日本復興計画への問題提起
    
 東日本大震災を超えて

 2010.4.3
NPO未来構想戦略フォーラム企画委員会
              発題者:大脇準一郎

「復興構想会議」への提言

今般の東日本大地震による被害は、想像をはるかに超えるものとなったが、冷静かつ整然と
した日本人の対応に世界の人々は感嘆し、改めて日本文化の底力に驚嘆している。また、
世界中から国際協力の手が集まっている。

今我々は何をなすべきであろうか?
政府と被災地3県の知事が中心となって復興構想会議の開催を決定した。

本会は、創設以来、長期的、国際的、総合的視野に立って“知識の社会的還元をモットーに
知的社会貢献に努めてきたことから、この未曾有の国難に対して緊急提言をしたいと思う。
まず復興構想会議に期待することは、原状に復帰することに終始することなく、長期的視野
からの都市づくり、町づくり構想を立案することである。国内は勿論、海外からも、魅力あ
ふれる構想を公募することを期待する。

折角、素晴らしいアイディアも天の時と地の利と人の輪を得ずしては実現できないもので
ある。その逆もまた真である。1960年代末、大学紛争が激しかりし頃、東大を始め、1年間
休校の大学
が続出した。大学問題が単なる社会問題としての次元から政治的責任を問われる問題となっ
た時の自由民主党政権は、問題解決の方策を探った。その方策ビジョンは、東大からでは
なく、東京教育大グループからであった。紛争の激しかった東京教育大学の現状を憂える
OBが場を設けて10年も前から「21世紀大学構想」を検討していた。藁をも掴むように
切羽詰まった自民党は、この構想に飛びつき、地積70万ヘクタール、予算3000億円の
筑波大学構想として結実したことは周知の通りである。

大震災からの復興という点で与・野党の対立を超えた国民的コンセンサスがあり、さらに
国連を始め、世界各国からの惜しみない協力の手が差し伸べられている今、世界の英知を
結集して「これからの都市・田舎はどうあるべきか?」「人類の未来の居住環境がどう
あるべきか?」、「エネルギー供給はどうあるべきか?」等を検討する千載一遇の機会で
あり、犠牲者の方々への最大の供養になるのではないだろうか?
明治の初期、後藤新平の壮大な東京都都市計画は、関東大震災に際してもその真価が遺憾
なく発揮された。何時の時代でも構想力と果敢な実行力が求められている。

民主党であれ、自民党であれ、党派を超えて、真に国民の未来のために希望あふれる構想を
描いてほしい。この国難に当たっても依然として党利党略、保身に窮々としているようでは、
歴史に汚点を残すのみで、二万人を超すと予想される犠牲者の方々に対して
顔向けができないであろう。


人づくり、国づくり、国民的合意を求めて、
    新しいビジョンづくりの提唱


今日の日本の危機は、単なる経済・環境を含めた物理的危機だけに終わらない。国の基本であ
る安全保障、教育政策に関しても国論が分裂し、不毛の論争を展開している。「分れた家は立
たず」と言われるように日本は、崩壊の過程にある。

これは日本近代史における我が国の歩みに深く根ざしている。

欧米の先進近代国家が進めていた帝国主義政策の真っただ中にあって、日本は開国政策をとり、
追いつき追い越せとばかりに富国強兵政策を遂行した。後塵を拝して帝国主義国の仲間入りが
出来たのは、歴史的文化力、特に江戸期の教育力があってのことであった。しかし、後進近代
国家であった独・伊と同盟を結び、破局へと転げ落ちた。

昭和25年、昭和維新は、占領軍の外圧に依るものであった。命知らずの特攻隊や集団自決は、
人権を重んじる米国人にとって想像を超えた不気味で恐ろしい価値観であった。占領軍は「大
和魂」を根絶するために修身教育を廃止させ、価値観を多様化させるために、網走刑務所に服
役中であった宮本顕治を出獄させ、日教組や労働組合運動を背後から支援した。我が国は、占
領軍が至高とした自由、民主主義、人権を導入したが、欧米で、血の代価を払って市民が勝ち
取ったこれらの価値は、深くヘレニズム、ヘブライズム(グレコ・ローマン、ジュディオ・ク
リスチャニティー;ヒューマニズム、ヒューマニタリアニズム)の文化的伝統に根ざしたもの
である。我が国は伝統的文化の土壌を捨て去り、何の土壌も無い砂漠地にこれらの西欧的価値
観を挿木したので、西欧とは似て非なる、義務を忘れた権利の主張、エゴイズム相剋の修羅場
と化したのは無理からぬことであろう。

