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病気になるのを防ぐための心掛け

日本医療経営学会理事長・元ニューヨーク医科大学教授
秀明大学名誉教授    廣瀬 輝夫

◎原住民には見られない、近代的生活に伴う生活習慣病が増加、対策は国家社会の施行す
 る近代医療では不可能、国民自身が予防することが必要。

◎生活習慣病(高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満症)が変性疾患である
 血管硬化症から来る心筋梗塞、動脈瘤、脳卒中、末梢血管閉塞、末期糖尿病慮
 などや肝硬変、肝癌に進展するのを阻止することにより、生活の質を改良し、
 長寿を真っ当することが望ましい。 

◎メタボリック・シンドローム(代謝障害症候群)が生活習慣病の前駆症と言われている。
 如何にして生活態度を改善するか、ストレス及び過労を避け、低塩食、低脂肪食、菜食
 繊維食、充分な水分摂取、及び適度の運動などや一般の人が実行出来る代替医療に付い
 て述べる。



第72 回未来構想戦略フォーラム&「医療介護共同研究会」

  「ディジーズ・マネージメント」


日時)2008 年4 月17 日(木)18:10~21:15
会場)東京都南部労政会館第6 会議室


第1 部 講演の部
 1.「生活改善による疾病予防と医療費」

   廣瀬 輝夫 氏:日本医療経営学会 理事長

皆さん、メタボリックシンドロームとは何かご存知でしょうか。メタボリックシンドローム
というのは代謝障害の症候群なので、代謝障害と言えば一番分かりやすいのに、なぜメタ
ボリックシンドロームと言のか。私がメタボリックシンドロームが出た時に、代謝障害症候
群という名前をつけたが、学会がメタボリックシンドロームとそのままつけて、メタボと
なった。でもメタボと言ってもアメリカでは通じません。そういう日本の考え方は、
これから、直していかないといけないと思う。
生活習慣病は、昔は老人病疾患と言った。日野原重明先生は私の30 年来の友達だが、
彼が生活習慣から来るということで、15 年前にLife-style related diseases いう言葉を
つくった。
Life-style related diseasesがどうして起きるかというと、それがメタボリックシンドロー
ムに関係する。その関係を最初にお話しする前に、医療というものはどういうものかの話を
していきます。皆様は医療自体に対して、素人の方が多いということですから、そういう
話から始めたいと思います。

<医療の分類>

医療というものは簡単なものじゃない。医者というものは、昔は病気だけ診ていれば良かったが、今は
生老病死の全てを診なくてはいけないというわけで、私は医療というものがどういうものがあるか、8種
類に分類してみた。出生医学があって、保健医学があって、予防医学もある。環境医学や臨床医学もある。
臨床医学はごく一部に過ぎない。そして、介護医療があって、死の医学がある。これは要するにホスピス
のケアや、患者が死に直面した時に医師が哲学的宗教的な考えを持って、病人に臨まなくてはいけないと。
こういうことをまず理解していただかないと、医療というものがどういうものか分からないと思うのです。
<疾病には遺伝要因・免疫反応と環境要因がさまざまな割合で関与している>
病気とはどういうものかということを知っていただかないと、生活習慣病や代謝障害疾患がどういうも
のか分からないと思います。
人間は生まれつき遺伝子の要因がある。遺伝子の要因とは身体の状況。要するに生まれつきの体の状況
と環境の影響に後天的な免疫反応が加わって病気が起きるという考え方があるということを是非知ってい
ただきたい。
環境にはどういうものがあるかと言うと、環境要因で一番多いのは外傷。それからいろいろな疾患があ
るが、西洋医学では分類がはっきりしていない。遺伝子の要因として、一番多いのは血友病などの遺伝子
病。非遺伝の病気は外傷などの環境病。その真ん中に糖尿病や生活習慣病や癌などがある。こういう関係
を覚えていただいて、いかにしたら予防ができるかを次にお話したいと思います。
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<西洋医学による疾病の分類>
これは私が分類したもの。外国にはこれはないので、西洋医学による疾病の分類を私がつくったが、ま
ず原因としては事故がくる。事故にはいろいろな原因がある。殺傷もあるし、銃器や刃物でもしょっちゅ
ういろいろなことが起きている。自動車事故もあるし、それ以外では現代では航空病とか宇宙病などもあ
る。こういう事故から起こる病気もあり、更に自殺や殺人もある。これ等は予防が出来る。
その次に病原体の感染で起きる病気もある。このようなものに対しては、近代医療では西洋医学でしか
効かない。抗生物質しか効かないが予防ワクチンも有効なものがある。
私は実は統合医療学会も一緒にやっている。東洋医療は全身を治すものだが、西洋医療は臓器しか治さ
ない。だから全体を診るということを知らない。デカルトが16 世紀に心身二元論を唱え、『心』というも
のを分類してから、西洋医療は、精神病というものは別なものにしてしまったので、精神病の治療に対し
ては非常に遅れている。近代医療で精神病の治療を始めたのは、たった150 年前。フロイトの前に、ビネ
ルが狂人は囚人ではないと精神病の患者を鎖から開放し、精神分裂の連中を精神分析などで治すことを始
めた。それで50 年前化学薬品療法が入ってきたというわけです。西洋医療は精神病の治療は非常に遅れて
いるが、東洋医学は、精神病に対する治療は4000 年の歴史があるのでわりに進んでいるわけです。
問題は炎症性疾患。炎症性疾患は今では予防もできるし治療もできる。炎症性疾患というのは自己免疫
疾患で、自己の免疫が強くなってきて起こる。こういう概念は10 年前の近代医療にはなかった。感染症は
あるが炎症性疾患というものはなかった。免疫不全症のエイズが流行したので、いわゆる免疫性疾患とい
うものがどういうものであるか判かってきた。アトピー疾患や喘息、花粉症は、実は東洋医療がよく効く。
リウマチなども分子標的薬治療薬で特別に効く薬もあるが、非常に副作用が強いということをよく知って
もらいたい。しかも週2~3 回の注射が必要で、効いてくるのは2~3 ヵ月後、おまけに副作用が60%ぐら
いある。しかも非常にお金がかかる。疾病予防という観点から言うと、花粉症などを予防するのにどうい
うことをしたらいいかということを知ってもらいたい。わりあいこういうものに対しては、漢方や東洋医
療、生薬医療が効く。そういうことを理解してもらいたい。
生活態度から来ていることもある。いわゆるメタボリックシンドローム(代謝障害症候群)とか生活習慣
病。そういうものに対しては、遺伝子要因は割合に少ない。
それ以外に環境や放射線から来ている病気、雑音騒音からくる病気がある。そういう環境因子の影響が
進むと、生活習慣病から糖尿病などへ、更に、環境要因、生活がどんどん悪くなっていくと、変性疾患が
起こってくる。
それ以外の癌のような悪性疾患、良性腫瘍は再生機能がおかしくなって起こってくる疾患がある。良性
の場合はある程度まで限定されている。15 年前には免疫反応も関係している事が判明してきた。それ以外
に遺伝子要因の先天性疾患がある。その他精神神経疾患を別にした。
近代医療では非遺伝的なものの病気を分けている。そういう分類を知っていただいて、疾病予防の話に
移りたいと思う。

