原子力政策への提言:2004.0817 第32回未来構想フォーラム

平成16年8月9日、港区商工会館にて、「この国を想うー日本は大丈夫か?」をメイン・テー
マに第32回未来構想フォーラムが開催されました。第一部「日本のエネルギー戦略を検討す
る─原子力発電に未来はあるかー」をテーマに原子力発電をめぐって白熱した議論を交えて
いた折、3時28分、美浜原発事故が発生し、11名死傷、内4名死亡との惨事が起こりました。
ついに日本では原子力発電では1人も死んでいないとの原子力発電に対する技術神話は脆くも
崩壊したかにも見えます。 議論を終え、当日ご参加いただいた諸先生、参加者の皆様のご
意見をお伺いし、本会としてご意見をまとめ、以下のような提言を致します。  各位の忌
憚の無い、ご批評・意見をお寄せください。

、今回の美浜原子力発電所事故は、原子力発電固有の技術の問題というよりは、火力発電
 と共通した技術の事故であると思われる。原子力技術の本質的な危険性というより、これ
 を管理する組織の倫理・文化、社会システムとしての問題がより本質的問題であると言え
 る。従って、原子力問題の安全性を向上させるためには、技術そのものを否定するのでは
 なく、これを管理する社会システムの再検討、情報の公開性・透明性を高め、ヒューマン
 ウエアーの改善策を講じることがより肝要である。重要なことは、事故の責任を追及する
 だけではなく、事故から学んでいくことである。

2、風力、地熱、太陽発電、バイオマス資源等、自然にやさしい再生可能エネルギーは、発
 電は最もクリーンであり、供給源が半永久的であるが、出力が微少、季節や日による変動が
 あり、コスト高である。大型コンピューターからパソコンの出現、ネットワーク技術の発展
 に見られるように、再生可能エネルギーのネットワーク化・安定供給技術の開発が将来の課
 題であろう。化石燃料の中でも石油・石炭は、コストが安く、貯蔵・運搬にも便利なため依
 然として主力を占めているが、環境負荷が大きい。比較的環境負荷の軽い天然ガスの需要が
 伸びつつあるが、今後の供給拡大には輸送インフラの整備が課題である。今後、燃料電池・
 メタン・ハイトレードの更なる実用化が注目される。原子力発電は、エネルギー密度の大き
 さ、安定性などに優れているが、受け容れ易さ(環境性・安全性)の不安がある。以上、各
 種エネルギーの長・短所を踏まえ、経済効率のみならず経済性・安全性・環境性とのバラン
 スの取れた真摯なエネルギー政策の立案を提言する。

 産業の発展・近代化の進展に伴い、エネルギー需要は急増している。発展途上国の人口爆
 発を考慮すれば、人類は、今後“省エネ”(エネルギー利用効率の改善)、“循環システ
 ム”というコンセプトがキーワードになってくる。今年は例年に無い暑い夏であったにも
 かかわらず、電力需要が限界点に達しなかったのは、省エネ技術開発の効果とも考えられ
 る。 また省エネは我々のライフスタイルの変換という側面も持つ。いまやエネルギー大
 量消費型の物質偏重文明から、省エネ型・循環型の精神主体の文明への大転換期にある。
 わが国は東西文明の融合から、新しい文明の創造の歴史的使命を省エネ技術・環境技術の
 開発とともに果たすべき時である。     以上

解説)

1)わが国は総発電総量の34.4%を原子力に寄っており、エネルギー基本計画において、原
 子力を基本電源と位置づけている。この基本計画に対して、強い疑念がフォーラムの一部
 参加者より提案された。第二次大戦中、戦争に勝つことだけを唯一の目標として開発され
 た原爆は、放射能発生等の他の付帯条件を一切無視して開発されたものである。 今後、
 平和のための安全な原子力開発の原点に戻っての基礎研究開発、多様なエネルギー資源の
 開発が望まれている。