戦後66年、日本の伝統的価値観を体現した世代は消え去ろうとしている。
「日本文化が失われていることに目を覚ませ!」と三島由紀夫は文化防衛を叫び、自決した。
日本人のアイデンティティとは何か?世界の方から再評価されている。しかるに日本人はその
ことを忘れ去ろうとしている。今こそ、日本的な価値観とは何なのかを問い直し世界へ通じる
普遍的な価値観を再認識し、また、創造し、後孫に継承すべき時であろう。

第二次世界大戦における敗北により我々は、占領政策の影響であるといえども、よき日本文化
の伝統さえ進んで捨て去った。この点では日本より多数の犠牲者を出したドイツの戦後復興を
参考にすべきであろう。誤りは誤りとして反省し、被害者に対しては、すべて金で済まそうと
するのではなく、誠意ある謝罪行為を示すべきであろう。イスラエルにドイツ人のボランティ
アが断突に多いのもその現れである。繰り返すが、国難に臨むこの時は、日本的伝統に根ざし
た世界へ通じる普遍的な価値観を樹立する時である。また、人づくりも、この価値観の根幹で
ある日本人魂の復活なくしてあり得ない。
                      
憲法草案の起草に当たったケーディス(GHQ民政局次長)の述懐にも明らかなように、占領軍の
真意は日本が再び立ち上がれないようにするための再軍備否定であった。護憲、改憲で国論は
分裂し、不毛の水かけ論争が続いている。また、自衛隊は軍隊か?自衛隊の海外派遣は違憲か?
に関して未だに論争が続いている。

幕末に勤皇か佐幕か、開国か鎖国かかと国論が分裂する中、坂本龍馬は脱藩し、犬猿の仲の薩
長を勤皇(倒幕)で結び、返す刀で大政奉還を掲げ、佐幕派まで巻き込み明治維新無血革命の
道を拓いた。龍馬の高邁な共存共栄共義のビジョン、彼のネットワーキング力に改めて注目す
べきであろう。

安全保障をめぐる現今の分極状況を超えて、国民的合意を形成する道はないのであろうか?

護憲、改憲の事態を論ずる前に、両者が究極的に目指すものに着目すれば、それは世界平和の
樹立であり、自国の国民、国土、文化を守る安全確保であり、同じである。両者の違いは、目
的達成のための戦略の違いである。

超大国の露骨な覇権主義が跋扈する現状から、日本は改憲、核武装を含めて再軍備し、自国は
自分で守るべしとの右的意見が、最近は顕著である。周囲を敵に回しても自国の防衛に命をか
けるイスラエルのような道を行くのも一つ選択である。

また、たとい占領軍が押し付けた憲法であっても、それを逆手にとって世界平和への積極的国
家戦略を描く道もある。その際、未だ覇権主義が徘徊する現代社会にあっては、「国際社会の
信義を尊重し」だけではあまりに理想論に過ぎ、人体も自衛の免疫性を付帯しているように国
家も自国を守り敵の侵略を防ぐ自衛力はもつべきであろう。

日本がODA等を使ってソフトを通じての世界貢献策を遂行するには、米国をはじめとする欧米諸
国との合意を得て日本の役割分担を明確にしておく必要がある。たとえば、世界平和への日米
条約の役割を明明記した新たな日米条約を締結する必要があるであろう。