<生活態度関連疾患>
生活習慣病の関連疾患は高血圧症、高脂血症、体重過剰、高血糖の4 つが大きな原因がある。おもしろ
いことに、10 年前は生活習慣での一番の危険因子である。体重の過剰は全く無視されていた。ところがア
メリカでも54%の人が体重過剰であって、これが大きな原因になると言われるようになった。
体重過剰になると脂肪の細胞がいろいろなホルモンの分泌を妨げるので、アデボネクチンの分泌やイン
スリンの抵抗性が上がってくる。そうすると糖尿病や高血圧症となり、血圧も上がってくる。だから、 内
臓脂肪の蓄積による体重の増加というものが非常に問題になってくる。
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<リスクの集積は危険である>
高血圧が起こる原因として、最初に問題になったのは、塩の摂りすぎだということだったので、40 年前
に減塩食をすればいいということだった。25 年前に脂肪質(中性脂肪)の取りすぎはいけないということに
なったが、悪玉の低比重(LDL)脂酸などを摂りすぎるといけないと分かったのは、15 年ぐらい前で、そ
れまではあまり問題視されていなかった。
私は代謝症候群と訳しているが、Pre-Hypertension という言葉がある。Pre-Hypertension を直訳すると
前高血圧症。前高血圧は高血圧の前ということで、私は高血圧前駆症と訳したが、日本では前高血圧症と
言っている。前高血圧を持っていると高血圧が起こってくる。高血圧症は、収縮期の血圧130mmHg 以上拡
張期の血圧が90 mmHg 以上になると危ないということだが、その前の120~135/80~90mmHg をどう気をつ
けたらといいかと最初に気がついたのが、メタボリックシンドロームの始まりだった。そのうちにインス
リンに対する抵抗性が上がってくるということが分かってきて、メタボリックシンドロームと名付けられ
た。
結局体重が増えすぎると、脂肪細胞分泌ホルモンの問題が起こってくる事が、順々に分かってきた。メタ
ボリックシンドロームという名前ができたのが10 年前。そういう歴史を知らないで、急に「メタボ、メタ
ボ」というのは日本で一つの流れをつくって、そういうことを宣伝しているにしか過ぎないと思う。
結局、高血圧症や高脂血症が起こったりというのは代謝症候群があるから起こってくるわけで、これは
ある程度まで体質というのもあるが、それに対して予防をしなければならないという話になる。それがど
んどん進んでいくと、変性症候群が起こる。そうすると脂肪が溜まって、本当の血管硬化症が起きてもく
る。血管が硬くなり、コレステロールが動脈血管壁に溜まり、そしていわゆる狭心症や脳卒中が起こった
りする。脳卒中は血管硬化症も原因だけど、高血圧を放っておくことが一番の原因。だから血圧をコント
ロールすることが一番大事。それ以外には、高血圧を放っておくと動脈瘤とか心室瘤などもできてくる。
日本人にはまだ少ないが、末梢血管の血管が詰まってきて、いわゆるびっこを引くようになる。末梢血管
の病気というのは日本でもだんだん増えてくると思う。こういう一つの流れというものを知っていただい
て、予防ということを考えて欲しい。一番大事なのは、代謝症候群の時に、治療をして、なるべく血圧を
上げないようにすること、血糖や脂血を上げないようにするということが大事だと思う。
体重の過剰が一番いけない。体重が増えると内臓脂肪が増えてくる。内臓の脂肪が増えると、腹の周り
の脂肪が増えるので、腹囲が増える。男性なら85 センチ以上、女性なら90 センチ以上はいけないと言わ
れている。内臓の脂肪が増えるのは本当にいけない。
<リスクの集積は危険である>
メタボリックシンドロームには4 つの事項があるが、そのうちの1 つだけだったら、脳卒中や狭心症、
動脈瘤など血管のリスクが起こる確率はどのくらいかというと、1つでも1.54%である。血糖や血圧が高
いなど4 つの事項の数が増えると5.4%となり、リスクがどんどん増える。肥満症だけではなくて、血圧も
コントロールしないとどんどん危なくなる。
<8 学会合同委員会によるメタボリックシンドロームの診断基準>
日本は「メタボリックシンドロームの診断基準」をつくって発表した。悪玉が増えると、全体の脂酸が
増えるので危ないということ。150mm/dl 以上に増えると全体の総脂酸が増えるので危ない。血圧は130mmHg
以上だといけないので、下げるようにする。拡張時の血圧は85mmHg 以下、空腹時の血糖は110mg/dl 以下
にする。これが基準。だからこれ以上にならないようにいろいろ工夫するということが一番大事だと思う。
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<代替医療>

