第11回:2002年(平成14年)12月4日,於;人類エネルギー研究所

  「世界の常識・日本の非常識」
         
         波多野 敬雄 氏 
フォリン・プレスセンター理事長、元国連大使

      コメント:「国際協力の立場からの提言」
               田口定則氏 海外青年協力隊進路相談室カウンセラー

      コメント:「医療経営の立場からの提言」
              広瀬 輝夫氏 秀明大学医療経営学科主任教授

 波多野でございます、よろしくお願いいたします。「世界の常識日本の非常識」、お話ししたいと思います。

コメンテーターの方と経済協力のご専門の方が多いようなので、結局日本は経済協力しかないんじゃないか
と思っております。私は国連に4年、その前にジュネーブで国連関係の国際機関に3年やっておりまして、
ずいぶん国連の選挙を担当しましたけれど、日本ほど国連で選挙に強い国はないですね。日本が選挙に
立って負けることはほとんどないんじゃないですか? 最高点の場合が非常に多い。
 私がニューヨークにいる時に日本が安全保障理事会の非常任理事国にアジアを代表して立候補した時には、
無記名秘密投票で161票投票したうちの158の国が「ジャパン」と書いたわけですね。それから4年経って再び
日本が立候補した時には、インドが立候補して譲らなかったですね。インドは非同盟国のリーダーですから選挙
にはもの凄い強いことで知られているのですけれど、開票すると日本が144票、インドが40票ということで、世界中
が驚いた。 選挙で国連の専門機関、衛生問題のWHOとか労働問題のILOとか教育運動のユネスコとかあります
けれど、十余りあるうちの2つ日本が押さえているのですね。今はユネスコと電子通信の事務局長も日本が押さえ
ています。

 では、何故日本がそんなに選挙が強いのかというと、結局のところ援助をやっているからだと思いますね。
日本の選挙地盤というのはアフリカの52票、アフリカが日本にどれだけ親近感を持ちどれだけ尊敬の念を持って
いるかは極めて疑問だと思いますけれど、アフリカはお世話になっているということで電話一本で日本に投票して
くれるのです。同じように、中年塀の33票、これも日本に投票してくれるのですね。本当は一番投票してくれるべき
アジアは難しいです。アセアン、つまりフィリピン・タイ・マレーシア・シンガポールなどは日本と非常に親しいし日本に
調子がいいことを言うんだけれど、投票となるとこれ以上日本が勢力を増したら自分たちも従わざるを得ないということで、
アジアの票というのはなかなか難しいのですけれど、それでも半分以上の国は日本に投票してくれる。結局、191票の
半分くらいは日本へ来てしまう。あとヨーロッパの国も相当投票してくれる。
 そこで、日本から偉い方が国連へ来ると、よく出る質問があるんですけれど。それは、「国連が日本に期待することは
どういうことですか?」と。国連が真面目に答えるとしたら「うんとお金を出してくださいよ、それ以外ありませんよ」という
ことだと思うのですね。平和維持部隊を出して貰っても大して役に立たないし、日本は僅か何十人かを出すだけで大騒ぎ
をする、それから日本の平和維持部隊が死んだりしたら大騒ぎしてしまって大変ですよ。だから、日本はとにかくお金だけ
出して貰えばいい。それが最大の貢献だということが正直なところだと思います。

 日本はハンディキャップを持った国ということをよく言われるのですが、他の国には当然のように出来ながら、
日本にはどうしてもできないことがいくつかあるのですね。そのハンディキャップをいくつか申し上げて、これが日本の
非常識ということにつながると話をしてみたいと思うのですけれど。

 第一は外国人を入れないということですね。外国人を入れるということは日本にはタブーなのですね。日本人に永住
している外国人は一時的に滞在している人を除けば2%くらいですね。あとの98%はみんな大和民族なんですね。
こういう先進国というのは、世界にない。日本を訪問中のフィリピンのアロヨ大統領が昨日(12月3日)国会で「もうちょっ
とフィリピンの労働者を入れて、介護はフィリピン人に任せたらどうか」と演説したことに対して、法務省は断っているので
すね。私はフィリピン人を入れたら、介護保険が安くなって、さほど日本と競合もないと思っているのですけれどね。

 一昨日出た国連の報告書によると、2050年までに日本は3000万人の外国人労働力を必要とする。3000万人……、
そんなことは非現実的、そんなことは考えてもあり得ないことなんですね。経団連が最近出した案というのは、
あと5年のうちに50万人増やすと。それも出来ないと思いますね。
 今年の春、スイスの経済経営研究所が先進国40カ国の競争力のランキングを出しているのですけれど、日本は
半分以下のところにいるのです。一位というのがずいぶんあるのですね。高校進学率とか平均寿命とか貯蓄率とかね。
ところが、ビリというのが、外国人の日本における就職の可能性。もう一つ気になるのは、文化の閉鎖性は先進国の
中でビリなのですね。ということで、日本は外国から見るとそのように見られているなあと思います。

 一番典型的なものは難民の受け入れですが、5年前にジュネーブで緒方貞子さんと話した時に、緒方さんは前年の
先進国難民受け入れの表を見せてくれました。ヨーロッパの小国は1000名くらい、大国は3000〜4000名、アメリカは
1万名ですが、日本という欄に「1」と書かれていました。緒方さんに「これはどういうことかしら。『0』ならば入れない
ことにしているから分かりやすい。『1』だと入れてもいいけれど敢えて入れないということになってしまう」と。

 帰国してこれを担当している法務省の入国管理局長に訊いたら「そうなんです」と。「これは法務省の中でも国会でも
メディアでも、外国人を入れたら日本国内の治安が悪くなってしまう。『中国語を話している人を見かけたら警察に届けて
ください』というチラシが地方で回ったという国ですから、難民はなるべく入れないようにしようと『1』にしている」と。
 ぼくが法務省にいろいろと話をしたら、次の年の1月の名刺交換会の時に担当の局長が私に「今年からは受入数を
倍増しますから」と、1を2にして、それから一昨々年から16名に増やしたのです。「16名とは言っていますが、実質的には
20名以上受け入れていますよ」というのが法務省の自慢話なのですが、外国から見れば日本は100倍にしてもいいと
いうことだと思います。

 今から25年ほど前にベトナムから「ボートピープル」が何十万名と発生したことがあるわけですけれど、近傍の
マレーシアとかタイとか香港とかインドネシアは貧乏だけれど流れ着いた難民を追い返すわけにはいかないから
何万名と受け入れて収容している。その時日本は遠いからボートピープルは流れ着かないけれど、アジアの国だから
責任を負ってくれと言われて、清水の舞台から飛び降りたような1万名という受け入れ枠を作って、1万名受け入れたのです。
 ところが、ようやくの思いで日本に受け入れてもらったその1万名のベトナム人の若者たちはしばらくすると日本から
出ていってしまうのですね。食べ物も衣類も十分に与えられ、お小遣いまで貰うという楽な生活なのですが、
日本に住み着かない。やはり彼らは少なくても日本社会に受け入れられないと思うということなのですね。現に
日本で大成功しているベトナム人は一人もいませんよ。アメリカへ行けばベトナム料理のレストランで大成功を
している人がいる。日本というのはそういう社会であるということが第一ですね。
 
第二に、日本人は危険に身をさらさない人間ということ
ですね。これは悪いことかどうか議論の余地があるのですが、
危ないことをしない人間であることは確かだ。国連の関係で中田さんが死にましたけれど、それが大新聞の一面を
数日に渡って載りましたね。外国でこんなことをしていたら、毎日国連関係者の死亡記事が載ることになります。
 今から10年前に日本はカンボジアに平和維持部隊を500人出したのです。ところが一人も怪我をしないで帰って
きました。それは、紛争が起こったならばみんな基地にこもってしまって、紛争を収めに外へ出ていかない。
彼らは武器を持たせてくれないのですからという。それは確かにそうですね。5年前にアフリカのルアンダに
平和維持部隊を送った時は、機関銃を持たせるかどうかが大問題になって、500人の部隊に機関銃を一丁
持たせるという妥協案が出来て、あとの人はピストルか小銃で対応しろとなったのですね。そうなると、
紛争に行かないですね。

