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会議後のコメント

中野有:昨日ストックホルム、ウイーンのミッションを無事終え帰ってきました。

 ストックホルムの会議では基調講演の機会に恵まれ、思う存分原稿なしで話しました。日本の大使も参加してくださいました。ウイーンでは国連機関の先輩と会い、元気が出ました。

 実は、今年の9月から10ヶ月ですがワシントンのBrookingsに北東アジアのフェローとして勤務することになりました。 日本の枠は一人だけだったのですが選ばれ非常に喜んでおります。

 日本がアメリカを動かし北東アジアや世界の安定と発展に貢献する。 特に、北東アジアの問題にはアジア、日本の志をインプットすることが重要だと思っています。 素晴らしい研究会、そして報告書本当にありがとうごっざいます。

中川:見解感銘を受けました。今後ともどしどし意見をご開陳下さい。3月30日から4月7日までニューヨーク、シンシナチを訪問。米国市場の動向調査を兼ね、全米競合情報専門家会議に出席致します。4月の会合で結果ご報告致したいと存じます。ますますのご活躍をお祈り致します。

伊地知;是非、この様な活動を具体的な行政への提言に結び付け、予算を伴う実際の大きな運動に展開して行きたいものです。

[教育問題]
 部分個別的ではなく全体として、包括的な変革が必要である。20世紀に最盛を極めた西洋の物質偏重文化は、部分に分解して微視的に極めようとする傾向があった。

 これに対して21世紀に興隆する東洋の精神文化は、精神生命を基軸として一挙に全体最適を現出するものとなろう。

 日本のお家芸はやはり高度な製造業であり、従って大学における教育も科学技術の分野は今後も重要である。

 江崎玲於奈博士によると、一般では科学技術と一緒くたにされがちだが、英語ではScience & Technologyとして明確に分離されている。即ち科学は自然現象の発見、究明であり、長年月を掛けて地道な努力の積み重ねを経て頂点に達する。

 技術は、その結果を受けて産業界に製品として生み出して行くのだが、出発点は0からであり、科学とはまた異なる地道な努力が必要となる。

 ITバブルとして瞬間的に脚光を浴びた渋谷のビットバレー等は、Webベースのソフトウェアアプリケーションが多い。

 この様なレベルのソリューションは、しかしながら、インドや中国等でも容易に実現可能なものであり、そうなると日本の百分の一とも言われる人件費で製品を作られたのでは、

 日本が競争力のある製品展開を行うのはまず不可能である。

 これからは世界レベルで分業を行うのは当然のことであるので、インドや中国で出来ることは当然任せるべきである。日本は武力によらず21世紀の世界をリードする義務があると考えている。

 その為にも日本のお家芸である製造業の分野で、ナノテクノロジーや量子デバイス等科学技術の最先端の領域から、時間も人も掛けて研究開発を行い、世界に冠するコア技術を創出すべきと考える。

 大学の制度に関しては日本も米国を真似て大学院を前面に出す様になったが、実態的にはまだ名前を変えたレベルでしかない面もあるそうである。ただ、例えば東大の技術移転機関であるCASTI(Center for Advanced Science and Technology Incubation, Ltd.)では、最近では特許の登録が年間280に達するとのことである。僅か5年前は特許出願は無きに等しかったことを考えると、大きく変わりつつあることが伺える。

 これからの日本の産業の活性化には、機動力があり優れた理念、技術を持つベンチャー企業の輩出が不可欠だが、その為には、それを支える環境の整備も絶対に必要である。

 まず優れた技術を見抜き、それをビジネスとして成り立たせる目利きが必要だが、日本の場合、この様な重要なことを多くは畑違いの文系の人間が行っている。

 その為に技術はなおざりにされて、プレゼンテーションが旨いことを第一とする、分かり易い似通った対象に投資先が偏る傾向となってしまっている。国家レベルで目利きを育成、組織化する必要がある。

 その他、ベンチャー企業の法務、財務等のバックオフィス系をサポートする組織、マーケティング、営業をサポートする組織、そして、それら組織間の強力なネットワーク連携が必要である。

