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教育とメディアの役割が重要

波多野大使との事前インタビュー
大脇:先生、今日はお忙しいところをありがとうございます。先生がいろいろなところでお書きになったものを5〜6年前から注目していたのです。この度肥田邦子さんが取材して、先生の対談が雑誌「コンサルタンツ10月号」に載っていましたね。先生の発言にはいつも感銘しているのですが。

波多野:ご苦労様でしたね。あれは取り留めもない雑談が……。

大脇:うまく纏められていました。最後が尻切れトンボだからということで、回り回って私に書いてくれと。僕が巻末に書いたのですよ。ご覧になりましたか?

 私は大学は早稲田大学電気工学科だったですけれど、その後大学関係の仕事をすることが多くて、70年代から80年代にかけては、当時は東京教育大学から筑波大学へ移る頃で、筑波大学は日本の国際化ということで頑張っていましたし、私は学界の国際化ということで事務局長をやりまして、全国の何千人という先生方の国際交流のお世話をしたりしました。筑波大学の先生方とも一緒にやりまして、東大だけでなく筑波大学が出来たことによって日本の国際化という面では面白い試みが全国で行われるようになってきたんですけれど。ぼくは80年代の半ば頃からアメリカに行ったり、バハマ・ブラジル・パラグアイなどの中南米で国際協力のNGO活動を手伝ったりしていたものですから、一昨年日本に帰って来たのですが当時の先生方は大部亡くなられていました。今日本では若い青年たちがどんどん国際社会へ出掛けていって貢献できるようなシステム作りがすごく大事じゃないかと。明石先生も同じような発言をNHKの討論番組でされていたので、国際経験がある人は同じようなことを考えるんだなあと。日本の青年が日本の国内で腐るのじゃなくて、どうしたら世界の広野に勇気を持って出掛けて国際的に貢献できるような流れを作るかに関心を持っています。

波多野:最も重要なことであるが、大学側の努力も足りないし、生徒も関心も持たない。最も関心を持たないのがメディアで、メディアは国際問題や国際化っていうけれど、情けない話ですけれど国際問題の話をすると視聴率が落ちるんですよ。ユーゴスラビアとかパレスチナとかバハマとか言おうものなら、途端に視聴率がたんと落ちます。要するに島国なのですよ。

日本人の80%が外国人と接触しないで死んでいくわけですよ。「英語なんか習ったって日本では使う必要がないのだから」ということを、大学の先生なんかが堂々と言ったりするわけですからね。僕がある審議会で「英語を学ぶよう努力しよう」と言ったら、文部省の人が「英語を勉強するよりもまず日本語を勉強してもらわなくては困る。若い人は日本が不正確だ」と言うので、僕の発言を全然サポート得られず、情けないですよ。

文化交流のための交流基金というものがありますが、僕は交流基金の運営審議会のメンバーで、そこは偉い先生ばかりがいてね、小川正三郎さんという東大教授が「日本語を普及する努力をしよう」というから「それよりも日本人が英語を学ぶようにもうちょっと努力しましょうよ。象徴的な額でもいいから100万円でもいいから、文化交流基金が日本で英語を勉強するための奨学金を出せ」って言ったら、「イギリスやアメリカ政府がやればいいことで、日本がそんなことをやるべきではない」と一笑に付されてしまいましたよ。

大脇:そうですか。僕らもそういう傾向の意見を時々聞きます。「英語、英語」と言うと、「日本語もしっかりしていないのに何だ。無国籍の人間になる」とかよく言われますけど。やっぱり日本人が英語力を付けるには、一番のウルトラCは国際ボランティアというような形で海外に出して現場に行って、自分で必要を感じてやらないと駄目だと思うんですね。