 カンボジアでは尊い命を落とされた方が2名いて、その方は自衛隊の方ではなくて、基地の外で働いていた
警察官1名と国連ボランティアの方なのですけれど。東京から政府高官が来て国連事務総長ブトロス・ガーリに
あまりにも「2名死んだ、2名死んだ」と言うので、懇ろな弔意を表した後ブトロス・ガーリが「しかし、平和維持部隊
では1000名以上命を落としていますからね」と言ったのですね。途端に日本側は二の句がつげなくなってしまって、
会談がすっかり白けて終わったことを覚えています。
 ということで、今の平和維持部隊は、もっとも安全でもっとも安楽な地域と言われるゴラン高原のイスラエルとシリアの
休戦ラインを守っている兵隊に対する通信・補給のために50名派遣しています。この部隊を派遣しようとした時に、
ゴラン高原の国連軍の司令官は「日本人を貰うと特別扱いにしなくてはいけないからいらない」と言ってきたのです。
もしも日本人が死んだらたいへんですから、他の国からもらった方がいいと。ところが、国連の本部が「国連の
分担金の20%も負担してくれている日本が、せっかく派遣しようと言ってくれているのだから断れない」と、
強引に押しつけたのが現実です。

 第三に、農産品について極めて厳格な輸入制限をしています。特にお米を入れないということについては、
世論が出来上がっているのですね。日本側が食料安全保障という論理を、最近では環境維持のためという論理を
考え出し、EUと組んで頑張っています。EUのフランスとフィンランド、EU以外でもスイスが農業の弱い国ですね。
ドイツは農業は諦めてしまっている。イギリスは大規模な農場だけが残っているので、強くなっている。いざとなれば、
フランスもEUをまとめるためには折れざるを得ない。あと日本と並んで頑張るのは韓国でしょうが、韓国は弱いですから抵抗できない。
 日本は何故お米をそんなに制限するか、日本は消費者団体もお米の自由化はいけないと言っているのですね。
日本から主婦連の消費者の代表者がガットの事務局長に陳情に来て「お米は絶対に輸入できない」と言ったのですね。
そしたら、ガットの事務局長が通訳に向かって「あなたの通訳は間違っているのではないか? 消費者の代表がそんな
ことを言うはずはない」と。これが外国から見ると異常であるということなのですけれど。

 もっとも私が重要だと思うのは日本の教育が偏っていて、日本は「和を以て尊し」とする国ですから、自ら主張を持たない
かあるいは持っても発言しないことが、日本は異質な国だと思われる最大の理由ではないかと思っています。これを直す
ためには、日本の教育が暗記の教育からものを考える教育に移らなければいけない。「和を以て尊しとしない」「出る杭は
打ってはいけない」「長いものに巻かれてはいけない」と言っているのです。

 ★ 一部ヌケ
 日本でも有名な先生の課目で、これだけは一番いい点を取りたい。一番いい点というのはAプラス、100人のうち3人か4人
です。Aは100人のうちの20人くらいだから、私はAは取れるだろうと思って、一生懸命その先生の本を読んだし、反対論を
書いている先生の本も読んで、10ページくらい我ながらの自信作を提出したところ、Bマイナスだった。合格点なんですが、
どうしてかなと思ったら、一番最後のページに「あなたの意見は何ですか?」と、その先生のコメントが書いてあった。
自分の意見が書いてない答案なんて意味がない。
 私の大学の卒業論文は100ページ書く人も200ページ書く人も300ページ書く人もいるのですが、1枚目は学校から配られた
“recommendation(勧告・提言)”という紙があって、300ページ書いたら、これを提言しますということが書いてなければ受け
付けて貰えない。分析がしっかりしているということじゃ、ダメだというのですね。
 アメリカの小学校では、「エルマーの冒険」という割と広く読まれる冒険小説があるのですが、それを半分読ませて、
「ここから先は自分で作文を書いていらっしゃい」というのが試験だった。高校でシェークスピアを取ったら、マクベスが
みなを時点で、「あなたがマクベスだったらどういう行動をとったか書け」というシェークスピアの試験だった。
 日本では、売れっ子の先生がご自分の授業を500〜600人が受講しているとご自慢されるので、「採点するのはたいへん
でしょう?」と言うと、「3つの答えが出る問題を作って、3つ書いたら優、2つ書いたら良、1つだったら可を付ける」と言うの
ですよ。「第4の答えや第5の答えをそれなりに論理を作って書いたらどうですか?」と言ったら、「それは講義を聴いて
いなかったということで落第だ」と言うのですよ。そんな教育をやっていては、だめじゃないだろうかという感じがありました
。以上は、他の国では常識だけれど、日本では出来ないことを申し上げました。

 他の国に出来ないけれど、日本だけに出来ることがあるのですね。それは、「黙ってお金だけ出すこと」。これは他の国
には真似が出来ない、難しいことなのですよ。税金を出すわけですからね、納税者があれこれ言いますから、お金を出す
時にはどう使われなきゃいけないまたはどう使われたかと、いろいろ言うのですね。国連側としても、他の国からお金を
100万ドルほどもらってあれだこれだ言われるよりも、黙って日本から出してもらった方がいいという気になるのです。
日本ではそのお金がどう使うかはあまり議論にならないですね。大新聞でもお金を出すか出さないかということについては
議論しますけれど、お金がどう使われたかということについては議論されない。
 私がニューヨークに行ってすぐに湾岸紛争が起こって、「日本は軍隊は出せないから金を40億ドル出す」と言ったら、
アメリカが「40億ドルなんてケチなことを言うな」と言ったので、日本から橋本龍太郎大蔵大臣がとんできて90億ドル
追加して130億ドル出した。130億ドルというのは1億2500万人の日本人口からすると、1人100ドル(当時のお金で
1万5000円くらい)以上のものを出している。そのために、時限立法で法人税を上げ、ガソリン税を上げ、税金を
上げてまで130億ドル出したのですね。しかし、残念ながら、それがどのように使われたか分からない。他国も
出しているからみんな一緒に使われたのだから、最後にイギリスには幾ら、サウジアラビアには幾ら、フランスには
幾ら渡したと説明をしてくれたわけです。それは日本もあまり関心を示さなかった。

 ということで、日本という国はお金を出すということにおいては、国連の最もいいお客さんなんですね。外国では、
no taxation without representation(代表無きところに課税無し)、これは民主主義の最も基本的な原則です。
アメリカがイギリスの植民地であった時に、アメリカに住んでいる人たちはロンドンに議員を送れないが税金だけは
払わされるということに怒って、アメリカ人がボストン・ティー・パーティを開いてのろしを上げてイギリスと戦った。
その時のスローガンというのが「代表無きところに課税無し」で、アメリカはそれに勝って独立したのです。だから、
税金は払うけれど代表はいらないというのは、外国から見ると非常に不思議なのです。

 日本は安保理に入っていないので、130億ドル出しただけで国連が湾岸紛争でいかにイラクに対応するかという
議論に入れて貰えないわけですからね。それを見たヨーロッパの大使が「日本の納税者は気の毒だ。日本も安保理
に入らなくてはいけないんじゃないかな」と。絶好のチャンスだったと思うのですけれど、そういう世論があったのです。
日本に帰ってその話をすると、反応が非常に冷たい。「日本が意見を言うと何かいいことがありますか?」「安保理に
入って意見を言えるってことはそんなに重大なことですかねぇ。」「どうせアメリカの提灯を持たされちゃうでしょう。」
「意見を言ったらば責任を持たされちゃうでしょう。」「日本では昔から言うでしょう。『お金で済むことは安いことなの
ですよ』」と財界の方が言われるのを聞いて、なんて日本は欧米と常識が違うかと思ったことがあります。

 と言うことで、やはりお金を出すと言うことが、日本が世界の平和に貢献する日本に出来る手近なことなのですね。
日本はタブーを捨てるべきだと思います。難民を入れるだとか、平和のためには命も捨てるだとかね。お米も500〜
600%の関税をかけようってわけですからね。外国は関税というものを20〜50%と考えている。500%、600%の関
なんていうのは輸入禁止ということですから、GATTウルグアイ・ラウンドの枠に入れない話なのですけれど。だから、
お米についても考え直さなければいけない。
 それから、日本の教育を「暗記の教育」から「ものを考える教育」に直さなければいけない。日本という国は、
20歳までは暗記力が強い者が勝ち、40歳までは働く者が勝ち、60歳まで―誰が重役になるかという時―は
人柄がいい者、即ち包容力があり皆が付いていく者が勝ち。私がフランスのゴーン氏を見ていても、日産を立て
直したけれど人柄が良さそうでもないと思いますが、やっぱりああいう人が重役になって会社をリードするからこそ、
会社が勝つと思いますけれど、やはり日本の教育を変えるということが重要。
 しかし、タブーを破るというのは時間が掛かる。今私がこんなことを言っても、実現するには10年、20年掛かりますよ。
今の若い方は自分で考えて発言しますけれど、そういう方が日本を担うためにはあと20年掛かる。ということになると、
それまでの間はやはりお金を出す、援助を増やすということですね。援助を増やすというよりも、少なくとも減額しない。
日本はこれからだんだんと経済が苦しくなってくると減額の話が出てくると思いますが、減額しないっていうのが第一。
第二に援助の質を高めるということ。円借款から補償協力にお金を移していく。円借款と言っても返って来ないお金が
あるのだから、援助に切り替えたらいいだろう。