2)70年代初頭、ローマクラブ世界会議で、「自然科学の行き過ぎ、社会科学の怠慢、宗教
 ・文化が死んでしまった!」と指摘がなされた。原子力発電もまた、「技術への過信・電
 力会社を始め、管理者の怠慢、各自の志の欠如」と言えよう。今回、原子力保安院・原子
 力安全機構・原子力委員会が、警告していたにもかかわらず、このような事故が発生し、
 何のための管理機構か疑問が呈されている。権威や事務方重視から現場重視の姿勢へ、、
 民営自由化等、抜本的改革が必要であろう。

3)今回事故を起した関西電力は過去5年間に11ヶ所の火力発電所で3659件にのぼる不正報告
 を行ったことを、本年6月29日、マスコミで暴露されたばかりである。今回の事故の原因は、
 元々10mmであった配管が1.4mmまで磨り減っていたためであると言われている。運転開始か
 ら27年余、一度も点検していなかったという杜撰さこそ問題であろう。戦後日本の唯一の
 誇りであった一流企業の名声も最近、次々と地に落ちている。企業倫理・モラルの確立へ
 向けて猛省を促したい!

第二部、「凛の国、日本へのメッセージ ─愛する孫達に伝えたい歴史の真実─」
 は、本年78歳を迎えられる前野徹氏の憂国の情に満ちたメッセージでした。

終戦当時、19歳、多くの同僚を戦争で亡くし、戦後日本を再建した同僚の大半が既に鬼門に
下っていった今日、前野氏は、若い世代へ向けて、渾身のメッセージを述べられた。
氏は、日本は戦後国家の態をなしていない。李鵬首相やリーカンユ首相等、アジアの友人の
言葉を引用されながら、亡国の危機に瀕する日本に警告を発せられた。

その要旨は、「国の領土も守れない、お詫び外交、米国追従の国の尊厳性を欠いた、主体性
の無い政権、自国の伝統文化の保持を忘れた自虐的教育、いずれも亡国の兆しである」との
氏の熱弁に対し、「ドイツは、ホロコーストのユダヤ人虐殺の非人道的行為に対しては謝罪
したが、国家として戦争に対して謝罪してはいない。非人道的行為と戦争の大義とは別もも
のとしている。日本は国家指導者(軍部)の過ちと国家とを同一に捉えている。また原爆に
対しても民間人の大量虐殺は米国の非人道的犯罪であることは明白で、戦後なぜ、国際法廷
に日本は提訴しなかったのかと世界からもいぶかしがられている。」との某外務官僚からの
コメントがあった。

GHQ占領下での日本が、如何に占領軍により巧妙に統治されたか、公開された機密資料を基に
戦後日本の出発の原点を探る本が話題となっている。「忘れるな!歴史の真実、骨抜き大国」
(桜井よしこ著)、桜井女史は、30項目に渡るGHQ内部機密項目に触れ、如何に、検閲制度が
批判の許されない巧妙なものであったかを暴露している。 ハンチントンの最近刊「分断さ
れるアメリカ」で問うているのも“ナショナル・アイデンティティ”の問題である。国の再
生にはその原点に返ることが基本であろう。

日本人の価値観・アイデンティティはどうなっているのか?日本のアジアとの共生を巡って
白熱した討議が続きました。この討議は次回33回の「教育改革のどう進めるか?」の議論に
受け継がれることでしょう。

本企画は将来、大学の講座テキストとして発行の企画案もありますが、当面、ブロードバン
ド最新技術を駆使して、公開していますので、PCでご覧ください。BB設定の方法は至って簡
単で、パスワードの無い民間放送型ですので、無償で世界どこからでも見ることが出来ます。

またビデオ/DVDでも視聴することが出来ます。E-miraiに登録(無料)されれば、定期的配信
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にご参加が不可能であったとしても、文明の利器、ITを使えば、時空を超えて、知識・知恵
のネットワーク化・収斂が可能です。

日本と世界の再生のための知的社会貢献の本会の趣意にご協賛賜れば光栄です。

平成16年8月27日
        未来構想戦略フォーラム  世話人代表 江島 優
                     共同代表  大脇準一郎
                     共同代表  新谷 文夫