韓民族に不幸をもたらした。

 新羅は中国の属国となったために、唐の元号を用いるかたわら、名前や、服装が唐風に改められた。韓人の姓は三国時代までは二字姓だったが、創氏改名が強いられたのだった。

 民族の衰退を加速させた二番目の要因は、李氏朝鮮の成立であった。李朝は徹底した悪政を行ない、極悪無道の利己主義によって貫かれた権力が国を支配した。国王が横暴な「無所不為」(ところ構わず不可能のない事)の「生殺与奪」の権力を振った。そうすることによって国民から創意と開発心を奪ってしまったことは、韓族にとって近代に至るまで、深刻な悲劇を招いた。

 仁、義、礼、廉潔、自尊、武勇、快活と謳われた韓族の原形は、韓民族が六百余年の桎梏のもとに喘<あえ>ぐなかで、生存の捌け口を卑怯な利己主義に求めることを強いられた。近代韓国の先覚者であった李光洙は、次のように韓民族の民族性が歪められるようになったと指摘している。

     一、虚言と偽騙行為がはびこることによって、相互間の信頼心が失なわれた。このために詐欺的な態度がひろまるようになった。

     二、空理空論を弄び、美辞麗句を連ねる。頂上の権力者は生殺与奪をはじめ不可能なことがないほどまで、思うままに権力を振い、一切の費任を負わない。

     三、表裏不同だ。人の面前では諂<へつ>らい、背後では悪様<あしざま>にいう。恥をまったく知らない。

     四、卑屈、物事に怖じけ恐れる。他人の思惑ばかりを気にして、決断する能力が低い。

     五、反社会的利己心によってのみ動かされ、公益には無関心だが、自己、家族、党派について極端な利己主義を発揮する。

 今日の韓国では、日本神話の源流が朝鮮半島から発しているというさまざまな研究が、全国において盛んに行なわれるようになっている。最近も、ソウルにおいてこのような学術研究会が催されている。しかし、このような研究が、韓国が日本の兄貴分であるという優越感にいたずらにひたるものであってはなるまい。

 歴史は教訓に富んでいるものである。韓日交流史を古代に遡って学ぷ時には、韓民族が歴史の過程において中国的なものにとらわれてしまった民族の悲劇を、覚るものにならねばならないと思う。


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