 それから、人道援助を増やす。同じ技術協力でも日本は井戸を掘るとかいうのは割合得意なのですが、人道援助がねぇ……。
「国境無き医師団」みたいなものは断然栄えますねぇ、立派だと思いますよ。お医者さんが病院と契約を結んで、「来い」と
言われたらすぐにとんでいける形になっていること事態が羨ましい。日本の援助の10%以上はアフリカに行くのですけれど、
アフリカで人道援助に働いてくれる人がいない。ということで、アフリカに人を出してくれと頼んだ時に、この頃は少しは出して
くれるようになりましたが、十数年前には手を挙げてくれたのはみんな宗教団体だったですね。創価学会・立正佼成会・曹洞宗・
統一教というところは出してくれたのですけれど、そうでないNGOは「どういう注射が必要ですか?」とか「都市に住まわせて
くれるのですか?田舎へ行かなくちゃいけないのですか?」とか、いろいろ条件を付けてくる。
 上手だと思うのは、アフリカの田舎の国のイギリス大使がハンドクルーザー(四輪駆動の自動車)の助手席に乗って、オレンジと
パンをたくさん積んで村を回る。それで、男の人にはパンを1個、女の人にはオレンジを1個を手渡すのですよ。大使というのは
オフィスに座っていると思われますが、正直なところ小国の大使がその国の政治情勢を日本に報告して貰っても、外務省では
課長クラスが読むくらいで、あまり読まれません。本当に田舎を回って、現地の人と抱き合ってお土産をおいてくるというような
ことをやっていただいたらいいと思うのです。     ご静聴ありがとうございました。


廣瀬コメット:

 アメリカでは、医療援助というのは不可欠で、病院の四分の一くらいはフィリピンから人を入れているのですよ。医療援助ということは、そういうことから出てきたのではないかと思うのですがね. 日本ではフィリピン・バングラディッシュ・インド・韓国から看護士を入れるということは医療機関としては抵抗があるのはしょうがないことであります。日本の介護は外国人の介護者を入れなければ足りないわけですから、どうしてもそうなるわけです。結局仕事としてはきれいな仕事じゃないし、下の始末をしたりお風呂に入れたりは日本人の労働者よりもいいのじゃないかと最初は計画していたわけです。日本が不景気になり、日本として歓迎していないわけではないけれど、そういう人が減っていることが問題ではないかと私は思うわけです。

 要するに、アメリカでは年間3万人が移民できるのですが、日本では3000人しかできなくて。ロビイストが頑張ったので3万人が移民として入ってきて、看護婦になっていくことが多いわけです。日本の場合は日本の経済情勢が悪くないので、どうしても行きたがらないということが、一つの問題だと思いますね。そういう反面もあって、日本の教育はアメリカとは違い個人の能力を発揮させるというような教育をしていない。もう一つ問題なのは、医者として申し上げたいのですが、アメリカでは大学を卒業してから医者になるのですが、日本の場合は2年間科学的なことだけを学び、倫理も礼儀も経済も知らないで医者になるので、いろいろな問題が起こるわけですね。
 病院の経営は非常に悪く、大体90パーセントが赤字、私立病院では40パーセントが赤字なのですね。報告が、今度会計の規則が変わりまして、いわゆる年金や退職金を加えて計算すると、日本の病院は全部赤字になる。アメリカではMBAを取ってから医者でも経営に参加するが、日本の医者は経済理論を全然知らないで経営してどんぶり勘定でやっている。

 日本企業が優秀だということで、アメリカの病院会は見学に来たのですが、びっくりして帰ってしまったですね。日本の医療制度も良いのではないかと、クリントン前大統領夫人のヒラリーさんが医療改革する時も日本の病院を見にきたのですが、患者がずらりと並んで待っていて、非常に状態が悪いというので、帰ってしまいました。結局ハワイは良かったので取り入れようとしたが国家的な統制が強く反対されてできなかったですね。そういう経過もありまして、医療の方でも日本は変わっている。要するに、日本の医療はドイツからの直輸入で、新しい考え方をしていないということが問題なのです。

 医療部隊は、波多野先生が仰いますように、何もしないで帰ってきてしまったのですね。結局前線に出して貰えないし、入ってきてもどうにもならない。日本人は宗教を理解しないのでベールを被った女性の前での態度がなっていない。ということで、行っても役に立たないというように捉えているわけです。逆の面もあるのですね。
 日本的な考え方は非常に変わっている。130億ドルお金を出しても、実際アメリカは古い兵器を使ったものだからお金が全部余ってしまったわけですね。そのお金は全部ドロンしたが、それに対して日本は抗議しない。お金を出さないとアメリカはマイナスになると思うのですが、そういうことに対して日本人は関心ない。お金さえ出せばいいんじゃないかという考えを持っている。

 もう一つ問題なのは、平和部隊の問題です。アメリカは強いところへ政府も援助をしているけれども、日本は平和部隊として我々が尽くすことに対して政府の援助が全然ない。だから、お金は出して人間を出してないわけですね。人間を出しても危険なところへは行かないし、波多野先生が仰ったように仕事も中へ飛び込んではしないわけですね。
 むしろ日本は、これからはお金を出すよりもそういうところへ援助をして、医療も基地へ持っていくと。アメリカでは基地にどんどん人を送りこんでいるけれど、日本政府は全然そういう考え方を持っていないから、お金さえ出せば他の人は満足してくれるだろうと。お金を出せば選挙にも強いけれど、これからやっていくには考え方を変えなければいけないだろうということです。

 日本医療制度、例えば三割負担をするというのはけしからん話でありまして、日本はすでに一割負担をしているのです。そういう金を出しながら三割掛けるということは四割でしょう。保険金を出しながら半分自分で出さなければならないという国は、世界中どこにもないのですよ。完全に失政ですね、そう言うことではダメだと。その場限りの政策をしている日本政府はおかしいのであって、これはやっぱり変えなければいけない。
 だから、日本の考え方は、日本的であり過ぎる。病院の経営も変えて行かなければいけないし、経営できない人が経営をしているということが間違っている。いろんな意味で日本はこれから改良していかなければいけない。


教育とメディアの役割が重要
  
波多野大使との事前インタビュー☆ 2002年10月25日

大脇:先生、今日はお忙しいところをありがとうございます。先生がいろいろなところでお書きになったものを5〜6年前から注目していたのです。この度桧田 いく子さんが取材して、先生の座談会記事画雑誌「コンサルタンツ10月号」に載っていましたね。先生の発言にはいつも感銘しています。

波多野:ご苦労様でしたね。あれは取り留めもない雑談が……。

大脇:うまく纏められていました。最後が尻切れトンボだからということで、回り回って私に書いてくれと。巻末に書いたのですが、ご覧いただけましたか?
 私は大学は早稲田大学電気工学科だったですけれど、その後大学関係の仕事をすることが多くて、70年代から80年代にかけては、当時は東京教育大学から筑波大学へ移る頃で、筑波大学は日本の国際化ということで頑張っていましたし、私は学界の国際化ということで事務局長をやりまして、全国の何千人という先生方の国際交流のお世話をしました。筑波大学の先生方とも一緒にやりまして、東大だけでなく筑波大学が出来たことによって日本の国際化という面では面白い試みが全国で行われるようになって来ました。80年代の半ば頃からアメリカに行ったり、バハマ・ブラジル・パラグアイなどの中南米で国際協力のNGO活動を手伝ったりしていたものですから、一昨年日本に帰って来たのですが当時の先生方は大部亡くなられていました。
今後、日本では若い青年たちがどんどん国際社会へ出掛けていって貢献できるようなシステム作りがすごく大事じゃないかと痛感しています。明石先生も同じような発言をNHKの討論番組でされていました。国際経験がある人は同じようなことを考えているのだなあ思いました。「日本の青年が日本の国内で腐るのじゃなくて、どうしたら世界の荒野に勇気を持って出掛けて国際的に貢献できるような流れを作るか」に関心を持っています。