代替医療には、伝統医療と民族医療と新興医療がある。非常に古い歴史を持っている。インドのアーユ
ルヴェーダなどは4000 年の歴史がある。アラブ医療は今の西洋医学になったが、3000 年前からある。中国
医療は2500 年前からある。それ以外にもいろいろな医療がある。こういうものを利用して治療ができると
いうことを知っていただきたい。
どういうことを西洋医学はやっているか。生活習慣病はどういう治療が必要だとか、食事はどういうも
のを摂ったらいいかとか、その仕組みとか、運動はどうするとか。中国医療では針灸とかあんまなどを使
う。アーユルヴェーダのインドでは疾病の種類によって、治療方法が変わってくる。いわゆる生薬治療に
もいろいろあり、皮膚炎に対してどういうものを使えばいいかなど。いろいろ分かってくる。
これらは、いわゆる証拠に基づいた医療であり、わりあいにエビデンスをベースにしている。よく、黒
川清先生は「科学的証拠に基づいて」などと言訳しておられるが、そこには「科学的」というのはどこに
もない。エビデンスというのは証拠という意味だから、要するに100 人の患者がいて30 人治ったら、証拠
はある。けれど勝手に「科学的証拠」などと言っている。英語の真の意味を解しないで訳していると思う。
<ライフスタイルに関連する項目以上の頻度の推移>
ここで問題になるのは、生活が変わって、日本でも肥満が増えたということ。日本では1984 年には18%
ぐらいだったが、そのあとは少し減少したが、1997 年にはまた増えている。一番多いのは、酒の飲みすぎ
から起こる肝炎、肝機能の異常。ライフスタイルが非常に影響してくる。耐糖機能の異常というのはどん
どん増えている。いわゆる糖尿病は、昔は40 歳以上の人がなったが、最近では若い人の間でも、Ⅰ型の糖
尿ではなくⅡ型の糖尿病が増えている。アメリカでは小学生の間で、Ⅱ型の糖尿病が増えているので問題
になっている。耐糖機能の異常が起きてくるのは肥満が原因。耐糖能の異常が起きてくるとインスリンの
抵抗性が上がってくる。
日本では今、高食塩から来ない高血圧症も増えている。アメリカは肉を売らなくてはいけないので、肉
を一生懸命日本に持ってくる。日本人はマクドナルドやケンタッキーチキンなど脂っぽいものを喜んでど
んどん食べているから、どんどんコレステロールが増える。やはり私は日本食がいいと思う。
<米国健康食品摂取量>
アメリカは、1958 年に健康食品をどうのように摂ったらいいか野菜、乾物、肉類の平均的摂取を示す図
を発表した。ところが1991 年に生活習慣病というものが出てきたら、パンや麺類も必要だけど、野菜や果
物をいっぱい摂らなくてはいけないと、この図ような三角の形にした。油や脂肪や甘いものなどは、少な
くしろということで、三角の一番てっぺんに持ってきた。そして牛乳とか肉を半々にしろと。できること
なら、そのうちのたんぱく質も鶏肉などから摂ること。鶏肉でも、皮は肉との間に脂肪が一番多いので摂
らないようにするとか。豆類では、大豆が非常にいいということで、アメリカでも豆腐屋は非常にたくさ
んできてきた。そういうものをたくさん摂ること。野菜も、大腸にいいから繊維の多いものをたくさん摂
る。そして、果物もたくさん摂るという形になっている。アメリカでは、1991 年から急に変わってきて、
そういうこと国民に勧めながら、日本人は「肉を食え、肉を食え」と言っている。それは非常に矛盾して
いると思う。


<運動の程度と各年齢層における100 人あたりの死亡率>

運動というのは非常に大切で、運動をしないと死亡率がどんどん上がっていくということを見ていただ
きたいと思います。疾病の予防には運動が大切。生活習慣病は運動しないと死亡率がどんどん上がってく
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る。非常にはっきりしている。私は毎朝泳いでいるが、65 歳になって運動をしない人は死亡率が上がって
くる。軽い運動をしている人は、上がり方は少ない。しかし、あまり運動しすぎるのも危ない。だから中
等度の運動をするのが一番いい。そういうことを理解しながら、運動をするということが大事だと思う。
<加齢に伴う諸機能の低下>
歳を取るということは、どうにもならないことだと思います。全機能が下がってくる。私たちの歳ぐら
いになると、肺活量は半分以下、腎臓の血流の量も半分になってくるし、呼吸量も減ってくる。でも、こ
れはどうにもならないこと。では、加齢に伴う機能の低下を少なくするにはどうしたらいいかというと、
食事療法をして運動をするということが一番大切。後期高齢者に対しても長生きの秘訣になると思う。
<主な傷病の受療率の年次推移>(外来の受療率)
日本では高齢化のため悪性疾患の他に、高血圧症、心臓病、脳卒中はどんどん増えている。1955 年から
増え続けている。それ以外にも、最近はいろいろな事故が増えているし、肝疾患も増えている。受療率も
どんどん増えていることがはっきり分かると思う。
<アメリカの65 歳以上12 大疾患推定罹患率>
アメリカの65 歳以上の方の疾患は関節炎が一番多い。コンクリートの舗装道路で激しいジョギングなど
すると、関節炎を起こしやすい。いろいろ言われているが、全体としては脳卒中や悪性腫瘍の罹患率は非
常に少ない。高血圧症はどんどん増えている。そして、耳が聴こえないというのが多い。最近では、ラジ
オ、テレビ、コンサートなどでのいろいろな高音の機械音は難聴の原因になるので、そういうものは避け
るようにする。心臓の疾患も非常に増えているが、関節炎や難聴に比べると少ないということがお分かり
になると思います。


<肥満症の治療基準>


いわゆる肥満症の治療はどうしたらいいのか。第一段階5~20%体重超過した場合、まず自己で食事の管
理と運動療法をするということが一番大事。第二段階になると、低カロリーの食事をしなければならない。
あとは運動療法をする。第三段階の40~100%ぐらいになってくると、医療機関の指導による低カロリーの
食事が必要で自分自身で調整出来る。ここでも問題になってくるのは特定の指導をしなくてはいけないと
いうのは第三段階だということ。
厚生労働省が、なぜ特定保健指導をつくったかというと、診療費などをどんどん減らしたものだから、
医者に対してお世辞を使うためにああいうものをつくった。ところが、ここで問題になるのは、一般開業
医にその能力があるか、本当に指導をしてくれればいいが、実際にはいろいろなことを書いて申告しなく
てはいけないので、なかなか指導ができない。そういうことに時間がかかる。事務費がどんどん増える。
患者を診る時間も少なくなってくる。だから、第三段階では本当に指導を要するが、第一段階、第二段階
というのは、個人の教育によってやるべきだと思う。だから、経済学者が勝手に考えたことが、私には非
常におかしな話で、特定検診や保健指導が必要なのは、第三段階の問題。第四段階になると、個別治療で
入院治療をしなければならない。下手をすればバイパス手術をして腸の吸収を少なくするとか、胃のバイ
パスの手術もいろいろな手術があるが、そういうこともやらなくてはならない。そういうことを理解して
いただきたい。
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<降圧療法の原則>