波多野:日本から留学生を出すNGOをいくつかやっているのですけれど、正直なところお金が集まらなくてね。小沢一郎さんが自民党の幹事長だった時に作ったジョン万次郎会は、外務省の僕の先輩で元駐米大使の松永さんがもう年だから辞めるというので僕が理事長をやっているのです。お金集めをやってくれている三菱商事の牧原さんが相談にきて、「お金が集まらないからもう止めよう」って。そしたら、小沢さんが「自分なりに運営するからくれ」というのですね。そうなると政治のお金ですからね、我々はタッチしないほうがいいということになってしまう。日本人を海外に出すための資金が集まらないので、交流基金とか青年海外協力隊とかああいうところに活動を活発化してもらうということなのでしょうね。

大脇:自民党に国家戦略本部というのができていますね。本部長は総理大臣で、事務総長は保岡さんという法務大臣をされた方ですよ。保岡さんにこの前会合があった時に私が「こういう方法はどうですか」と提言したら「それはいい考えだ」と感動してくださったんですが。今のODAは、物の援助から人を送り教育に投資するようにしたらいいんですね。日本の国は徴兵制もないのですから、大学生を中心に2年間くらいは国際社会なり国内なりに奉仕する期間を設けて、それを通過した人は外務省なり先生なりに優遇する資格制度にすればいいのじゃないかと。元朝日新聞の記者も「資格制度にしたら優秀な人が競って海外へ行くようになる」と言っていました。ODAの使い方も、物の援助から人の援助・教育援助へシフトしてやれば、日本人の語学力の問題も解決できるし、顔の見える外交もできる。4年間も学生を国内で遊ばせるよりは、海外へ出てこそ日本の国を考えますし、苦労をしたことで世界の実情も分かるし、一石何鳥かで日本を再建する一つのウルトラCでは無いかと思います。

波多野:それは正攻法ですよ! 保岡さんはそういうことに理解を持っておられる。青年海外協力隊の応募者数は、最近募集人員の5〜6倍と増えているから、青年海外協力隊を3倍位に増員すると良い。そういうことで、どんどん海外に出すようにすれば、ODAのお金でカウントできるわけですよ。

大脇:そうです、ODAで出したらいいのですよね。立教大学の先生が僕の勉強会に来ておられて、それを言ったら「大学は今でもたいへんなのに、2年間も空けられては授業料が入らなくて倒産する」と言われたから、「ODAでカバーすればいいのです」と言ったら「それだったら分かる」と納得されました。何かしようとしても自分のことを考えると前向きに進めないのだけれど、青年が「よし、やろう」と言う夢のあるような大きなプログラムを作ってもらいたいと思うのですけどね。

波多野:あまり抵抗は無いのじゃないですか? それを誰かが推進すればですね。

大脇:そうです、誰も損する人はいないですから。

 私は南米で見ましたけれど、外国から援助した機械が野ざらしになってしまっているのですよ。メンテナンスの技術者が育っていないんです。それと、その国があまりに貧しいものだから、日本から寄付した医療器具なんかを闇で売り飛ばして自分の生活の足しにしてしまうのですよ。そういうことで、その国の技術や教育程度を上げることがいちばん大切なのです。だから、その国に入って行って、お互いに人間交流をしていくべきです。語学の勉強をする機会にもなりますし。

 韓国の人が日本に来て言うのですよ、「日本の青年は、青年時代を無駄に過ごしているように思われる。何か知らないけど芯がない」と。彼らは無駄なようだけれど2年間軍隊に行って、自分の残りの人生を考えるらしいのですよ。日常的なものを超えて大所高所に立って、自分の人生設計とか国の中における自分の役割とかを考えるらしいのですよ。今のような受験戦争で自分のことばかり考えている中では、そんなことを考える余裕も機会もないということだと思うのですね。海外で何か日本のことを説明する時には国語力が問われますので、必要に迫られてもっと勉強しようという形になるのではないかと思うのです。

糸川先生が1982年に遺言のように提言されていますけれど、「世界全体を見るとトップの天才的な優秀な人と無知な大衆とに分かれていて、中間のミドルマネジメントの人口が少ない。日本人の半分の5000万人くらいが海外へ出掛けていくように、海外組と国内組に分けて小学校から準備したらいい」と。あの先生は人を食ったようなことをいつも仰っていたけれど。募集してから6カ月間研修をするのではなく、小学校からどこの国で何をして役立つかを決めて勉強して技術を身につけて、大学になったらぱっと行ったら本当に喜ばれます。