波多野:最も重要なことであるが、大学側の努力も足りないし、生徒も関心も持たない。最も関心を持たないのがメディアです。メディアは国際問題や国際化って言うけれど、情けない話ですけれど国際問題の話をすると視聴率が落ちるんですよ。ユーゴスラビアとかパレスチナとかバハマとか言おうものなら、途端に視聴率がガタンと落ちます。要するに島国なのですよ。
日本人の80%が外国人と接触しないで死んでいくわけですよ。「英語なんか習ったって日本では使う必要がないのだから」ということを、大学の先生なんかが堂々と言ったりするわけですからね。僕がある審議会で「英語を学ぶよう努力しよう」と言ったら、文部省の人が「英語を勉強するよりもまず日本語を勉強してもらわなくては困る。若い人は日本が不正確だ」と言うので、僕の発言を全然サポート得られず、情けないですよ。
文化交流のための交流基金というものがありますが、僕は交流基金の運営審議会のメンバーで、そこは偉い先生ばかりが居てね、ある東大教授が「日本語を普及する努力をしよう」というから「それよりも日本人が英語を学ぶようにもうちょっと努力しましょうよ。象徴的な額でもいいから100万円でも良いから、文化交流基金が日本で英語を勉強するための奨学金を出せ」って言ったら、「イギリスやアメリカ政府がやれば良いことで、日本がそんなことをやるべきではない」と一笑に付されてしまいましたよ。

大脇:私どものそういう意見を時々耳にします。「英語、英語」と言うと、「日本語もしっかりしていないのに何だ。無国籍の人間になる」とかよく言われます。やはり日本人が英語力を付けるウルトラCは、国際ボランティアというような形で海外に出して現場に行って、自分で必要を感じてやらないと駄目だと思うのですが。

波多野:日本から留学生を出すNGOをいくつかやっているのですけれど、正直なところお金が集まらなくて困っています。小沢一郎さんが自民党の幹事長だった時に作ったジョン万次郎会は、外務省の先輩がもう年だから辞めるというので僕が理事長をやっているのです。お金集めをやってくれている三菱商事の槙原さんが相談にきて、「お金が集まらないからもう止めよう」と。そしたら、小沢さんが「自分なりに運営するからくれ」というのですね。そうなると政治のお金ですから、我々はタッチしないほうが良いということになってしまう。日本人を海外に出すための資金が集まらないので、交流基金とか青年海外協力隊とかに活動を活発化してもらうということなのでしょうね。

大脇:自民党に国家戦略本部というのが出来ていますね。本部長は小泉総裁で、事務総長は保岡さんという法務大臣をされた方です。先日保岡さんに「こういう方法はどうですか」と提言したら「それはいい考えだ」と感動してくださったんですが。これからのODAは、物の援助から人を送り教育に投資するようにしたら良いと思います。日本の国は徴兵制もないのですから、大学生を中心に2年間くらいは国際社会なり国内なりに奉仕する期間を設けて、それを通過した人は外務省なり文部科学省なりで優遇する資格制度にすれば良いのじゃないかと。元朝日新聞の記者も「資格制度にしたら優秀な人が競って海外へ行くようになる」と言っていました。ODAの使い方も、物の援助から人の援助・教育援助へシフトすれば、日本人の語学力の問題も解決できるし、顔の見える外交もできる。4年間学生を国内で遊ばせるよりは、海外へ出てこそ日本の国のことを考えますし、苦労をしたことで世界の実情も分かるし、一石何鳥かで日本を再建する一つのウルトラCではないかと思います。

波多野:それは正攻法ですよ! 保岡さんはそういうことに理解を持っておられる。青年海外協力隊の応募者数は、最近募集人員の5〜6倍と増えているから、青年海外協力隊を3倍位に増員すると良い。そういうことで、どんどん海外に出すようにすれば、ODAのお金でカウントできるわけですよ。

大脇:そうです、ODAで出したら良いですよね。立教大学の先生が「大学は今でもたいへんなのに、2年間も空けられては授業料が入らなくて倒産する」と言われたから、「ODAでカバーすればいいのです」と言ったら「それなら分かる」と納得されました。何かしようとしても足元を見ているとなかなか前向きに進めませんが、青年をやる気にさせる夢のあるビッグプロジェクトを作ってもらいたいと思うのですが。

波多野:あまり抵抗は無いのじゃないですか? それを誰かが推進すればですね。

大脇:そうです、誰も損する人はいないですから。私は南米で見ましたけれど、外国から援助した機械が野ざらしになってしまっているのですよ。メンテナンスの技術者が育っていないんです。それと、その国があまりに貧しいものだから、日本から寄付した医療器具なんかを闇で売り飛ばして自分の生活の足しにしてしまうのですよ。その国の技術や教育程度を上げることがいちばん大切なのです。その国に入って行って、お互いに人間交流をもっと深めるべきです。語学の勉強をする機会にもなりますし。韓国の青年が日本に来て言うのです、「日本の青年は、青年時代を無駄に過ごしているように思われる。何か知らないけど芯がない」と。彼らは無駄なようだけれど2年間軍隊に行って、自分の残りの人生を考えるそうです。日常的なものを超えて大所高所に立って、自分の人生設計とか国の中における自分の役割とかを考えるらしいのですよ。今のような受験戦争で自分のことばかり考えている中では、そんなことを考える余裕も機会もないということだと思うのです。海外で何か日本のことを説明する時には国語力が問われますので、必要に迫られてもっと勉強しようという形になるのではないかと思うのです。
糸川先生が1982年に遺言のように提言されていますけれど、「世界全体を見るとトップの天才的な優秀な人と無知な大衆とに分かれていて、中間のミドルマネジメントの人口が少ない。日本人の半分の5000万人くらいが海外へ出掛けていくように、海外組と国内組に分けて小学校から準備したら良い」と。糸川先生はいつも人を食ったようなことをおっしゃっていました。募集してから泥縄式に6カ月間研修をするのではなく、小学校からどこの国で何をして役立つかを決めて勉強し、技術を身につけて、大学になったら行くというように十分な準備をすればもっと効果があがると思います。
今日本は自らビジョンがあってお金を出すのではなくて、外国から言われてしょうことなしに出していますね。後手に回ると感動されないので、国民的意思として世界のために貢献するとかいう国家目標を立てて国民的意思を示していく必要があると思います。戦前まで持っていた日本人のプライドが全部否定されて、今日本人は民族的な自信と誇りを失っています。今こそ、世界に貢献し具体的に行動する中で、後孫に自信と誇りをもって伝える価値観を我々が作っていこうというパイオニア精神が必要とされていのではないでしょうか?
現在の日本の状況を見ていると、戦前の右傾化「教育勅語に帰れ」とかだけで終わってしまって、これでは若い人はついて来ないですね。未来に向けて行動する中で今までの日本の良き伝統も生かされてくると思うのです。何か日本を元気にする動きが必要だなと思っていたものですから、旗を振る人、国士はどの人かなと思っているのですけれど、そのお一人として先生のお考えは卓越していると日頃感銘していました。

波多野:なかなか浸透しないし……。問題は教育とメディアだと思うんですね。僕が理事をしている学習院には国際交流基金というものがあって、これは30億円くらい基金を持っているのですよ。先日も理事会で、その基金をどう使っているか、常務理事から説明がありました。学習院がやっている国際交流とは、皇太子様が留学されたオックスフォード大学マートンカレッジとか昔から学習院と関係が深いイートンカレッジとかばかり言っている。僕が「先進国との交流に半分、途上国との交流に半分お金を使ってください。学生をどんどん授業の一部として中国やインドの田舎へ連れて行って、世界の実情を見せたら良いじゃないですか」と言うと、常務理事が「我々は大事な子供を両親から預かっているんですよ、途上国へ行って病気になったり事故にあったりしたら、誰が責任を取るのですか」とのお答えでした。そんなことを言ったら、国際交流にはならないですよね。
 明後日は日本テレビで桂文珍が司会する「ウェークアップ!」(土曜8時)という、視聴率が12%もある番組に出演するのですが、国際問題の話を2〜3分話しているとプロジューサーが「まとめてください」という札を見せるのですよ。樋口恵子氏は介護保険について、それから植草一秀氏は株について話しますが、視聴率が落ちないから3〜4分も話させてくれるのです。明後日は朝鮮問題があるから視聴率は落ちないかもしれないけど、イラクの話をすると視聴率ががたんと落ちるんです。視聴率を調査している会社が分刻みの視聴率の表を持ってくるんですが、それを発言者と合わせてみますと国際問題の時にがたんと下がっている。久米宏の「ニュースステーション」では国際問題は扱わないですよ。