血圧を下げるためにどうしたらいいか。基本的なことは、要するに高カロリー脂肪食品を摂取しないと
いうこと。体重を減らすということが一番大事。運動をして、お酒や煙草をあまり飲みすぎないことが大
事。糖尿病、高脂血症などがあれば、それに対する治療をするということも大事。進んでくると、冠動脈
疾患や脳卒中の治療をしなくてはいけない。心不全を起こせば手術などの治療をしなくてはならないとい
うのは医療の問題になる。ここでは、疾病の予防という題なので、一番大事なのは最初の4 つ(減塩食、
体重減少、運動、禁酒または節酒)だということを理解していただきたい。医療の種類はいろいろあるが、
そんなことは医者の問題だからまかしておいたら良い。
<高コレステロール血症の評価・治療に関する基準>
高コレステロールの血症の評価にどういう基準があるか。いわゆる中性脂肪は200mm/dl 以下にならなけ
ればいけない。高比重脂質HDL を増やさなければならない。HDL は良性のものだから、そういうものを多く
含んだものを食べた方がいい。例えば卵もLDL が多く、黄身はコレステロールの塊で本当にいけない。1
週間に2 つ以上食べるとLDL が上がってくる。脂肉や鶏肉の皮もよくない。仔牛の肉はいいが、アメリカ
が勧めてくるアメリカ製の牛肉や和牛はコレステロールが非常に高いということを知っていただきたい。
以上の症状があることは、治療をしなくてはいけないので予防とは云えないが、まず悪性のコレステロ
ールを100mm/dl 以下にしなくてはいけない。日本の標準は100mm/dl、アメリカは80mm/dl にした方がいい
と言っている。虚血心疾患がある場合、もっとコレステロールは下げた方がいい。こういう指導はある程
度までは自分でやらないとどうにもならない。どういうものを食べたらいいか、またはいけないかという
ことは、自分でやるしかない。そしてむしろ、メバロチンなどを使って副作用を心配するよりも、コレス
テロールが高い場合は大豆をたくさん食べるとか、青汁を使うとか、東洋的な代替医療が効く。そういう
ことを理解していただきたい。
<総コレステロール値と冠動脈疾患脂肪>
コレステロールが上がってくるとどういうふうに関係があるかと言うと、160mm/dl 以上だと冠動脈に入
って、10 年間で100 人に1 人ぐらい。210mm/dl だと4 人も死ぬ。300mm/dl だと100 人に1 人が冠動脈疾患
となり9 人が死亡する。そういうことを理解していただいて、やはりコレステロールは下げないといけな
いと思います。

