敬愛する諸兄姉の皆様、大脇です。8月初め、伊豆を発ってから、はや3週間が過ぎ、伊豆へ帰るのが、25日になりそうです。問題は、道草を食って、書庫の整理がなかなか進まないからです。今朝もまた道草を食っていますが、おゆるしください。

1、「誇りなき民族の行方」

すでに西鋭夫教授(スタンフォード大・フーバー研究所)の講座をご存知の方もいらっしゃるとは思います。小生、折に触れて勉強させていただいています。
今朝は、「誇りなき民族の行方」(Pride & History)「アメリカに飼い馴らされた日本人は、「誇りの骸」を「平和」と呼ぶ。アメリカの対日「国家100年の大計」は、既に完成しているのではないか。闘う意志がないのは、平和主義ではない。敗北主義という。」
(全文:http://mkto-sj170025.com/f00S30v00T008G14MiVk900)が目に留まった。ぜひ、「西教授とアメリカ戦争論」(10数分程度のVideo)をご視聴ください。湾岸戦争時、大概のことは皆様もご存知とは思いますが、いかに海部首相がコケにされたかを米国よりの視点から述べています。
‹http://mkto-sj170025.com/a0100v084M00000VzGiS093>

2、「もともと、日本には歴史観は無かった。」

山本七平先生には、公私ともお世話になった。「日本人には歴史観・時間軸が無い!あるのは空間軸、平行移動。物真似上手だけだ。」との言葉はショックであった。
http://www.miraikoso.org/before/vision/yamamoto/hichihei.html
「過去は水に流そう」との日本人には、隣国がなぜしつこく歴史認識を問いかけるのか理解できない。1970年代、「10年年後の国家目標」の研究プロジェクトにかかわったとき、日本の未来を論ずるには、敗戦ショックを乗り越えなければならないということを骨身に染みて感じた。2000人を優に超す日本の英知、1000人を超す世界の碩学を結集した極めて高い磁場があったから極めて鮮明であった。

3、東西を超えた普遍的理念の確立を!

小生は、アメリカ追従主義から単なる反発でなく、米国を乗り越える、米国を含め世界が共感できる思想(哲学・パラダイム)を提示すべきと思う。なぜなら近代を主導してきた「自由」「民主」「人権」といった個人主義文明は没落期にあるからである。共同主義(コミュータリズム)が注目されている。要するに個と全体との調和を如何に図るかである。
「西欧文明が没落するから日本文明の時代が来た」というような、単純な復古主調の日本主義には小生は組しない。個人主義文明にも学ぶべき点が多い。東洋の家族主義文明も反省点がある。先日インパール作戦のドキュメンタリーを見て、日本の組織の問題点、多くの国民を死に追いやりながら、その責任を問うことがあまりにも甘いことに、改めて愕然とした。
外国から裁かれる前に、ドイツのように自国で反省をなぜ、やらなかったのか?小生は、特に非人道的決断や行為を為した戦没者の遺族にまで恩給が支払われて来たことに疑問を感じている。また、軍人恩給連盟は、同じ日本人として戦った(戦わされれた)朝鮮や台湾等の犠牲者の遺族に対して、何もしてこなかったのか?要するに、最後は個人の良心の問題であろう。日本人してのこの辺の反省があれば、隣国の溜飲も少しは下がるのかも知れない。

3、核廃絶を国是に!日本人は世界平和実現へのバンガードに!

小生は、「ナショナル・プライド」の西教授のメールを見て、「日本が世界に誇る価値とは何か?」を考えてみた。天皇制、和の文化、自然主義、清浄心、科学技術…。
小生は、改めて「核廃絶・世界平和の実現」こそ、日本が目指すべき具体的国家
目標ではないかと思う。小生は長年、軍事バランスで均衡の保たれている世界の現状において、核抑止力の必要性を支持してきた。70年代から80年代かけては、自民党政府の政策作りをお手伝いをしてきた者である。
西教授が主張するように、「日本が2度と米国の脅威にならないように、米国に押しつけられた憲法である。」そこで、それを逆手に取って、柔道の極意のように相手の力を利用して投げる、逆転の発想である。虫の良い考えかもしれないが、核や通常兵器の脅威の現存する今日、平和憲法を楯に、軍事的には日本は米国に守ってもらう。
そして日本は核廃絶を始め、世界平和への積極的貢献を推進することを薦めたい。これこそが、世界平和実現のウルトラ・シーではなかろうか?
今、最大の問題は、世界が共感する国家ビジョンが日本に無いことである。
10数年前、定期的日韓文化交流会議に参加された韓国側座長に、国際ボランティア制度を国策化する構想をお話する機会があった。すると先生は、「どうして日本だけでやろうとするのですか?日韓共同でやってはどうですか?中国も入れましょう!」と提案された。(http://www.miraikoso.org/before/36miraikimyw/kimmirai.html)
アーウィン・雪子女史のファイルが書庫から出てきた。「私の祖父は明治の初期日本に来て祖母を見染めて、法的に日米国際結婚した第1号です。」と誇りにしていらっしゃった。彼女は戦時中、日本でのいじめに触れながら、日米が戦うと「自分の心の2つの血が騒ぎ、苦しかった。」とおっしゃったことが今も忘れられない。『フランクリンの果実』(文芸春秋)の自叙伝を読んでいただければわかるが、並みの日本人には書けない名文です。また英語はMDで精錬されており、欧米の王室、米国の上流階級と交流さても堂々たるものでした。
真に、アーウィンさんは、日本の良さ、アメリカの良さを融合した見事な花でした。
このような両国の心が判る、体現した方こそ貴重であると思う。
先月、米国から浜田教授が来日され、彼女の宿願であり遺言でもあった英文の自叙伝の出版に取り組んでいらっしゃる。この英文の日本語版(写真が多い)の出版と翻訳の手伝いを依頼された。アーウィン女史は、祖父ロバート・アーウィンを尊敬し、フランクリン、イギリスと王室に繋がる血統を誇りとし、そのアイデンティティー探しに生涯を費やした方でした。血統とは命と命のぶつかり合いの結実、その元は愛である。この宇宙に満ち満ちて溢れる愛、誰もが、自然と通して人を通して感じられる秋がすぐそこにあるのを感じる。米国の日本文学愛好家(恩師)より、芹沢光治良のことを耳にし、伊豆の国市図書館で全集のうち、「神の微笑」「神も慈愛」けを読んで感銘した。ところが、今回、その2巻が書庫の中から出てきた。宝の持ち腐れとはこのことを言うのであろう。
日本は国際協力と言えば、経済・技術協力に絞ってやってきた。国連や米国の圧力でPKO、軍事的(人的)貢献が徐々に広がっている。安倍内閣はそれを「世界平和への積極的貢献策だ」と唱道していますが、この「世界平和への積極的国家戦略」は「青年達が“よし、やろう!”と奮い立つような、夢と希望を与えてやりたい」との教育愛から生まれたものであることを忘れないで欲しい。経済、政治から文化・教育的国際貢献へ、ハードからソフトへとシフトへとすることを期待してペンを置きます。

2017年8月22日   大脇 準一郎 拝