大脇:ということは、国際問題に反応するような民間のネットワークを作ったら良いです。そして視聴率に影響するようにしたら。

波多野:何百万人という人を集めなくちゃいけないのですよ。だって、視聴率の1%とは100万人ですから。みんな視聴率の競争をしていて、桂文珍の「ウェークアップ!」という番組は圧倒的に視聴率が高いから、スポンサーをしたいという会社が行列を作って待っているのです。高視聴率と言っても、例えば10%と言ったら1000万人が付けているけれど、実際に聴いているのはその半分の500万人だと僕は思っているのですけれどね。
 朝日新聞が700万部と言われていますが、実際に国際面を読んでいる人は三分の一も居ないだろう。とういことで、メディアが国際面にまったく関心がない。
大脇:ということは、マスコミは大衆に迎合するだけで、大衆をリードする社会の木鐸としての使命を行っていないということですね。

波多野:「コンサルタンツ10月号」の対談では言わなかったですけど、昔中日新聞の社長と会長をやって亡くなった加藤さんという人がいて、僕が「中日新聞は国際面を6面とか7面に載せているけれど、もっと大きく扱ってくださいよ」と言ったのです。すると、「あなたはニューヨークタイムズとかワシントンポストとかを読んで言ったのでしょう。ニューヨークタイムズは110万部、ワシントンポストは60万部しか売っていないから、国際問題に関心ある人をターゲットにして新聞を作れますよ。しかし、読売新聞が1100万部、朝日新聞が700万部を売ろうと思ったら、国際問題なんかを書いていたら買ってもらえないのですよ。」とおっしゃいました。この頃は社会部が強くなってしまって、一面トップの記事は事件ですよね。日本の新聞の質はなかなか良いですが、一面は相当無茶苦茶な扱いで、大衆紙、スポーツ新聞並みですよね。だから、僕は教育とメディアが重要だと思って、学習院で教えてメディアにもたまに出ているのです。

大脇:そう言ったことを糺す方法として、「世界が日本をどう見ているか」という点から、外国から来ているプレスマンをはじめ外国人たちの意見が定期的に流れるような体制を作られてはどうかと思うのですが?。日本人の見方と違うことが分かります。その役割を果たしているのは竹村健一氏ですね。毎月、毎週「世界のメディアではこう言っているのに、日本ではこうだ」と、先生が仰る「世界の常識と日本の非常識」、すなわちギャップがあるということを彼は言っていますよね。
 さて、教育問題についてですが、先生は教育問題のどの辺にポイントを置かれていますか? 教育の理念の問題とか、教育の国際化の問題とか、教育の社会性、現実性の問題とかいろいろとありますが。

波多野:この頃は国際問題流行で国際関係科とかずいぶん出来ていますが、僕は教育の基本がポイントだと思いますね。日本の教育は基本的なところが未だに暗記なのですよ。やはり、暗記するだけではなく、議論し自分の考えを堂々と発言することですよ。

大脇:問題解決型、分かります。

波多野:知人の大学の先生でテレビタレントなのですが、受講者が600人いるので教室に入れなくて窓際に立ってノートをとっている学生がいると言う。「採点するのは大変でしょう?」と言うと、「3つの答えが出る問題を作って、3つ書いたら優、2つ書いたら良、1つだったら可を付ける」と言うのですよ。「期待していない第4の答えや第5の答えを書いたら駄目だ」と言うのですよ。そんな教育をやっていては、ノーベル賞など取れないですよ。自分なりの意見を言えないようでは国際社会では相手にされないと思います。

大脇:マスコミも報道するけれど、その新聞社の意見、国民に対する責任ある提言が少ないですね。
波多野:社説だって長々と経緯を書いて、「委員会を作って早急に検討しろ」というのが結論でね。ニューヨークタイムスとワシントンポストは全然違う意見を出しているように、我が社の意見はこうという意見が頻繁に出なくちゃいけないのですよ。だから、日本人は主張を持たない国民になってしまって、日本の意見というのは世界から無視されてしまう。

大脇:そうですね。特に先生がお書きになられたように、国連の場でもすぐに返事が出ない。みんなの意見を取り纏めなければならないから、即断的にパッパッと出来ませんから。

波多野:一番良いのは、外国へ行って自ら体験するのが一番いいですよ。

大脇:そうなのです。留学生で行かせるのもいいのですが、ボランティアで行ってそこの場のニードに応える努力をしたら良いと、思うのです。

波多野:行けばわかるのです、行けばね。最初はいかに恥ずかしい思いをするかです。

大脇:恥をかかないと駄目です。僕がコロムビア大学へ行った時、大蔵省のトップクラスの人が留学していて6カ月経ってもヒアリングができないのです。彼らはプライドがあるから馬鹿になれないし、「教えてくれ」とは言えないですよね。日本のエリート官僚がアメリカへ留学しても、アメリカに負けたという劣等感を持つだけで、これでは自信と誇りを持てないですよ。コミュニケーションが出来ないから。それを解決するためには、若いうちに恥も外聞も捨てて飛び込んで行って、現地の人と苦労をすると言葉も覚えるのじゃないかと思うのです。

波多野:外国へ行けば、いかに日本が島国かということが分かりますよね。こんな島国ないもの。

大脇:先生にもう一つお伺いしたいのは。先日イスラエル参事官の話を聞く機会があったのですが、日本人はイスラエルの考え方をきちんと聞くべきですね。と言うのは、テロへの対応の仕方ですが、各国が足並みを乱して人情的に妥協することは、イスラエルのような国を危なくするわけです。アメリカが中心になって世界が毅然とした態度を取ることは賛成ですが、同時に日本が独自の立場から世界で奉仕活動を展開することが大事だと思います。アメリカが軍事力を用いる父親的な役割であるならば、日本は軍事的な問題の制限もあるわけですから、母親的な役割でもってアメリカとタイアップしながら愛と奉仕ですべてを包み込むことです。日本は外交として、ODAをバックにしてこのようにして平和戦略を展開すれば、解決の道があるのではないかと感じているのですが、どうでしょうか? 国際テロは軍事力だけでは解決できないですね。

波多野:日本は軍事力がないだけでなく、人間が危険なことは出来ないと言うのが問題ですね。

大脇:今それが問題ですね。世界の現状を理解して、軍事力の必要性も分かり、自分たちも命がけで世界に奉仕するという方向性にならないといけないと、僕は思います。

波多野:今度ロシアで119人死にましたね。あれが日本で起こったら内閣総辞職物ですが、ロシアでは85%支持があり、世界中で非難する人がいない。日本では10人死んだらもう大変ですよね。

大脇:あの時に大量に死んだのは、ガスが原因だったみたいですね。自分たちの安全のために危険度を低くするために、ガスを使ったわけでしょう? 日本では機動隊が突入する時は、自分たちがもう少し危険を被ってでもやると思うのですがね。

波多野:そうじゃないのではないですかねえ。日本の警察や自衛隊ほど死なないところはないですよ。国連平和部隊では、日本人は1人も怪我していないのだから。国連では「危ないことしない」と、世界からせせら笑われているのですよ。

大脇:危ないところへ行かないのですか?