 また、失敗した者こそ本当の成功に至る可能性が高くなっていると考えるべきであり、失敗を許容する環境、文化の醸成も必要である。

 近年は大学院まで進学する者が多くなり、このままでは教育を受ける時間だけが長くなり、益々不要なものまで詰め込まれる危険性も懸念される。自然生えの大木こそ真に強く巨大となるものであり、それは過去の歴史上の偉人を見ても共通している。

 余りに人手を掛けるべきではない。個々の適性に従い、教えるというパラダイムから、自ら学ぶというパラダイムに適切に移行出来るスキームの整備も不可欠である。

[地域活性化ツールとしてのIT]

 ITコーディネータ立上げ時の基本的なコンセプトは、日米の経済活況の違いは、米国の経営者が経営をサイエンスとして実践しており、ITを経営そのものに高度に利活用していることにあるとして、日本の中堅・中小企業経営者の啓蒙、教育を行って競争力を高めることにあった。

 バイオテクノロジーも広義に捉えればITに包含されると考えられ、その意味ではITは21世紀の産業のあり方を根本から変革し基盤となる。但し、地域によって大きな違いがあり、農業を中心とする地方では、気象情報を配信するなどITが活用されることはあるが、半導体、ソフトウェア等の狭義のITそのものが基幹産業となることは難しい。

 20世紀型ビジネスは金が中心となっており、利益を第一義とする無機質な競争により、自然破壊や、極端な貧富の差の拡大等、大きな社会問題を引き起こし社会制度そのもののあり方に限界が生じている。

 誰も予想することさえなかったソ連の崩壊と同様、アメリカ及びアメリカ型資本主義の崩壊も間近に迫っていることもあり得る。21世紀型ビジネスは人が中心になることは間違いない。

 営利企業が当たり前とされた社会観が根底から変わって行く。20世紀型ビジネスでは、如何に大きな本社ビルを持っているか、如何に多くの支店を持ち、従業員を抱えているかが信用の証になっていたが、その為に非常に多くの無駄なコストを掛け、それがそのまま消費者の負担になっていた。

 21世紀型ビジネスでは、消費者主導で、消費者に利益を還元するビジネスモデルが主流となるだろう。

その他あらゆる分野で現代人は逆立ちをしていたことに気付くことになる。NPOというと赤字垂れ流しというイメージが人々の脳裏に焼き付いているが、本来は消費者を中心とするコミュニティーを組成して、消費者が真に必要とするものを供給するところに骨子がある。

 従って優れた経営によって高い利益を上げることが可能な筈であり、これをP−NPO(Profitable Non Profit Organization)、即ち、収益力のある公益性の高い、営利のみを目的としない非営利事業というコンセプトで表す。

 この意味において21世紀には、NPOと営利企業が逆転してNPOが主流となるであろう。

 シリコンバレーにおいて、地域を代表する企業のトップが個人の資格でNPOに参加し、地域の経済指標を定め、多数決ではなく本当に如何にあるべきかを考え、譲歩により地域を活性化させて来たが、これを改良、発展させることになろう。

 NPOが母体となって、NPOから収益力の高い営利企業を適宜生み出し、適切な評価を継続的に行うことによって、存在意義を失った営利企業は清算し、再度NPOから生み出す循環系を作り出すことが一つの解となるであろう。

 ITを活用することによってコミュニティーが活性化され、寧ろフェースツーフェースの会話、人との行き来が促進されることが成功例の特徴である。

 ITは人間性を排除するものでなく、人間らしさを高める助けをするものでなければならない。

 ビジネスにおいてもパソコンやネットワークを構築することが重要なのではない。

 ITの活用によってビジネスのやり方そのものを変革することが重要である。

 地域活性化の成功事例を見てもITにより情報共有が進み、

長年の商売のやり方そのものが根底から変えられている。何れの場合も結果として消費者、ユーザーを中心とした商売に変革されている。

[その他]

 あらゆる業界で変革が行われることになるが、保険業界の改革を自ら先頭に立って始めている者がいる。

 エキスパートアライアンスの中川博迪社長である。アリコジャパン副社長、アクサ生命社長を歴任した保険のプロ中のプロである。天下り先特殊法人のJAFに真っ向から勝負を挑み、保険業界の変革に身体を張って献身している。長く保険業界にいて、ある面において消費者を食い物にしてしまったという、懺悔の気持ちもある様で、同時に国民の多くの老後の不安を解消しようと懸命である。本社で社長講演会が開催される。何時も300人席が直ぐに満席になり立見が出る盛況ぶり。一見の価値あり。是非一度御聴講を!