今日本は自らビジョンがあってお金を出すのではなくて、外国から言われてしょうがなく出していますね。後手に回ると感動されないので、国民的意思として世界のために貢献するという国家目標を立てて尽くしていく必要がありますね。戦前まで持っていた日本人のプライドが全部否定されて、今日本人は民族的な自信と誇りを失っていますね。今こそ、世界に貢献し具体的に行動する中で、後孫に自信と誇りをもって伝える価値観を我々が作っていこうというパイオニア精神が必要とされています。 現在の日本の状況を見ていると、戦前の右傾化「教育勅語に帰れ」とかだけで終わってしまって、これでは若い人はついてこないですね。未来に向けて行動する中で今までの日本のいいものも生かされてくると思うのですよ。そうのような形で何か日本を元気にする動きが必要だなと思っていたものですから、旗を振る人、国士はどの人かなと思っているのですけれど、そのお一人として先生のお考えは卓越していると感銘していたのですよ。

波多野:えー、なかなか浸透しないし……。問題は教育とメディアだと思うんですね。僕が理事をしている学習院には国際交流基金というものがあって、これは30億円くらい基金を持っているのですよ。先日も理事会で、その基金をどう使っているか、野村さんという常務理事から説明がありました。学習院がやっている国際交流とは、皇太子様が留学されたオックスフォード大学マートンカレッジとか昔から学習院と関係が深いイートンカレッジとかばかり言っている。僕が「先進国との交流に半分、途上国との交流に半分お金を使ってください。学生をどんどん授業の一部として中国やインドの田舎へ連れて行って、世界の実情を見せたらいいじゃないですか」と言うと、常務理事が「我々は大事な子供を両親から預かっているんですよ、途上国へ行って病気になったり事故にあったりしたら、誰が責任を取るのですか」と言うのですよ。そんなことを言ったら、国際交流にはならないですよね。

 明後日は日本テレビで桂文珍が司会する「ウェークアップ!」(土曜8時)という、視聴率が12%もある番組に出演するのですが、国際問題の話を2〜3分話しているとプロジューサーが「まとめてください」という札を見せるのですよ。樋口恵子氏は介護保険について、それから植草一秀氏は株について話しますが、視聴率が落ちないから3〜4分も話させてくれるのです。明後日は朝鮮問題があるから視聴率は落ちないかもしれないけど、イラクの話をすると視聴率ががたんと落ちるんです。視聴率を調査している会社が分刻みの視聴率の表を持ってくるんですが、それを発言者と合わせてみますと国際問題の時にがたんと下がっている。久米宏の「ニュースステーション」では国際問題は扱わないですよ。

大脇:ということは、国際問題にパッと反応するような民間のネットワークを作ったらいいです。そして視聴率に影響するようにしたら。

波多野:何百万人という人を集めなくちゃいけないのですよ。だって、視聴率の1%とは100万人ですから。みんな視聴率の競争をしていて、桂文珍の「ウェークアップ!」という番組は圧倒的に視聴率が高いから、スポンサーをしたいという会社が行列を作って待っているのです。高視聴率と言っても、例えば10%と言ったら1000万人が付けているけれど、実際に聴いているのはその半分の500万人だと僕は思っているのですけれどね。