波多野:危ないことしないのですよ。この間、アフガニスタンに関連してインド洋に軍艦を3〜4隻派遣した時、「なんとかして全員を無事に連れ帰りたいものです」というのが司令官の出発時の挨拶ですよ。

大脇:それはおかしいですね、みんなで危険を分かち合う時に……。

波多野:1993年にカンボジアで選挙監視活動中に2人の日本人、国連ボランティアの中田厚仁という民間人と警察官が亡くなったけれど、自衛隊の人は事件が起こると、基地に籠もり外へ出ないから怪我をしようがない。その時、日本から国連に来て、あまりにも2人亡くなったと言うので、事務総長が「平和維持部隊では1000名以上死んでいますからね」と言われたことがありました。日本は自衛隊をこれだけ出して一人も怪我をしないのは、ピストルしか持たされないので危険なことをしないのです。
 アンゴラの首都ルアンダで動乱が起こった時に、隣のザイールへ自衛隊を500人派遣したのですね。その時機関銃を持たすかどうか国会でもめて、結局500人に対して機関銃を1丁持たせたのです。日本はそういう国ですからね。
福田赳夫総理大臣が「人命は地球より重い」と言った時に、外国人はこれは翻訳の間違いだと思ったわけですよ。日本の総理大臣がそんなことを言うわけがない、「地球は人命より重い」と言ったに相違ないと。ところが、日本ではそれは当たり前になっている。日本は変わった国と思われている。

大脇:もう一つ批判を受けたのは、あの時日本が軍資金を付けて彼らを中東に送ったようなものだと。日本は結局テロの支援をしているという批判がありました。

波多野:その時担当の課長が使い古しの100ドル札で100万ドル持って行ったですよ。日本とは変わった国だと外国人には思われていますね。でもしょうがないですね、日本はそういう国だから。
 今回の北朝鮮の件だって5名の拉致被害者のことで騒いでいますが、日本は北朝鮮の核やミサイルの脅威を感じていないのかと外国からは疑問に思われています。フランシスコ講和条約締結50周年記念の祭典の後行われた討論会の時に、宮沢氏は「北朝鮮が核爆弾とミサイルを持つことは怖くないのですか?」とシュルツ元国務長官から聞かれているのですよ。それに宮沢氏は答えていないのですよ。もしその時に宮沢さんか世論が答えたとしたら、「怖いと思っていません」ということなのでしょうね、これは世界の七不思議ですよ。

大脇:今日、中野寛成氏(民主党幹事長)が来て話すのですが、自民党が駄目ならば野党がもう少ししっかりしたことを言えば良いのだが、足を引っ張るだけで本当の意味の野党が育っていないのですよ。

波多野:30歳代で政治家になろうという人は、自民党がほとんど小選挙区に貼り付いていますから民主党から出るしかないのですよ。そこを菅直人氏が抑えているから、延びるはずがないのですよ。古賀さんとか麻生さんなどの4人を通り越して、ワンジェネレーション若返らないと駄目なのじゃないですかね。

大脇:日本の国に対して責任ある発言をすれば良いのだけれど、結局無責任な発言をするから付いて行けない。
安全保障に対しても一貫した意見を言っていれば、信頼されるのだけれど。そういう意味で一貫性があるのは
共産党なものですから、今共産党の人気は凄いでしょう。驚くなかれ共産党は地方議会の野党第一党でしょう。という
ことは裾野があるということです。そういう基盤の上に国会へも出していますし、経済的にも赤旗などで潤沢ですから
汚職という声も聞こえないので伸びています。女性を先頭に立てソフト戦術でやっているけれど、依然としてマルクス
レーニン主義、テロ・暴力思想を捨てないでやっているのですから。嘘がどこまで通じるのか、日本人はムードに弱い
から動いています。危険だと思うのですけれど。

波多野:この前の世論調査によれば、公明党と競合していて両方とも支持率は3〜4%ですが、公明党の方が
パーセンテージは高いですけれど。北朝鮮の拉致問題によって、共産党と社民党は1%くらいずつ落ちているのですよ。
自民党はいざとなったら、秘書献金で共産党を絞ろう思っているのでしょうね。

大脇:あれは何のために増えているかと、自民党に対する批判票ですよ。自民党がしっかりすれば少なくなるのだけれど、
自民党が体たらくであればあるほど、社民党から共産党へ行くようになったわけです。
  貴重な時間を頂き有難うございました。それでは、12月4日、ご発題よろしく緒長居します。     文責:大脇準一郎、 


第11回未来構想戦略フォーラムのご案内

拝啓、紅葉の季節、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。
日本の未来を憂うる有志の熱意から始まった本会も、早、一年を迎えようとしています。
子孫に胸を張って継承させることが出来るような国家ビジョンをどう構築出来るか? 
本会では教育・政治・経営・医療等、さまざまな角度から検討していますが、今回は“世界の中における
日本の役割”を切り口に、討議すること相成りました。
発題は、国連等、国際経験の豊富な波多野先生に、「世界の常識・日本の非常識」をテーマにお願いし、
コメントを二人の先生から頂いた後、討議はブレーンストーミング形式で行います。
最初はJICA40年、国際協力の現場を歩んで来られた田口先生に国際協力面でどのようなギャップが
あるのか、解決策はあるのか?、次に日本医療経営の国際競争力をつけるべく、本年医療経営学会を
創設された広瀬博士に医の領域から同趣旨のご提言をいただきます。
討議を実り豊かなものとするため、ご出席の有無に関わりませず、皆様からのご提言を
お送りくだされば幸いです。                    敬具
             平成14年 11月吉日
  
未来構想戦略フォーラム世話人

 東京経済大学教授、日本ビジネスインテリジェンス協会会長   中川十郎
  NNH In t’l 取締役社長、(社)国際市民の会理事長      加藤幸彦
  東京エグゼクティブ・サーチ、(社)日本人材紹介事業協会会長 江島優


            記
日時; 平成14年12月4日(水) 午後5時〜8時

発題:「世界の常識・日本の非常識」 波多野 敬雄 氏 
            フォリン・プレスセンター理事長

 略歴:
   1932年生れ、外務省入省、プリンストン大学留学、英国国家戦略研究所研究員、在米公使、
ジュネーブ国際機関全権特命大使、国連大使、国連安保議長、’94年から現職

コメントA:「国際協力の立場からの提言」田口 定則 氏 
前,JICA海外青年協力隊進路相談室カウンセラー
1934年中国生れ、東京大学教育学部卒、1973年JICA訓練所長、ラオス、サモア所長、海外移住課長、
エチオピア・プロジェクト指導、人事調査役、海外青年協力隊担当課長、九州所長、九州国際センター設立、
中華人民共和国所長、沖縄国際センター所長、東京国際研修センター所長、ケニアの大学設置リーダー、
横浜国大学院国際社会研究科、常勤講師、2002年9月JICA退職

コメントB:「医療経営の立場からの提言」 広瀬 輝夫 博士
秀明大学医療経営学科主任教授、日本医療経営学会会長
1926年、東京生れ、千葉大医卒、中山外科で癌研究、シカゴ・フィラデルフィア
研究、心臓バイパス手術を開発、無血人工心肺発明、ニューヨーク医科大学臨床外
科教授、著書:『代替医療のすすめ』『生活習慣病の先端医療』『皆保険を守る医療
改革を』『ジャパニーズ・ドクター』「米国医療の行方」『エイズはなぜ克服できないか?』他30数冊

場所:人類エネルギー研究所 会議室
〒102-0093 千代田区平河町2-16-9, 彰国社ビル B1
   Tel:03-3262-3311,Fax:03-3262-5094 http://eneken.hoops.livedoor.com/
   有楽町線、半蔵門線、南北線永田町駅下車、4番出口から最高裁方向、手前ビル

会費:3000円(軽食付)、25名程度、全員討議参加型、

主催:未来構想戦略フォーラム

連絡先:国際企業文化研究所、所長, 大脇準一郎
      
* 未来構想戦略フォーラムは、単に学ぶだけでなく、共に日本の未来ビジョンを構築し、実現への
シナリオを策定。元気な日本の創建を目指す、頭脳集団です。  本会は、知的貢献を始めとして
ボランティア精神で運営され、将来、N.P.O法人を目指  しています。    

アンケートに答えて             2002,124日記          

「世界の常識と日本の非常識」の例

(1)    外交

     自国の大切な国民が外国に不当に拉致されている事が明らかであるにも拘わら
      ず、断固たる処置も取らず、放置する。

     自国の利益を主張せず、不当な外国の要求を受け入れて自国の経済事情が悪いに
      も拘わらず経済援助を行なう。

     外国からの内政干渉に屈して自国の国難に殉じた人々の顕彰を国家として行な
      わない。

(2)    安全保障

     国家非常事態における法律が全く無い。(有事法制が制定されていない)

     国連に加盟し、外国と同盟関係にありながら、集団的自衛権を行使しない。 

(3)    教育

      自分の国の歴史を正しく教えず、愛する事(愛国心)も教えない。従って国民
       が自分の国に誇りを持つように育てられていない。

      自分の国が悪い事をしたので、外国に謝るべきだと教え、わざわざ外国の宣伝
       施設に修学旅行で行き若者に外国に都合の良いような教育を行なう。

    要するに、「諸国民の公正と信義に期待して我等の生存を保持しようと決意した、」
   の前言や軍隊の保持、交戦件の否認を謳った憲法と自国の文化、伝統を教育しない教育
   基本法を改正し、国際法に違反する東京裁判の呪縛から一日も早く脱却する事が世界の
  常識に合致する事と信じます。

