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「知能オリンピックの提唱」

 石川 昭氏  (山学院国際政治経済大学院前大学院長、国際経営学専攻)

 司会:新谷文夫、オープンタイドジャパン社長()

 教育問題には私はものすごい怒りを感じている。いろいろな統計からも、一つの特定の大学だけがあまりにも独占形態なのですね。日本ではある特定の大学だけが人材やお金を取ってしまうと、日本の大学全体が衰退してしまう。IMPの評価で日本の大学は49カ国中の49位なんですよ。認知されているから非常に都合が悪い。学生をアメリカに送る場合推薦状を書くにしても、評価が下がっているから競争にならない。このままでは日本が潰れてしまうと申し上げておきます。それから、前後を見渡す人がいない。いないから駄目だとういのではなく、出来るだけそういう人を育てなければだめですよ。

 雑誌ユウシという機関誌がありまして、1960年代初めに私が編集長をやっていて、石原慎太郎氏に大いに参画していただいた雑誌です。巻頭言で「知能オリンピック構想」というものを掲載したことがあります。当時は米ソ対立の時代で、そんなことは夢物語、実現しないと感心が薄かったわけです。米ソが溶解してからユネスコ主導のシンポジウムの席上で「知能オリンピック構想」を諮りましたところ、今こそ実現しなければいけないという意見がすごくたくさん出まして、私は意を強くしました。

 人類滅亡論がたくさん出ていますが、日本滅亡論もありますよ。昨今の北朝鮮の問題を見ますと、昭和16年の状態ですね。日本は昭和16年に国際連盟を悠然と脱退しましたね。当時は日独伊の同盟がありましたが、今の北朝鮮は一国というようなことで、昨今のピョンヤンの放送を聞いていると殺気立った、キャスターが脅しの発言をしています。昭和16年当時感じたあの雰囲気が、北朝鮮にあるのですね。一方、当時のアメリカは日本が攻めてくるのは想像しなかった、コミニュケーションギャップがあって。だから、ワイキキでは真珠湾攻撃の飛行機を見まして、「何の演習だ?」と思ったわけですよ。私はそれが気にかかってしょうがないですよ。テポドンは82発、原爆は2発で数カ月以内に5発は可能だ。こういう状況で、今回は今までになく難しい。非常に厄介な問題で、端的に申しますと、遅かれ早かれ東京は攻撃目標になると菊川レポートで言っていましたね。日本はこの50年間防衛問題をなおざりにして、国家の体をなしていない。金だけを出してきた。イージス艦なんてのは大いに儲けさせていますね。強力な船ではありますが、役に立ちませんよ。

 人類の祭典ということでサマランチ会長はじめいろいろな方が三千年も積み上げてきた体力のオリンピックは、第一世代のオリンピックと私ははっきり定義します。オリンピック憲章が理念がしっかりしていたから三千年も続いてきた。要するに今の社会は情報を交換し話し合うしかないのです。話し合えなくなったら戦争しかないとなってしまうのですね。人間エネルギーは対立的になりやすいので、それを協調的にすることを考えなければいけない。日本の欠陥は情報の付加価値が全然伝わってないことです。私は年々質の悪い教育をしています。大学院クラスでも二流の下くらいの内容で話すとうちの大学ではついてこられません。ないから三流・四流レベルでお話をしないと。しかも、高等学校以下は時間厳守という徳育教育をやってないんですね。学生は堂々と遅れて入ってきて、しかも音をさせる。家庭の教育はなくなってしまったのですね。中国・韓国・欧米で教えても、私は少なくとも一度も体験しませんでしたね。日本の教育はそのような体たらくになっている。

 核兵器が米ソ間では協調して減らしましたが、それでも地球を5回全滅させても余りある核兵器を持っています。インド、パキスタン、イスラエル、中国は保有している。日本は例外的にもっていないので、相手の徳とか良心とか正義に信頼を置くしかない。しかし、残念ながらがそういうものは通用しないことは学習すれば分かる。もしイージス艦を買うならば、核を持たないと話ができません。そこまで事態は進展して、防衛構想をやっても間に合わないですね。

