SAPIO誌 平成14年5月22日号(小学館)
偽史 日本歴史のルーツを韓国に求める「捏造旧跡」が増えている

「高天原」から「王仁」まで、学問的正しさを無視した観光名所が続々 

 韓国には日本に関する旧跡や資料館が数多く存在し、韓国を訪れた多くの日本人がこうした施設を観覧している。最も有名なのが忠清南道天安にある「独立記念館」であろう。1982年に起きた日本の歴史教科書問題が契機となり、広く民間の寄付が募られて建設され、1987年に開館した。120万坪の広大な敷地に7つの展示館が立ち並び、主に韓国の独立運動の流れに沿った展示がなされている。日本の警察による拷問シーンなど生々しい展示があることでも有名である。

 首都ソウルでは、西大門区にある「西大門刑務所歴史館」が有名だ。この西大門刑務所は1908年に「京城監獄」として設置され、1945年の解放後も「ソウル刑務所」、後に「ソウル拘置所」として使用されていたが、拘置所の移転にともない1998年に歴史展示施設として開館した。「西大門刑務所」は多くの独立闘士が処刑されたり獄死した刑務所として有名で、獄舎や死刑場と共に独立闘士の追悼碑なども建てられている。

 これに並んでソウルで有名なのが中区の南山にある「安重根義士記念館」だ。1909年に中国・ハルビンで伊藤博文を射殺した安重根に関する資料を展示した資料館で、1970年に開館した。安重根義士の写真や書簡・著書・揮毫などが展示されている。

 これらの歴史的施設は主に日本の植民地支配の罪科を告発すると共に、独立闘士を偲び民族精神を発揚するという目的に沿った展示がなされている。

 ところでこうした言わば「正統派」の歴史展示施設や旧跡がある一方で、どうにもうさんくさい展示施設や旧跡も存在するのである。ここで述べる「うさんくさい施設・旧跡」とは学術的な検証も充分になされないまま、日本をダシにして国際交流や村おこしに利用している施設や旧跡を指す。これらの施設や旧跡は主に古代から近世にかけてのものであることが特徴であるが、ここではこうした「うさんくさい遺跡」のうち「洪吉童の沖縄渡来説」「霊巌の王仁遺跡」「高霊の高天原」について検証を加えることにする。


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