今日本が最も力を入れるべき国際協力、国際貢献策

(1)    人的貢献

      発展途上国に対する教育、医療及び技術支援

      特に地球の温暖化及び砂漠化防止についての技術支援

(2)    軍事協力

    各種平和維持活動に対する自衛隊による協力、支援

    マラッカ海峡付近における海賊による被害防止のための各国海軍との協力に
   よ
る同海域のパトロール

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

U、宮川@日本建設機械化協会です

 1、「世界の常識と日本の非常識」の国際比較データーで特に顕著な例をな何例で
     もお知らせください。

アメリカは麻薬やエネルギーの国内消費(=浪費)を減らす事に殆ど関心がないが、
武器弾薬の製造・消費拡大には大変な関心があるし、そのために国内報道関係を政府の
支配下に置いている。
大半の国民は分かっているがしょうがないと思っている。
アメリカはこれを世界の常識として世界各国に押しつけようとしている。日本
(この場合、誰が日本か?)は、これを常識として受け入れようとしているのだろうか?

アメリカとアラブ”過激派”との関係をどのように見るのが、世界の常識、なのか、人に
よって全く異なるし、日本国内でも多様な意見が有るだろうし。世界の常識に対し媚び
へつらうよりも、日本の常識の寄って立つ根拠を明確にする、ことが大事。

2、日本が今も最も力を入れるべき国際協力・国際貢献策と思われるものを順に挙
   げてください。

アメリカに対し毅然たる態度を取れば、世界から喝采を浴びることは間違いないだろうが、
そのかわり何かと嫌がらせをやられるだろう。それなりの国民的合意、というか国民意識の
下でやらなきゃ、国内でゴタゴタが拡大するだろうし。

.11事件の直後、アメリカが ”ビンラーディンが犯人だ” と言ったときに、国際調査団
(リットン調査団の現代版)を提案すれば大向こうを唸らせる事が出来たが、惜しいことを
したものです。

ばらまきODAよりも、白人国家の横暴に水を差し、世界平和を声高に叫べば世界の支持は
大となろう。

そのためには、哲学がなければならぬ。 隣近所の声で教科書の書き換えをしたり、神社詣で
の日を変更したりでは駄目。
小泉首相が韓国へ行った時、神社詣での件で「迷惑を掛けた」、
との謝罪に対し、韓国人は、「謝るぐらいなら最初から行かなきゃ良い」、と言ってた。
 やっていることの内容、どうのこうのよりも、哲学に基づいた毅然たる態度が受けるのである。

簡略では有りますが。以上

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

V、加藤幸彦

  アンケートにお答え致します。ご主旨も広義に解釈させて頂く事で、遅ればせながら提案
させて頂く次第であります。

1.命題は勿論ボランテイアのレベルではなく、『国家レベルでの』国際貢献でありましょうから、
国際貢献を論ずる前に国家乃至は国民についての認識、自覚が必要と考えました。

また、『世界が(世界第二の経済大国としての)日本に対して何を期待しているのかを知った上で』、
『国益に沿って』考えるべきでありましょう。国家レベルで、従って税金を使用して行う以上、
国益を考えて行動しなければならないからであります。

従いまして国際貢献を行う為には、『早急に国の経済の立て直しを』計らなければなりませんし、
世界もそれを期待していると思います。

2.国家レベルでの国際貢献を考える為には、国家についての認識を明確にすべきであります。
そして、『民主主義国家では、国家=国民である』、という当然の事を、特に政治家やお役人には、
再認識して頂く必要があります。
拉致問題をきっかけにして、『国民の生命、財産を守る国の責任』が
認識されるようになった事は大変結構な事でありますが、これは『我々国民自身』が同胞の生命、
財産を守る責任に他なりません。今まで拉致問題について国が冷淡だったと政府を非難する方もいますが、
我が国では、国=国民でありますから、それは『我々国民自身の反省』でなければなりません。

最近、義務教育で愛国心を教える計画があると紙上で知りましたが、『国(即ち、我々国民自身)が
国民の生命、財産を守るという姿勢が無くては、真の愛国心など育つわけがありません』

3.技術的な支援を含め、我が国が国際的な貢献を行う為には、充実した国力、特に広義の経済力を
常にトップレベルに維持する事が不可欠であります。従って『我が国経済の立て直しは国際貢献から考えても急務』であります。

余談にわたりますが、『我が国経済の立て直しにおける最緊急事は、証券市場の活性化』であり、
その為の最も効果的な方法は『1400兆円と言われる個人の金融資産の証券市場への誘致』であります。
10%の140兆円が新たに証券市場に参入すれば(東京、大阪、名古屋、マザーズ、ジャスダックを含む
全市場の1日の売買高が1兆円に満たない事を考えれば)50%から倍増する事を意味し、株価が上昇する事は
確実であり、株価が上昇すれば企業の所有する資産が増加し、好決算が可能になり、その企業の株価が上昇する
というプラスの循環をもたらし、個人の資産形成にも貢献し、国全体が豊かになります。

証券市場が活性化すれば、『頼りにならぬ銀行に頼る間接金融から、銀行に頼らぬ直接金融への移行を円滑に』
するでしょう。

所で、経済立て直しの方策として、デフレからインフレへの誘導を主張する議論が盛んですが、『上がってよい
のは株価だけ』であります。種々の統計によれば、物価の上昇よりも給料の上昇の方が依然として高いようで
ありますが、これは今の我が国にとって大変な救いであります。

今、『物価の上昇、特に不動産価格の上昇を指向する声が盛んですが、これはもっての他』であります。
我が国の物価、特に生活必需品の物価は、世界で最も高いと言われます。少なくとも米国よも高い事は間違い
ありません。この『物価高の主な原因は、世界一高い地価と円安にある』事は間違えのない事実であります。

地価が上がっても我々庶民にとっては、不動産の固定資産税が高くなるだけで何のメリットもありません。
また、原材料、エネルギーの殆どを輸入に頼る我が国にとって、円高は原価引き下げの好機であります。

従って、『地価の下落と円高を活用して原価を引き下げ、真の国際競争力を向上し、少ない量の輸出をし、
内需従って輸入の量を増加する事により、他の国々の経済に協力する事こそ、我が国の国益に沿い、世界が
我が国に求める、真の国際協力』ではないかと考える次第であります。

4.『税金を使用する限りは(海外青年協力隊等も含め)広義での国益への貢献が必須の条件に』なりますが、
国民(個人)が豊かになれば、NPOとして個人が技術支援、経済支援の為に海外に出る事も容易になりましょう。

5.なお、もう一つの国際協力分野は、『近い将来に迫る世界的な食料不足に備えての、バイオ技術を含む、
食料生産技術の開発』でありますが、紙面の都合で、またの機会に譲りたいと思います。

                                              NNH Int.(株)取締役社長 加藤幸彦 

  ☆  ☆      ☆   ☆   ☆  ☆     

W、武田健二 Date:Tue, 3 Dec 2002 14:07:52

大脇様、アンケート回答遅れまして、申し訳ありません。
色々思い付く点ありますが、いざ採り上げようと思うと、案外自分の偏狭な認識ではない
かとも逡巡してしまいます。やはり、自身が体験した事実をしっかり見据えることが大切と思いました。

2月に帰国して以来、自社の事業回復や日本の経済再生という課題に取り組んで来ましたが、
その課程で最も痛感したのが日本の官僚システムの問題です。

若くて優秀な官僚の方と大いに議論していますが、何か基本的におかしい。使命感もあり、頑張って、
規制緩和や産業再生の仕組みをどんどん提案しています。しかし、その成否を評価され、
責任をとるというメカニズムが無いのです。それが一番恐ろしい。政治不在と謂われる所以です。
この辺が日本が特殊でないかと。
そんな折、薦められて話題の書「犬と鬼」を手に取りました。
まだ、数十ページしか読んでいないのですが、正に私の不安を裏付けるような内容が強烈に書かれていました。