左・右両翼が未来へ向けて国民的合意形成の方向で建設的議論を重ねていただきたい。
                     
今回の大震災で我々は「自然の前に如何に我々は無力であるか、人間が出来ることはまず自然
から学び、自然と共生することであること」を改めて悟った。

原子エネルギーの開発はよく知られているように、ナチス・ヒトラーに勝つために米国が巨額
の予算を投入してマンハッタン計画を遂行し、原子爆弾として実現したものであった。1気圧、
世界に豊富にあるトリュームを使った熔融塩炉はウランの核分裂による原子爆弾よりは安全で
あることは開発途上から指摘されていたが、緊急実用化可能の必要性から溶融塩炉の実現は中
途でストップした。生前、西堀栄三郎博士はオークリッジのワインバーク博士らと連携して日
本こそこれを実現するべきとこの溶融塩炉実用化の夢にかけていらっしゃった。

日本の「エネルギー政策をどうすべきか?」自然エネルギー活用を含めた総合政策を再検討す
る必要があろう。

未来構想フォーラムは平成16年(2004年)、「『日本のエネルギー戦略を検討する』─原子力
発電に未来はあるか?─」をテーマに原発賛成・反対派の公開シンポジュームを開催した。ご
参考までにその時の共同宣言文を付記しておく。ちょうどシンポジュームの最中、美浜原発事
故が発生し、11名死傷、内4名死亡との大惨事が起こった。その時も指摘されたことであるが、
技術上の問題もさることながら、ヒューマンウエヤーのずさんさは今回の福島原発にも通じる
ことであろう。被災地の家を失った避難民に地方自治体は公共施設を開放し、進んで社宅を提
供している企業、民家もある。そのような中で最も被害を与えている元凶である東京電力は全
国にある25の豪華な保養施設は手つかずのまま、社内からも批判の声が挙がっている。

日本がODA等の方法を使ってソフト・パワーによる世界貢献策を遂行する場合には、米国をはじ
めとする欧米諸国との合意を得て日本の役割分担を明確にしておく必要がある。たとえば、世
界平和への日米条約の役割を明記した新たな日米条約を締結する必要があるであろう。

左・右両翼は、未来へ向けての国民的合意を形成することを目指して、建設的議論を重ねて頂
きたい。我々は、今回の未曾有の大震災を経験して、「自然の前では人間は無力であり、人間
のできることは、自然から学び、自然と共生すること」であることを改めて悟った。原子力エ
ネルギーの開発は、周知のように米国がナチス・ヒトラーに勝つために巨額の予算を投入して
遂行したマンハッタン計画の実現によるものであった。

トリュームを使った熔融塩炉は安全であることが開発途上からわかっていたが開発中から判明
していたが、緊急実用化の必要性から、溶融塩炉の実現は中断した。 生前、西堀栄三郎博士
は、オークリッジのワインバーク博士らと連携して日本こそこの溶融塩炉を実現するべきであ
ると信念のもとに、その実用化に夢をかけていらっしゃった。日本のエネルギー政策について
は、自然エネルギーの活用を含めた総合政策として、この際に再検討する必要があろう。
                     
以上述べてきたように、賛成、反対の分極状況を克服し、いかにして国民的コンセンサスを創
出するかという挑戦の成否は、我が国の存亡の岐路にあるといえる。「何のための右手であり、
左手なのか?」胴体の維持、頭脳、さらに言えば、心の願望を満たすための手段に過ぎないの
ではないでしょうか?

明治維新の富国強兵策の推進には、長年培われて来た横溢する文化力(和魂)があった。
しかしその後その文化力(和魂)は、偏狭なナショナリズムとして軍部に誤用され、国内外に
多大な犠牲をもたらした。

1945年の昭和維新は、強兵と和魂を放棄させられた富国一本槍であった。1980年代、我が国は
「ジャパンアズNO1」と言われ、経済大国となってみても世界からは尊敬されるどころか、
「エコノミック・アニマル」と蔑まれ、湾岸戦争でクエートに一兆円を超す協力をしながらク
エートから日本への感謝の言葉は無かった。我々は、この時の屈辱を糧として、経済的豊かさ
だけでは足りないこと、時には血を流す覚悟で人命を守ることの必要性を痛感するようになっ
てきた。