大脇;「世界の為に生きよう!」

 昨年秋、日本の将来を愁うる各界・各研究機関の人々と「国家戦略研究合同連絡会議」をコーディネートさせていただきました。12月末には、参加者の1人、阿部先生は日本国家戦略研究会議を創設されました。

 本年1月、自然の流れで始まった当、フォーラムですが、3回目の先日の会合は最も感動的でした。

 "現代の坂本竜馬"世界を股に、世界平和戦略を展開中の中野有氏(元国連職員)が、本会に始めて参加され、次の約束のため当初「7時半まで」とおっしゃりながら、11時過ぎまで討議に残られたのは、本会にあふれる日本改革の情熱、"空気"が、日頃、N氏が探していたもの、胸襟を開いて語れる同志を見出されたからだと思います。 N氏がアフリカのでのNGO活動の体験を語ってくれましたが、小生も南米で活動した経験から見ても、まったく同感でした。NGO活動の醍醐味、自分のお金を出してまでなぜやるのか? それは、自分の些細な努力でも、「眼を輝かせて喜んでくれる人がいるから」です。人は自分か本当に役立ったら、お金は問題ではないのです。ITと同じくお金はそのための有効な手段の1つ、最も効果的なものの1つに過ぎません。

 今、日本の国内にはそうような感動と刺激がなくなっています。以下に紹介する、和歌山の一魚寒村の一世紀も昔の話が、われわれの涙の感動を呼ぶのは、自分が有り余ってやるのではなく、自らの貴重な食料を犠牲にしてまで尽くそうとするその"為に生きる心"愛"故です。心からの善意(ボランティア精神)が、時代を経て、日本国民の危機を救う結果となったことを歴史が証明してくれました。 このような話をマスコミは、どうして報道してくれないのでしょうか? 学校で教えないのでしょうか?

 明治の富国強兵、戦後の経済復興、これをリードした先人達の憂国心、同胞愛には頭が下がります。ところがこの戦後の経済復興の国家目標を達成した後、日本の上空に、"坂の上の雲"は忽然と消えてしまいました。 指導者達は、嘗ての先人のように国民に示す大義もなく、自らの保身に汲々としています。 国民も自分の生活を心配して臆病になっています。上も下もこのような自分のことを先に考える思考の中には、何の志もなく、お金が万能の神と信じて暮らす中に真の生きがい、幸福も有りません。

 日本の問題の本質は、日本だけに眼を向けるのではなく、世界の現状を自分の問題と感じる世界観の確立(自他一体の悟り)ではないでしょうか? そしてこの国の人的資産、物的富をどう世界の平和のために使うのか?平和のための国家戦略が求められています。

 糸川英夫先生は、20年も前に日本人、5000万人民族移動論を遺言されています。国際協力を金で済まそうとの風潮から、人が出て行くこと、それにも増してやむにやまれぬ心情、志を持って国際貢献することがもっと大切です。

 小生、15年ほど日本を空け、ここ5年間、南米、カリブ地域に出かけていましたが、諸般の事情から、昨年2月ブラジルから帰国以来、本格的に日本に足場を作ろうと頑張っています。それは自分1人が特攻隊員となって南国に骨を埋めることよりも、多くの日本人が世界に出かけ、世界に奉仕できる流れ、システムを作ることの方がより大義と痛感したからです。

 これは教育の問題であり、小生としては大学を改革することが、早道と思っていますが、先日、ご参加下さった市川先生のように経営改革からなのかもしれません。

 あるいは、コストの掛かりすぎる保険業界のトップの地位を投げ捨てて、良心的発露から保険革命を推進される中川社長のような経済革命が近道なのかもしれません。心理学の多胡先生の『日本創新』の本を読ませて戴いている途上ですが、先生の憂国のお気持ち、共感する所が多いです。

 四季の変化の妙味、桜の満開を井の頭で見ながら、このような立派な大義に生きる人々と1人また1人とお知り会いになれ、日本も捨てたものでは無いと痛感するこの頃です。皆様の一層のご健闘を祈念いたしております。

 4月3日   大脇 準一郎 拝