例を上げれば、自然破壊に驀進する土建国日本

・ダム:アメリカでは、1990以降環境破壊から建設中止は勿論、全米で70を越す大規模ダムを壊し、
撤去しているのに、日本は、すでに
2800を越すのにさらに500も作ろうとしている。・護岸工事
アメリカでは、海岸の浸食が激化することが分かり、
80年代から中止、ある集は40年以内に既設の
護岸設備の撤去をめいじているのに、日本では
60%以上の海岸をコンクリートとテトラポッドで覆い、
更に増やそうとしている。

・杉植林:自然林を伐採し杉を植林することの誤りは、中国でも96年に激的な方向転換を行ったのに、
日本では止まらない。
以上の例は、単純な環境保護の問題だけではない。当初掲げた政策目標の農業や
林業保護育成などから見ても効果がないどころか逆効果を生み、農村が公共事業という麻薬で却って農業
や林業が衰退して行くという結果を目の当たりにしても止まらないという恐ろしさである。独裁全体主義国
でも、政策目標を強引に進めるが、効果なしと分かれば転換する。日本は誰も止められない。この誰にも
制御できない官僚システムがあらゆる面で日本を恐ろしいスピードで蝕んでいるのではと感じます。
民主主義の国ですから、我々一人一人が何らかの形で働き掛けられるようにして行かないとと思います。
   武田健二(日立製作所・参与)

  ☆  ☆      ☆   ☆   ☆  ☆     

X、高橋成知 Date:Tue, 26 Nov 2002 20:19:51 Subject: Re:アンケートのご依頼
大脇様 アンケートにお答えします。

1、日本の大学の工学教育の遅れ

 わが国は技術立国と言われながら、エンジニアの定義がない。世界的なエンジニア不足の中、

エンジニアの国際流動性を高めるEMF(エンジニアリング・モビリティ・フォーラム)が創設されようとしている。

 そのためには、大学でのエンジニアリング教育プログラムを「一定の基準」と「手順」を評価する
仕組みが必要である。米国では1934年から、第3者機関としてABETが教育プログラムの認定
制度を設け、その資格のあるPE(プロフェッショナル・エンジニア)が30万人いる。

 PEの流動性から、米国や英国8カ国はWA(ワシントンアコード)協定を結び、それぞれの国の
認定プログラムを相互承認するようになり、NAFTA、FENNI、中南米、東南アジアもこの承認を受けつつある。

 日本はようやく3年前に日本版ABET,JABEEを立ち上げたが、今年現在、3つの大学が認定
を受けたに過ぎない。WA調印団体になる資格も危うい雰囲気です。学会を通じて、大学の先生に認定
を受けるよう吉川弘之東大教授がJABEEの会長で頑張っていますが、大学の取り組みは亀の歩みの
ようで歯がゆい状態です。このままでは日本には国際的に通用するエンジニアがいないことになり、
技術立国の看板は下ろさなければならなくなるでしょう。

 ちなみに、取り組みに熱心な日本の分野は農業と土木です、なぜならば、日本には仕事が無く、
海外に行ってエンジニアの資格が無いと入札に入れてもらえなくなるからです。一番必要としている
情報通信関係は大学の先生が忙し過ぎて、人手不足もあり、余り熱心ではありません。

 2、今後の国際貢献について

一番やらなくてはいけないのは、難民の受け入れでしょう。いまでも不法入国扱いとは、
時代錯誤も甚だしい。お金さえ出せば、嫌なこと、汚い仕事は他の人にお任せする国が尊敬
されるのでしょうか?

 何も他の国に言って、自衛隊を派遣するのだけが国際貢献ではありません。難民を受け入れ
られない国に国際化、グローバル化の言葉は空しい。
 外国人を受け入れ、最低限の生活と
教育、仕事を提供するのは日本のファンを創ることにつながるわけです。将来、その人達が
国に戻ったりして、指導者になる可能性だってある。それが子孫の時代の絆となり、世界の
平和と安定に寄与すると思います。

 政官業癒着の利権まみれのODAで途上国にダム1つ作るより、わが国に人を受け入れられる
仕組み、ソフトウエアを入れるほうが、予算も減らせる。

 生産労働人口も減ってきて、少子・高齢化の21世紀。ここは一大政策転換をして、外国人労働者、
留学生、難民など年間30万人受け入れられれば、日本経済も需要が増え、消費がのアップし税収も
上がります。また低賃金(といっても母国よりはよほど良い)の労働力と日本人知恵を融合させれば、

再び競争力のある日本企業がどんどん出てきます。

 そのためにもまず、難民を受け入れられる土壌を国民各層に作っていく必要があり、そのコンセンサス
作りが未来構想戦略フォーラムの役割ではないかと勝手に解釈しております。
   
    高橋 成知 株式会社 経済産業新報社 情報企画部本部長

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Y.From:菅野英機 Date: Tue, 26 Nov 2002 23:39:25 Subject:移民の受け入れについて

 移民の受け入れに、賛成いたします。年に70万人ぐらいづづ受け入れないと、労働人口
維持は難しいようです。いっぺんにはいかないでしようから、先ずはじめに、留学生が卒業
した後に、日本で就職して、就労ビザを貰いやすくし、出来るだけ多く、日本に残って働いて
貰えるようにしては、いかがでしょうか。

私が教えています上武大学にも毎年2学部で300人もの留学生が来ています。本年は、1500人を
超える留学生の希望者があります。留学生は、それなりにしっかりしており、
一般の移民よりも
はるかに優れた人たちです。この人材をもっと日本の発展のために活かすべきだと思います。

高橋成知 Date: 20021127 ()午前122Subject:移民の受け入れ

菅野さま  メールへの賛同ありがとうございます。

上武大学はすばらしい活動をされていますね。留学生が本土に戻り、国作りの先兵となって、
その国の発展に尽くすのは明治の日本の先駆者たちの例でも明らかです。
 是非、末永くその
活動を続けられることを願います。
  ありがとうございました。
                      高橋 成知

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Z、宮川@日本建設機械化協会です。Date:Wed, 27 Nov 2002 13:43 Subject: [e-mirai] 移民の受け入れについて

私は1990年頃から、下記制度の設立に拘わり、現在はその試験に関係しております。

制度名 外国人研修制度・技能実習制度 目 :開発途上国の人材育成協力

実施機関:財団法人 国際研修協力機構(法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通、協管)http://www.jitco.or.jp/

これは、菅野氏がおっしゃるような、移民制度でもないし留学制度でもありませんが、技術移転を
活かして比較的労働力の得難い地方の中小企業に労働力を補充しよう、いう制度毎年、3万人ぐら
が中国、東南アジア他から来日し最大3年間、在日しております。常時10万人ぐらいが、これで
研修就業していることになります。

私の知っている範囲では、受入企業、研修生共に好評で、病気、ホームシックなど特殊な場合を除き、
途中で帰国する例は、ほとんど有りません。給与も日本人に比べれば少ないですが、彼等にしてみれば、
3年間でかなりの金額が溜まり、滞在中にも家族へ送金している例も有ります。

しかし、普及効果を阻害している点としては、肝心の法務省の地方事務所の手続きが煩瑣で不親切で、
入国管理手続きの担当者は一回やっただけで嫌に成ってしまう、大手企業が非協力的で下請け企業で
この制度を使うと不利になるとか、外国人を使わないように指導される、などの問題が有ります。
つまり、国で作った制度で既に10年も経過しているにも拘わらず、国、基幹企業が無理解、非協力的なのです。

私の経験では、今後の地方企業の職種によっては、もう日本の若い人たちは決してやらない、けど
重要な職種があります。現行では未だ実施されていない職種では、森林管理、などです。日本の山林の
大半は人工林で、一度植林をしたら、人工的に維持管理をしていかないと自然崩壊につながります。

しかし、維持管理をしてゆけば、豊かな国家の財産となり、そのノウハウは他の国に取っても貴重な
財産と成りうるのです。

もっと、拡大して、緑化管理、などは地球管理技術として人類の財産、というよりも各国にとって必要
欠くべからざる技術に成るかもしれません。

そして、彼等は地域に密着して生活しているために、普通のODA以上に国際交流の実が挙がっています。
こういうのにODA資金を使えば、八方幸せに成ると思うんですがねぇ、、、

私の直接関係している人・機関には、以上の意見は随時 出していますが、現在の私の立場(協会)では、
それ以上に越境して発言することは出来ません。こういうのって、どこへ提案すれば良いのでしょうか? 
 以上   
宮川俊彦 社)日本建設機械振興協会、業務部長

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