次の平成維新は、富国のみならず、「何のための豊かさなのか?」国民、国土、伝統文化の保
全と発展、すなわち産業・経済(技術)、政治・外交(防衛)、文化・教育(思想)のバランス
の取れた総合的維新であるべきである。そして長期的ビジョンの構築を軸に中期・短期の国民
の合意を得るような未来構想を提示すべきである。その「未来構想」とは、世界の共感、合意
を得る普遍的なものであるべきことは、言うまでのなかろう。

『和の実学』を提唱する大和信春氏が言うように「互奪圏」(覇権主義),「互求圏」(自由競争),
から「互恵圏」(人類一家族主義・和道の世界)へ、換言すれば「共生・共栄・共義,“共にある”
というコンセプト、「存在とは個物のみではなく、個物の連体でもある」という東洋古来の伝統、
に帰ることが文明全体が陥った危機から脱出する鍵があるように思えてならない。

今日本は短期的には、48年前にスタートさせた原発に対するエネルギー政策の再検討を迫られて
いる。
中期的には戦後66年、国の根幹である平和をどう構築するのかを問われている。
そして長期的には明治開国以来143年、日本文化の伝統と西欧文化との融合をどう為し得るのを
問われている。この短期・中期・長期の3つの課題は手足と胴体と頭を区切り離して人間を語れ
ないように決して切り離すことはできない。

エネルギーの安定供給なくして産業の未来に不安が残るであろう。また、国民的・人的団結
無くして国や団体の未来も暗い。しかし今、日本で最も大切なことは、この長期的課題である
国民の気概・人間の誇りをどう矜持するということではなかろうか?これらの課題は、いずれも
日本一国家、一個人の課題であると同時に、グローバルな人類史的課題でもある。この課題に
果敢に挑戦することこそ、人類の悲願であり夢である。多くの若者が、有識者が、そして国や
企業の指導者たちがこの大震災の危機を契機に結束し、歴史的ロマンに挑戦していただきたい!

拙文を顧みず、問題を提起致しました。「止むに止まれぬ大和魂」とご容赦くださり、さらな
る皆様の英知を引きだす誘因となれば、光栄の極みです。

本会は、未曾有の民族的危機に際して、未来構想のネットワークを通じて英知を結集し、今後
も一層の知的社会貢献に努めたい。有識者各位のなお一層の奮起をご期待申し上げます。

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付記1:後藤新平(元東京都知事)の名言: 石原都知事に贈る!

「金を残して死ぬものは下だ。仕事を残して死ぬものは中だ。人を残して死ぬものは上だ」
                      (後藤新平が死の直前に残したことば)
「自分のために借金するのは下だ。人のため借金するのは中だ。天の為に借金するのは上だ。」

「自分の為に仕事をするのは下だ。人の為に仕事をするのは中だ。天の為に仕事をするは上だ。
 自分の為に生きるは下だ。人の為に生きるは中だ。天の為に生きるは上なり。」

「まず我が身を修めるというほかはない。我が身を修める自治の力が治国平天下の基礎である。
 かねて私のいう『自治の三訣(さんけつ)』『人のお世話にならぬよう。人のお世話をする
 ように。そして報いを求めぬよう』と少年時代から心がけてこれを実行するのであります」



付記2「日本のエネルギー政策への提言  
          
第32回未来構想フォーラム(2004.08.09⇒ 

 平成16年8月9日、港区商工会館にて、「この国を想うー日本は大丈夫か?」をメイン・テーマ
 に第32回未来構想フォーラムが開催された。
  
 
第一部「日本のエネルギー戦略を検討する」─原子力発電に未来はあるか?─をテーマ
 に原子力発電をめぐって白熱した議論を交えていた折、3時28分、美浜原発事故が発生し、11
 名死傷、内4名死亡との惨事が起こりました。ついに日本では原子力発電では1人も死んでいな
 いとの原子力発電に対する技術神話は脆くも崩壊したかにも思える。

 議論を終え、当日ご参加いただいた諸先生、参加者の皆様のご意見をお伺いし、本会として
 意見をまとめ、以下のような提言を致しますます。各位の忌憚の無い、ご批評意見をお寄せ
 ください。