<米国虚血性疾患死亡率改善要因の推定(1996)>

私はバイパスを世界で最初に虚血心疾患に実施しましたが、バイパスの手術によって死亡率がどのくら
い下がったのかというと、心疾患の死亡率全体の改善では思ったより少ない。計算をしてみると、食事療
法でコレステロールを下げるということが、いかに人命を救っているかということが分かる。あとは禁煙、
高血圧の治療をするということが、心臓発作を起こさないということに非常に影響してくる。要するに、
心不全の治療やアスピリンを使ったり抗血栓の治療で救っている率から言ったら、コレステロールを下げ
て、禁煙をして、高血圧を下げる方が、よっぽど人を救っている。医療の進歩により、最近では、アメリ
カ全体で120 万ぐらいの人が死んでいたのを救うことができたと言うが、バイパスはそのうちの20 万人ぐ
らいしか救っていない。心疾患や脳卒中のための救急室の設置の貢献度も高い。そういうことを考えたら
PTCA は現在増えたが、数から言ったら30 万人と少ない。だから、一番大事なのはコレステロールを少なく
して、禁煙をして、血圧を下げるということが一番大事だと思う。
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<脳血管疾患による訂正死亡率>
日本の脳血管疾患の死亡率はどんどん下がっている。これは食事療法も大きな原因だが、いわゆる早期
発見で早期治療をしているということも原因だと思う。アメリカでも日本でも減ってはいるが、まだ日本
は非常に多い。だから血圧の治療をするということは非常に大事だと思う。
脳卒中の年齢の死亡率を見ると、歳を取った人が多い。なので、生活を改善して脳卒中の死亡率を下げ
るというのも一つだと思う。しかし、それで50 歳から急に上昇し始め、70~80 歳の男性の死亡率は10 万
人に2 千人と多くなっている。高血圧症と脳卒中との関係というのは非常に高い。高血圧症の人は70~80
歳になったら、非常に高い率で死んでいる。だから血圧をコントロールするということが非常に大事で、
若い時に血圧が普通の人は死亡率が殆ど上がっていない。
<相対的皮質骨量の年齢変動>
これは骨粗鬆の問題なので、生活習慣病には関係ないが、疾病予防として骨折を防ぐにはビタミンDや
カルシウムの摂取が必要である。女性ホルモンは副作用が多いので摂取は推められない。
<日米アルツハイマー型痴呆症年次推移>
アルツハイマーは日本もアメリカも増えているし、これからもどんどん増えると思う。やはり老人にな
るとアルツハイマーの出現率が多くなる。我々の歳ぐらいになると40%ぐらいの人がボケている。おもし
ろいのはアルツハイマーの症状があって、MRI ではっきり診断がついて、解剖したらアルツハイマーになっ
ていたのに、普通の生活をしていた人がいるという話。有名なのはウイスコンシン州の僧院の尼さんの研
究で、尼さんが、死ぬまで僧院の院長として自由にいろいろなことをやっていて、死んでから解剖してみ
たら、非常にアルツハイマーが進んでいた。だから、頭を使っていたら、いろいろな変化が起こっても機
能はできるし、痴呆にはならない。そういうことを理解していただきたいので、尼さんの話を出した。痴
呆の予防は、常に何かをして、常に頭を使うこと。だから私もこの歳でも色々の事をしていこうと思って
いる。
今日は疾病の予防ということで、全体からお話をしないと分からないと思い、回りくどい話になりまし
たが、判かっていただけたらありがたいと思います。細かい部分で、どういうことをしたらいいのかを
言っていますと、きりがないので省略しました。
第2 部 パネルディスカッション「21 世紀医療の未来像」
司会者:最初に講演なさった廣瀬先生が、今日は時間がなくていろいろ話せなかったということがたくさ
んあるそうなので、まず、廣瀬先生の方から第2 のコメントとして頂戴したいと思います。宜しくお願い
します。
廣瀬氏:パネルディスカッションの時に話せばいいと思って、医療費の問題について話さなかったのです
が…。
高血圧の人間が日本はどれくらいいると思いますか?大体、1 億の人間の半分は高血圧症。自分
が高血圧だと知らないのは50%で、2500 万の人間が知らない。そのうちの残りの50%のうちの
25%は知っていても治療をしない。治療を受けているのは25%しかいない。その中で、医者が良
くてちゃんと血圧をコントロールしている人はすごく少ない。10%の人しか血圧をコントロール
していないので、大半の人は治療していないに近い。
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だからと思うが、今度の特定健診で、そういう人たちを探しだしてやれば、医療費は必ず上がっ
てくるという話だが、結局全然、厚生労働省は分かっていない。医療費が削減されるかと思った
ら、大間違いだ。アメリカでは、大部分は高血圧症という診断できない。いわゆるアメリカはHMO
やPPO の集団保険が多く、50%の民間保険の25%で、無保険者も15%、35%のメディケイドやメ
ディケアなども金を払いたくないから、診断をしないようにしている。日本でそれをすることは
非常にいいこと。医療の質を上げるために、国民のためにそういうことをやることは非常にいい
ことで、私はとてもいい制度だと思います。大いにやっていただきたいと思う。
ただ、医療機関がそれだけの準備ができているかどうかは分からない。西村さんがおっしゃった
ように、そういうことを全然厚生労働省は理解していない。医療機関はすでにもうパンク状態。
医師や看護師は十分でないし、そういう保健師もいない。しかもそういうことをするためには時
間も必要だし、いろいろな事務費が増える。且つ、それを申請をするためにいろいろなものをつ
くらなければならない。いろいろな施設もつくらなければならない。そういうもののお金がどこ
から出てくるのだろう?政府は、実際のところは5 万円かかるところを2 万5 千円しか払わない
と言っている。そんな馬鹿なことをやったら、医療機関は困るばっかり。厚生労働省はそういう
ことが分かっていないし、アメリカの状態も分かってもらわないといけない。結局、アメリカは
そういうものを診断すると、損をするだけだから診断しないようにしている。そういうことを分
かっていない。
もう一つの問題は、医療の質を良くすることはいいことだが、それは人間が長生きすることにな
る。人間が長生きして、そのあと何で死ぬかというと、悪性腫瘍で死ぬことが多い。悪性腫瘍は
一番金がかかる。人間が死ぬ時は大体医療費の3 分の2 を使う。医療費を削減するために、そう
いうことをするということを厚生労働省が言っているのは、見当違いです。そうではなくて、国
民の健康を保つために、医療の質を上げるためにやるということを建前にしてやるのは、私は大
いに賛成で大いにやっていただきたい。ただ、それに対する見返りの金をよこすためには、そし
て地方のそういう施設に対して十分の金を出すべきで、地方の税金を減らすなど、そういう馬鹿
なことをする厚生労働省の考え方は非常に間違っていると私は思う。
廣瀬氏:喫煙の話をちょっとしたかったのだが、スライドを持ってきたがやらなかった。日本は、
非常に煙の率が高い、男性の43%、女性の10%が喫煙しているし、減っていない。アメリカでは
どんどん減ってきているのに、日本の喫煙率は高いし、肺癌の率もどんどん増えてきている。
アメリカの肺癌の率はどんどん減ってきているので、今は日本と殆ど匹敵している。
喫煙するということは非常に悪いこと。だが、なぜ日本が禁煙をやっていないかというと、前は
専売公社がやっていたが、政府に結局金が入らなくなるから。アメリカではそれを非常にやかま
しく言っている。どこの国でも喫煙に対しては非常に問題になっている。禁煙は結局肺癌だけで
なくて、心臓の病気も防ぐし、肺気腫や気管支拡張症からくる肺胞や気管支の拡張も防げる。非
常に大事である。メタボリックシンドロームの中に喫煙は入っていないが、危険因子の中の5 つ
目には入っている。でも、日本の政府はそういうことをやっていないということは非常にけしか
らん話で、西村さんが言っていることは正しい訳です。
もう一つの問題は、アメリカでは健康診断は殆んどしていない。なぜかというと自分の負担だか
ら。ところが日本は健康診断は自分の負担でやっていたが、そこを健康診断に対して色をつけた
というのは非常にいいこと。ですから私はやることは賛成。でもそれで医療費が削減できるとい
う考えは間違っているということを言いたい。
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廣瀬氏:GNP の8~9%で国民の医療費を賄っているのは日本だけ。他の先進国は10%以上払って
いる。ですから8%でやろうというのは無理であって、やはり医療費を上げていかなくてはいけ
ない。それには、国の費用から国民に払わなければいけない。高齢者は、今まで働いてきたのだ
から、自分で払わなくてはいけないという規則をつくった政府はおかしい。だけどそういうこと
を我々が言っても、政府が決めたものに対しては、医療機関としても医師としてもそれに対応し
ていかなければならない。そういうわけで、私は日本医療経営学会をつくった。それに対応する
のはどうしたらいいかということが問題であって、決まってしまったことはしょうがない。
だから日本の問題は、日本の経済学者が、医療費全体を経済的に考えて、医療をコントロールし
ようとするから間違っている。どれだけの費用がかかるか、そして国民がどれだけ困っているか、
医療をやっている現場の意見を聞くべきだと思う。どんどん貧乏老人や独居老人が増えているの
に、こういう費用を出させるということがおかしい。しかし、それを我々が議論してもどうにも
ならないというのは、結局、厚生労働省の役人が経済学者の意見を聞いてやっているから。
こういうことに決まってしまったことに対して、現在はどうすることもできない。だから、私は
これからの崩壊寸前の医療と介護を救えるかという本を書いたのです。