 一方では富は増しているけれど、貧富の差が大きくなっている。ITも持つもの持たないものの間にデジタルデバァイドが生れてくる。元凶は国家ですね。そこに民族が存在し宗教があり差別的な制度ができている。人間の悪徳が蓄積してきたわけですね。これをなんとかするためには、真剣勝負にしないでシュミレーションで済ませるというのが人間の最大の知恵だと思うのですね。一発の銃弾で第一次世界大戦も容易に起こってしまうんですね。やはり日本の危機管理や高齢化問題・医療問題・環境問題を解決していくためには、それらの助けになるような人間の知恵や知識を総動員してそれらをうまく話し合える場や組織を作る必要がある。研究会を繰り返し開いても、終わったときに何が残るか、どんな幸福感をもたらしたのか、どんな前進があったのかということになってしまうのです。研究会の成果は、何を実施し得るか、どういうインパクトを与えるのか、多くの人間を動かし得るかだと思うのです。

 紀元前8〜9世紀に、神に捧げる行事としてオールド・オリンピックがスタートしています。一時中断されましたが三千年続いている、第一世代のオリンピックです。第二世代は、いわゆる「技能オリンピック」というものが1954年にスペインでスタートしています。パラリンピックは体力が中心ですね、ハンディキャップがある人にも機会を与えようということです。そこで、第一世代・第二世代とあるならばどうしても、体力・能力・知力の精神力なども入るのですが「知力」ですね。オリンピック憲章にも知力・精神力と書いてあります。私はサマランチ会長に、知力を入れたオリンピックを併設していく必要があるのではないかと提案をしました。それで、私は憲章の試案を示しています。

 問題はどのように知能オリンピックを導入していくかです。第一には今世界に学会・会合・ワークショップなどが何十万回を開催されていますが、その中の会員が何十万人といるような主要な学会が共同して垣根を越えて開催する。第二にはテーマを重要な共通する会議をしなければいけない。第三にこれはゲームですから、それぞれに対するジャッジをどうするか難しい問題もあります。

 第5世代コンピュータプロジェクトもその発足当時からずっと今日まで参加している。ついに、新世代コンピュータ機構は解散することになりました。いったい付加価値は何か? 80年当時世界に冠たるコンピュータを作ると言って始めたが、これが実際二十数年後はどうか。結局指導者は自分の領域の資金集め、利得に走りすぎたのではないか? 厳しい批判はほとんど聞いていませんね。新聞はいいことだけを書き立てた。これでは世界に尊敬される第5世代プロジェクトにはなりませんよ。少なくとも3千億円を投じるプロジェクトですよ。国民が監視しなければだめですよ。

 宇宙開発研究所は1兆8億円を使い失敗した回数、十数回、やっと最近成功しました。国民の税金をこれだけ使っているのに、野放しにして国民に十分な情報開示がない。日本という国は、アメリカもそうですが監査がない。経営管理なき国家なんですよ私は5年や10年のスパンで重要な国家の基盤になるプロジェクトを見るべきでないと申し上げたい。

 私は今世界に10の緊急に解決しなければならない領域があると思います。10の問題について、ソリューションを世界中から分け隔てなく募集して、評価委員会が評価してその採用をサミットミーティングで解決策を練る。今度の国際会議には1100人を超えるレフリーですよ。日本は組織の規模が小さいので、これでは形式的な評価になってしまう。これをもっと徹底してやっていく必要がある。そのための評価委員会ですね。

 今ぞくぞく局地的なオリンピックができているんですね。例えば、数学のオリンピックが毎年開催されている。これは高校生が対象。それから、シアターオリンピックス、すなわち芸術祭。これは第2回を静岡県でやって大成功を収めている。世界博覧会はすごい歴史があるのですね。1900年のパリの万博は有名ですが、エッフェル塔を造るときは有名な作家や技術者や学者や大反対したが、政府は果敢に作り上げたという経緯がある。ハノーバー万博では各国が展示の中で研究を進めるための600以上のプロジェクトがあるのです。そこに知能オリンピックの土壌が存在している。

 どういう種類のゲームをやるかといいますと、大きく分けると2つある。互いに戦い合うゲームと個人技を争いあって評価するエクゼビションゲームですね。特にシュミレーションゲーム。ロボットコンテストも日本はよくやっていますね。ワールドカップをロボットとやるとか、チェスをやるとか。頻度は3〜6年に1回くらいがいいだろう。評価の期間は当然長くなる。

 ビジネスプランは2000年に立ち上げ委員会を作りいろいろと議論をしました。私の頭の中にあるのは、規模はいくらでも大きくもできるし小さくもできるのです。考えてみてください。テーマは環境問題1つのソリューションでもいいじゃないですか。その1つについて全世界から皆さんのソリューションを集める。

 是非皆さんのお力添えを得て、小さい規模でもいいから実現したいと思います。プラスになることは間違いないし、来年にしようという余裕はないかもしれない。ですから、真剣にお考えいただきたいと思います。