1、今回の美浜原子力発電所事故は、原子力発電固有の技術の問題というよりは、火力発電と
 共通した技術の事故であると思われる。原子力技術の本質的な危険性というより、これを管理
 する組織の倫理・文化、社会システムとしての問題がより本質的問題であると言える。従って、
 原子力問題の安全性を向上させるためには、技術そのものを否定するのではなく、これを管理
 する社会システムの再検討、情報の公開性・透明性を高め、ヒューマンウエアーの改善策を講
 じることがより肝要である。重要なことは、事故の責任を追及するだけではなく、事故から学
 んでいくことである。

2、風力、地熱、太陽発電、バイオマス資源等、自然にやさしい再生可能エネルギーは、発電
 は最もクリーンであり、供給源が半永久的であるが、出力が微少、季節や日による変動があり、
 コスト高である。大型コンピューターからパソコンの出現、ネットワーク技術の発展に見られ
 るように、再生可能エネルギーのネットワーク化・安定供給技術の開発が将来の課題であろう。

 化石燃料の中でも石油・石炭は、コストが安く、貯蔵・運搬にも便利なため依然として主力を
 占めているが、環境負荷が大きい。比較的環境負荷の軽い天然ガスの需要が伸びつつあるが、
 今後の供給拡大には輸送インフラの整備が課題である。今後、燃料電池・メタン・ハイトレー
 ドの更なる実用化が注目される。

 原子力発電は、エネルギー密度の大きさ、安定性などに優れているが、受け容れ易さ(環境性
 ・安全性)の不安がある。以上、各種エネルギーの長・短所を踏まえ、経済効率のみならず経
 済性・安全性・環境性とのバランスの取れた真摯なエネルギー政策の立案を提言する。

3、産業の発展・近代化の進展に伴い、エネルギー需要は急増している。発展途上国の人口爆
 発を考慮すれば、人類は、今後“省エネ”(エネルギー利用効率の改善)、“循環システム”
 というコンセプトがキーワードになってくる。今年は例年に無い暑い夏であったにもかかわら
 ず、電力需要が限界点に達しなかったのは、省エネ技術開発の効果とも考えられる。 

 また省エネは我々のライフスタイルの変換という側面も持つ。いまやエネルギー大量消費型の
 物質偏重文明から、省エネ型・循環型の精神主体の文明への大転換期にある。わが国は東西文
 明の融合から、新しい文明の創造の歴史的使命を省エネ技術・環境技術の開発とともに果たす
 べき時である。
   
 平成16年8月27日
            第32回フォーラム参加者有志一同      
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解説)
1)わが国は総発電総量の34.4%を原子力に寄っており、エネルギー基本計画において、原子
 力を基本電源と位置づけている。この基本計画に対して、強い疑念がフォーラムの一部参加者
 より提案された。第二次大戦中、戦争に勝つことだけを唯一の目標として開発された原爆は、
 放射能発生等の他の付帯条件を一切無視して開発されたものである。 今後、平和のための安
 全な原子力開発の原点に戻っての基礎研究開発、多様なエネルギー資源の開発が望まれている。

2)70年代初頭、ローマクラブ世界会議で、「自然科学の行き過ぎ、社会科学の怠慢、宗教・
 文化が死んでしまった!」と指摘がなされた。原子力発電もまた、「技術への過信・電力会社
 を始め、管理者の怠慢、各自の志の欠如」と言えよう。今回、原子力保安院・原子力安全機構
・原子力委員会が、警告していたにもかかわらず、このような事故が発生し、何のための管理
 機構か疑問が呈されている。権威や事務方重視から現場重視の姿勢へ、民営自由化等、抜本的
 改革が必要であろう。

3)今回事故を起した関西電力は過去5年間に11ヶ所の火力発電所で3659件にのぼる不正報告を
 行ったことを、本年6月29日、マスコミで暴露されたばかりである。今回の事故の原因は、元々
 10mmであった配管が1.4mmまで磨り減っていたためであると言われている。運転開始から27年余、
 一度も点検していなかったという杜撰さこそ問題であろう。戦後日本の唯一の誇りであった一
 流企業の名声も最近、次々と地に落ちている。企業倫理・モラルの確立へ向けて猛省を促した
 い! 