司会者:それでは、質問はいかがでしょうか。非常に広い分野にお話が出てしまったので、
それぞれの先生にご質問をお受けしたいのですが。いかがでしょうか。
質問者:2 点だけ聞きたいと思います。まずその前に、私は正直に申し上げますと、11 年前に
脳腫瘍で手術をしたので、今は生きていないはずでしたが、現在こういう機会があることに大変
感謝している。生きるということは健康であるべきことだと思いますが、生きてここまで来られ
た。しかも尚且つ、4 センチぐらいの脳腫瘍で、手術は3 時間半で終わりますと言われたが、
結果は6 時間半かかったそうです。出血が非常に激しかったが、先生がこの患者だけは輸血をし
ないで全部準備したものだけで終わらせようということで、輸血を1 滴もしなかったそうです。
手術が終わって出てきた時に家族は、私の血の気が全くなかったので、「明日はお通夜だわ」と
思ったらしい。それが今はこうやっていられる。幸せですよね。ですから今は感謝の時です。

ただ、先ほどから聞いていて、医療費が大変だということだが、お医者さんが機会をつくり、も
のすごく高い研究開発をして、検査の費用だけでも大変金がかかる。先ほど、ある特定の一部の
方々に検査その他をやると莫大な金がかかっている。一般の人は殆ど使わないが、その人たちが
どんどん金を使っているという話だったが、そのお金はいったいどこに消えるのだろうか?製薬
会社や製造機械メーカーの方にどんどん流れていってしまうのか?果たしてそれでいいのかなと
思うが…。

あるところからの話で、大変大きな金額の請求があり、びっくりしたという話があります。金額
も何百、何千万、何億というお金の請求がある病院の方からどんと出てきた。それだけの治療が
本当に必要であったかということになると、果たしてどうだろう?という部分もあるのですが…。
ただ、そういうことを平気な顔をしてやるお医者さんや病院もあるということもチラチラ聞くこ
とがあるが、果たしてどうなのか。本当に、皆、健康でありたい気持ちは、私は今こういう状態
であるから、尚のこと痛烈に感じます。その点がまず第1 点。
もう1 点は、皆でお金のある国の方からどんどんお金をむしりとる。あるところから取ればいい
10

じゃないかという形が果たしていいのかな?やはりそれをきちんと大きな視野で、この範囲でこ
ういうふうにするんだよとした方がいい。皆さんも家計があって、収入の50 万、汗水たらして働
いてきたお金を、奥さんが「私は100 万使うのよ」言ったら、「あと50 万はどうするの?」と思
う。「あなた、働きなさいよ」と言われても、50 万取るのは大変。それを「私の勝手でしょ」と言
われ、毎月それが増えていって、そのお金をどうやってつくるのかというと、「そんなの借金をす
るわよ。ローン組むわよ」とやられてしまったら、今の日本と同じ。収入の範囲内でやるように
しなくちゃいけない。代議士、お役人はこれが全然見えないで、そういうふうにして、今、国の
財政は大赤字。厚生労働省や国土省の人は、全く反省の『は』の字もない。果たしてこれでいい
のかな?しかし、日本の人たちは本当に真面目に働いている。ところが今はその皆さんが一番心
配している。事業をやっている人は「お金がない、お金がない」と言っている。皆、お金がない
のに、政府はお金を流さない。流してやればもっと良くするし、税金も納めるよと言っているの
に、それを収めきれない状態。こういう状態を垣間見て、日本人はこんなに真面目に働いている
のに、日本はおかしいねと痛切に感じる今日この頃でございます。これについて先生方のお話を
聞けたらありがたいと思っております。以上です。



司会者:まず、心臓バイパス手術の人類の発明者であります廣瀬先生の方から医療の視点からと、
経済システムの西村さんにご意見を伺いますので宜しくお願いします。
廣瀬氏:日本の医者や病院が全くいいとは私は全然言っていません。というのは、結局、日本の
病院とい
うのは不必要な機械をいっぱい買っている。例えばアメリカでは、1 つの地区にCT とかMRI をい
くつしか持ってはいけないと決めている。それを共有しなさいと言っている。だから余計な検査
はしない。しかし、日本の保険の支払いは出来高払い。やればやるほど儲かる。やらなければや
っていけない。だから、私はいいとは思わないが、結局余計な検査をする。つまらない検査をし
て、重要な治療をしない。診断では本当にいろいろなことをやる。一人の患者からCT を撮って、
MRI を撮ってと、必要のないことまでやる。つまらないところにお金を使う。でも、そうしないと
病院はやっていけないんですよ。そういう制度が悪い。だから、そういうことを知らない役人が
馬鹿だし、日本の経済学者は馬鹿なんですよ。医者を責める前に、まず行政を責めたらいい。そ
れを理解していただかないで、「医者が悪い」と言う。それは確かにそういうことをしている医者
は悪いですよ。だけどそれをしなかったら、病院はやっていけない。日本の病院というのは人件
費が50%以上あったら潰れちゃう。アメリカはいくら使っていると思いますか?人件費は最低
70%使っている。ですから、機械かなんかで儲けないと、やっていけないですよ。先ずそういう
制度をつくっている医療制度を変えなくてはいけない。ですから、医師や医療機関を責める前に、
そういうことを理解してもらわないといけないと思っています。
質問者:東洋医学と西洋医学とちょっとお触れになったんですけど、興味を持ちました。私は
中学の後半
で肺結核になって、病気については、ずい分苦労してきました。その中で、針灸とか気功とか整
体とか、そういうようなものにも関ってきて、東洋医学というのは非常にいい。2000 年3000 年の
年月を経てきただけあって、いろいろな意味で貴重だし、私にとっては効き目があると思ってい
るのですが、もう少しお話していただけるでしょうか。
廣瀬氏:私は実は統合医療に関係しているので、今回もアマゾンまで行ってきました。アマゾン
の生薬を
調べたり、エジプトの古い生薬を調べたり、アフリカの生薬を調べたりした。それはメディカル
トリビューンにも書いてありますし、私の本にも書いてあります。ここで問題になるのは、東洋
医学というものは全身チックな治療をする。つまり人間を治すが、西洋医学は臓器医療、臓器は
治すが人間は治さない。ですから、心臓が悪くなったら、最後にはバイパスは必要だが、その前
の全身的な治療ということを全然しないということです。
結局冠動脈バイパスをやっても、線維化を起こして血管が詰まってくる。カルシウムが高くなっ
てきて、心臓粘膜を治してあげたのに悪くなるとか。そういうことに対しての全然知識がなかっ
た。西洋医学は、最近になってからやっとそういうことが判かってきた。東洋の医学は免疫や自
己の自然治癒ということを非常に考えている。自然治癒というのは免疫のこと。そういうことに
対しての概念が西洋医学には全然なかった。ですから自己免疫疾患という概念は最近まではなか
ったし、炎症疾患、アレルギー疾患も全然分かっていなかった。そういうことを東洋の医学はち
ゃんと知っていた。針灸なども非常にいいというのは、結局脳内モルヒネは針をやると出る。春
山茂雄氏などは、ハーバードで研究したこのデータを盗んで、脳内革命などいんちきなことを書
く。ああいう日本人がいるから、結局日本人はおかしくなっていくと思う。ですから、本当に東
洋医学の真髄を知っていて、鍼がどういうところがいいかとか、経絡なんかも知っていなくては
いけない。そういうのはちゃんと効果がある。気功でも内気功、外気功などいろいろあるが、秼
に内気功は精神と呼吸を整えるので効果がある。日本はそれに対してどういうエネルギーが出る
とかは研究されてない。でも、アメリカでは研究が進んでいる。NIH 国家保健研究所では、そうい
う研究をしているわけです。日本の厚生労働省はそういうことは全然興味がない。そういうこと
に対して興味を持ってやらせなければいけない。日本の東洋医療の問題点に対しての本を書きま
す。来年書くと思いますので、読んでください。

質問者:元来は天文学でございまして、医者のことも経済のことも全然分からないのですが、
日本の経済
は本当に実力があるのに非常に悪い状態になっているという話を聞かされました。どうすればい
いかというと、国庫のためには減税しなさい、お札をどんどん刷りなさい、国は国債をもっと買
って、借金をしなさいということ。そうすると景気が良くなって、結局、国庫が増えると聞かさ
れて、逆みたいな話ですがへぇと思った。でも、ホルモンでも地球環境の問題でも一見逆風みた
いなことが非常に有効であったりする。先ほどのお話を聞いていて、医療の中にもそういうこと
がありそうな気がしています。今の医療制度のどこをどう変えれば、どこがどうなってうまく行
くかというような端的な施策というものはございませんでしょうかという質問です。
廣瀬氏:正直言いまして、私は「環境医学事始め」という本を15 年前に書いたが、全然売れなか
った。環
境医学という言葉を私がつくったが、誰も興味を持っていなかった。廃棄物の問題、CO2 の問題と
か、水質の問題、排気ガスの問題とか全部書いてある。そのうち読んでいただければ、そこにち
ゃんと対策も書いてありますから。全然売れなかったので、びっくりした。皆、全然興味を持っ
ていなかった。今度は統合医療について書こうと思って、医学書院に持っていったら、統合医療
は売れなくて困るからと断られたので、他の書店から出しますけど…。日本の医療というのはそ
ういう状態なんですよ。現在問題になっているのは診療報酬だから、「診療報酬のことを書いてい
ただければお出しします」と言う。目先のことだけしか考えていない。大きな目でものを考えて
話をするということになりますと、また1 時間かかりますから、ちょっと今回は遠慮していただ
いて、本をお送りします。

質問者:もうちょっと具体的に「こうしなさい」「ここをこう変えなさい」という議論があったら
今、お聞きしたい。

廣瀬氏:全体を変えなければならない。日本の医療介護の本も書きましたが、あの本を読んでいた
だければその方がずっといい。一言で、どうしたらいいかは言えない。

質問者:それを聞きたい。
廣瀬氏:要するに医療費をもっと増やしなさいと。老人にもっと良くしなさいと云う事が肝要です。

質問者:経済の時にはちゃんと話をしてくれた人がいたから、ここでもあるんじゃないかと思って。
廣瀬氏:だからやはり医療費はもっと増やさないとダメですよ。日本の経済や国力から言っても、
    イラク戦争や不必要道路建設など、くだらないものに使わずに医療費を増やしなさいと言う。
    一言で言えばそうですよ。

質問者:否定の議論でなくて肯定の議論は?
廣瀬氏:だから医療費を増やしなさいというのは肯定ですよ。

質問者:メカニズムをちゃんとやってください。
廣瀬氏:メカニズムは個々にやっていく以外にはしょうがない。
質問者:豊島区の病院で内科の医者をしておりますアキヤマと申します。実は中国医学もやって
いまして、
医者になってからしばらくの間、東西一体化ということをやってきました。今、聞いている中で
私が2 つ感じたことを言わせていただきたいのですが、1 つは、西村講師が言っていましたように、
日本の医療はおかしい。コスト意識がないし、当然やらなくてはいけないことが、少しもデータ
として出てきていない。基本的なデータが少しもない。日本の医療に対するお金のかけ方にも問
題があると、内外両方の問題を指摘してくださったと思うのですが、私は医療側の中にいて、先
生たちが言われていることは、もっともだと思います。医者の間ではこういう議論をすることが
殆どない。なぜかというと、私たちは毎日、目の前の患者をどうにかすることだけに追われてい
て、それが終わると日が暮れていて、帰って寝るわけです。それを毎日繰り返しているのです。
そうすると今自分たちがいる制度が良いか悪いかとか、あるいはこのまま行ったらやばいぞとか、
本当にそういうことを議論するようなるのは、どこかの医院長になってからか、どこかの理事長
になってからだと思う。でも、そうなると今度は自分の病院の維持をどうするかにかかって、結
局一生涯考えずに終わってしまう。周りではどんどん医療制度が変えられて、薬価は下げられる、
検査費は下げられる。そうするとやはりどこか不正でもしようかなということも出てくる。結局、
犯罪というのは誘発されて出てくるが多い。これは私が病院側にいるからといって、別に言い訳
をしているわけじゃないのですが、かわいそうな部分がある。