  
           
第二部、「凛の国、日本へのメッセージー愛する孫達に伝えたい歴史の真実ー」、本年
 78歳を迎えられる前野徹氏の憂国の情に満ちたメッセージであった。終戦当時、19歳、多くの
 同僚を戦争で亡くし、戦後日本を再建した同僚の大半が既に鬼門に下っていった今日、前野氏は、
 若い世代へ向けて、渾身のメッセージを述べられた。氏は、日本は戦後国家の態をなしていな
 い。李鵬首相やリーカンユ首相等、アジアの友人の言葉を引用されながら、亡国の危機に瀕す
 る日本に警告を発せられた。

 その要旨は、「国の領土も守れない、お詫び外交、米国追従の国の尊厳性を欠いた、主体性の
 無い政権、自国の伝統文化の保持を忘れた自虐的教育、いずれも亡国の兆しである」との氏の
 熱弁に対し、「ドイツは、ホロコーストのユダヤ人虐殺の非人道的行為に対しては謝罪したが、
 国家として戦争に対して謝罪してはいない。非人道的行為と戦争の大義とは別もものとしてい
 る。日本は国家指導者(軍部)の過ちと国家とを同一に捉えている。また原爆に対しても民間
 人の大量虐殺は米国の非人道的犯罪であることは明白で、戦後なぜ、国際法廷に日本は提訴し
 なかったのかと世界からもいぶかしがられている。」との某外務官僚からのコメントがあった。

 GHQ占領下での日本が、如何に占領軍により巧妙に統治されたか、公開された機密資料を基に戦
 後日本の出発の原点を探る本が話題となっている。「忘れるな!歴史の真実、骨抜き大国」
 (桜井よしこ著)、桜井女史は、30項目に渡るGHQ内部機密項目に触れ、如何に、検閲制度が批
 判の許されない巧妙なものであったかを暴露している。ハンチントンの最近刊「分断されるア
 メリカ」で問うているのも“ナショナル・アイデンティティ”の問題である。国の再生にはそ
 の原点に返ることが基本であろう。

 日本人の価値観・アイデンティティーはどうなっているのか?日本のアジアとの共生を巡って
 白熱した討議が続きました。この討議は次回33回の「教育改革のどう進めるか?」の議論に受
 け継がれることでしょう。

 本企画は将来、大学の講座テキストとして発行の企画案もありますが、当面、ブロードバンド
 最新技術を駆使して、公開していますので、PCでご覧ください。E-miraiに登録(無料)されれば、
 定期的配信受信、過去の情報にもアクセスすることが出来ます。地 方や海外の方で、たとい
 月例のフォーラムにご参加が不可能であったとしても、文明の利器、ITを使えば、時空を超えて、
 知識・知恵のネットワーク化・収斂が可能です。日本と世界の再生のための知的社会貢献の本会
 の趣意にご協賛賜れば光栄です。
                           (文責: 大脇準一郎)



付記3:教育改革3つのポント 2002.9.17 未来構想フォーラム提言 

平成14年(2002年)、本会発足の動機は、「日本の問題の根底は教育問題、教育こそ日本再生
の鍵」との認識からでした。今回総決算的な意味を込めて、教育を焦点にフォーラムを開催し、
新内閣発足に併せ、政策提言をいたします。皆様の積極的な参画、ご協力を賜れば幸いです。

今日の教育改革の論議で、重要なポイントがいくつかあります。

1)国際的視野の欠落:最大の盲点!
  A) 新文明の創造を教育目標とした新しい歴史観の確立 
  B) 未来社会に相応しい人間像の確立:
  C) 教育方法の改善:
  
2)知情意のバランスの取れた 均衡教育が必要:

3)教育の主体は 誰なのか?: 国家,父母,個人,それとも?

4)教育改革 ファンクション・ダイアグラム
                 
  特定非営利活動法人 未来構想戦略フォーラム教育政策研究グループ
     
                         詳細はこちら        
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