でも、この問題を考えていくと、日本で言えば、社会全体は自由経済なのに、医療だけが社会主
義なんですよね。点数そのものでしか評価されない。点数を誰がつけるかというと、どこでどう
決めるかは知らないけど、官僚が全部つけている。点数表も厚い本になって、病院の事務の人た
ちは、それを広げて、点数を拾って打ち込んで、毎日その仕事をしながらレセプトを書いている。
それが実情。この点数がリーズナブルなものでできているなら話は別だが、そうじゃない。ご指
摘もそのとおり。だから、そういうことでさえも実は病院の中で議論になったことは殆どない。
廣瀬氏:だから日本医療経営学会をつくったわけですので、入ってください。
質問者:現場からこのような話が出ないというのも非常に重要ですが、日本の医療に対して、
現場の方から言うべき立場であるのに、誰も言わない。人が集まっているのに、誰も言わないと
いうのは本当におかしい。
医師会というのは、元々は開業医の団体なので病院経営のことは知らない人が多い。病院の方が
今はマネージメントがきつくなってきているので。開業医の方は一人の経営者ですから、わりと
優遇されている部分もあって今はそんなに困っていないので、まあいいじゃないかみたいな適当
なことになっている。
まず最初に、そういうことから始末をつけられないと、日本の医療は変わらない。私たちも、ど
ういう医療をしたらいいのかまず考えながら、制度をつくるにはどうしたらいいかということを
本当に現場の人たちが集まって何かをしないことには始まらないと思う。
廣瀬氏:だから日本医療経営学会を創設したのです。
質問者:ありがとうございます。そのことが一つ。本当に私もそのことが非常に不思議だった。
私の親も開業医でしたが、私が小さい時に、私が今考えていることを言っていた。「日本の医療
は社会主義だからダメなんだよ」と。あの頃は分からなかったが、今になって本当によく分かる。

それからもう一つは、東洋医学とひと言で言ってもいろいろありまして、私は中国の医学をやっ
て中国の先生から教わったものですが、ここにもいろいろ問題がある。私もこういう勉強をして、
現場で「さ、やるぞ!」と思っても、周りにやる材料が何もない。まず最初に薬がない。「あるじ
ゃないか」と言う声も聞きますが、はっきり言って、あんなものは使い物にならない。私の前の
病院の医院長は「薬を揃えあげたじゃないか」と言うが、あんなのは薬を揃えたことになってい
ない。あるような錯覚に陥っているだけ。実際にツールがない。

例えば西洋医学の先生が現場に出て、「手術をやりましょう!」と言った時に、明治の最初の頃の
ように、周りには注射器もない、点滴もない、薬もなかったら何ができるかと言っても、何もで
きない。それと同じような状況が、実は今の日本の東洋医学と称するものの現状です。大学病院
では東洋医学科というものができてきたけど、そこでやっている医療は、私も20 何年か前に東洋
医学を作ってきた一人だが、その当時に比べても程度の低いことをやっているわけです。
廣瀬氏:明治時代に後藤新平や森鴎外がドイツ医学導入のために滅ぼしちゃったから?

質問者:そうですね。そのとおりです。だから、本来ならば患者に合わせて、生薬と称する天然の
生薬を組み合わせてつくるというかなり難しい作業をしなければいけない。それができない医者が、
東洋医学と称してエキス剤を使っているという現状がある。日本の医学部はそんなものは全然教育
もしない。医者としての資格があると、それをやらせているというヘンな国なんですよね。それ
で恐ろしい治療の仕方をしていますから、今は漢方薬に対する副作用と言われているものがたく
さん出てきています。でも、それは殆ど「誤治」なんですよね。「誤治」というのは間違った治療
というもの。そういうことを平気でやっている。これもまた不思議な国だと思う。

廣瀬氏:漢方を知っている人は日本で3000 人ぐらいしかいない。

質問者:そんなにいないものなんですね。みんな知っているとは言っているけど…。

廣瀬氏:知っているとは言っているけど、実際にできるのは300 人しかいない。

質問者:大体、1000 人割るんじゃないかと思う。そうすると東洋医療とかをやろうとしても、
はっきり言ってフィールドがまずない。だから、そういうことをよく知っていて議論をしないと、
フィールドがあるのにどうしてできないのかという話になってしまう。

廣瀬氏:そんなことは言ってないのです。これからやろうと言っているのです。

質問者:先生の話ではなくて、一般に、そういうふうに誤解されているのではないかと思う。

でも、今やっている私の本心を言えば、そういうことなのです。フィールドを収めるということ
は大変なこと。なぜかというと教育がないまま100 数十年来たので、その教育のない現場で違う
タイプの医
療をやるというのは、はっきり言って不可能だと思う。医者の集団というのは職人集団です。私
も先輩や上の教授から教わってきて、それを忠実に真似るということから始まっていますから、
それ以外のことを入れるというのは、職人の世界では非常に難しい。まず大きなテリトリーの厚
い壁があって、他の概念は入れたくない。自分たちでやっていることで自己完結しているからい
いじゃないかと、そういうことになる。そういうことをよく認識していただくといいのではない
かと思う。私がやっていることを通して、2 つのことを意見として言わさせていただきました。
質問者:出版社をやっていますが、元々のきっかけは環境と医療というものはセットにされていないとい
うことで、環境医学研究会というものをつくりました。

廣瀬氏:15 年前に環境医学の本を書いたけど、当時は世間の関心が少なくて全然売れなかったです。

質問者:公衆衛生学会とか、環境は環境の学会で環境経済学の先生たちで日本環境ホルモン学会というも
のもあるが、本当に限定されたところだけであって、環境と医学を結びつけている適切な学会が
ない。日本環境財団というところのサポートを受けながら、環境医学評議会というものをつくっ
て、何回が講演会を開かせていただいております。確かモロオカ先生にも1 回いらしていただい
たと思うのですが、ありがとうございます。
環境と医学ということで、「環研出版社」という名前をつけて、出版をしております。とにかく環
境と医学というテーマで、学会などを先生たちにつくっていただきたいと思っております。千葉
大学に環境医学をされている先生がいらっしゃるのです。本当にきちんと世の中に出していける
学術的なものつくっていきたいと思っています。アメリカではNIH とかがすごくやっているので
すが、データも英語なので、なかなか一般の人たちがアクセスがしにくい。そういう一般の方々
がもっと環境と医学をセットにしたところを学べるような場所とか、学会なり会をつくっていき
たいと思っております。先生、是非なんとかできないものかなと思っているのですが…。
廣瀬氏:だからさっき説明しましたように、病気というのは遺伝子と環境の接触で起きるものだから、
そういうところを強調なさったらいいと思います。

                       ㈱シード・プラニング作成

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