 朝日新聞が700万部と言われていますが、実際に国際面を読んでいる人は三分の一もいないだろう。とういことで、メディアが国際面にまったく関心がない。

大脇:ということは、マスコミは大衆に迎合するだけで、大衆をリードする社会の木鐸としての使命を行っていないということですよね。

波多野:あの「コンサルタンツ10月号」の対談では言わなかったですけど、昔中日新聞の社長と会長をやって亡くなった加藤さんという人がいて、僕が「中日新聞は国際面を6面とか7面に載せているけれど、もっと大きく扱ってくださいよ」と言ったのです。すると、「あなたはニューヨークタイムズとかワシントンポストとかを読んでいたのでしょう。ニューヨークタイムズは110万部、ワシントンポストは60万部しか売っていないから、国際問題に関心ある人をターゲットにして新聞を作れますよ。」しかし、読売新聞が1100万部、朝日新聞が700万部を売ろうと思ったら、国際問題なんかを書いていたら買ってもらえないのですよ。この頃は社会部が強くなってしまって、一面トップの記事は事件ですよね。日本の新聞の質はなかなかいいのですが、一面は相当無茶苦茶な扱いで、大衆紙、スポーツ新聞並みですよね。

 だから、僕は教育とメディアが重要だと思って、学習院で教えてメディアにもたまに出ているのですがね。

大脇:そう言ったことを糺す方法として、「世界が日本をどう見ているか」という点から、外国から来ているプレスマンをはじめ外国人たちの意見が定期的に流れるような体制を作られてはどうでかと思うのですが。そうしたら日本人の見方と違うことが分かります。一番その役割を果たしているのは竹村健一氏ですね。毎月、毎週「世界のメディアではこういっているのに、日本ではこうだ」と、先生が仰る「世界の常識と日本の非常識」、すなわちギャップがあるということを彼は言っていますよね。

 さて、教育問題についてですが、先生は教育問題のどのへんにポイントをおかれていますか? 教育の理念の問題とか、教育の国際化の問題とか、教育の社会性、現実性の問題とかいろいろとありますよね。

波多野:この頃は国際問題流行で国際関係科とかずいぶん出来ていますが、僕は教育の基本がポイントだと思いますね。日本の教育は基本的なところが未だに暗記なのですよ。やっぱり、暗記するだけではなく、議論し自分の考えを堂々と発言することですよ。

大脇:問題解決型ね、分かります。

波多野:知人の大学の先生でテレビタレントなのですが、受講者が600人いるので教室に入れなくて窓際に立ってノートをとっている学生がいると言う。「採点するのはたいへんでしょう?」と言うと、「3つの答えが出る問題を作って、3つ書いたら優、2つ書いたら良、1つだったら可を付ける」と言うのですよ。「期待していない第4の答えや第5の答えを書いたら駄目だ」と言うのですよ。そんな教育をやっていては、ノーベル賞など取れないですよ。自分なりの意見をいえないようでは国際社会では相手にされないと思う。

大脇:と言うことは、マスコミも報道するけれど、その新聞社の意見がないですよね。国民に対する責任ある提言が少ないですよね。

波多野:社説だって長々と経緯を書いて、「委員会を作って早急に検討しろ」というのが結論でね。ニューヨークタイムスとワシントンポストは全然違う意見を出しているように、我が社の意見はこうという意見が頻繁に出なくちゃいけないのですよ。だから、日本人は主張を持たない国民になってしまって、日本の意見というのは世界から無視されてしまう。

大脇:そうですね。特に先生がお書きになられたように、国連の場でもすぐに返事が出ないですよね。みんなの意見を取り纏めなければならないから、即断的にパッパッと出来ませんからね。

波多野:一番いいのは、外国へ行って自ら体験するのが一番いいですよ。

大脇:そうなのです。留学生で行かせるのもいいのですが、ボランティア的に行ってそこの場のニードに応える努力をしたらいいと、僕は思うのです。

波多野:行けばわかるのです、行けばね。最初はいかに恥ずかしい思いをするかです。

大脇:恥をかかないと駄目です。僕がコロムビア大学へ行った時、大蔵省のトップクラスの人が留学していて6カ月経ってもヒアリングができないのです。彼らはプライドがあるから馬鹿になれないし、「教えてくれ」とは言えないですよね。日本のエリート官僚がアメリカへ留学しても、アメリカに負けたという劣等感を持つだけで、自信と誇りを持てないですよね。コミュニケーションが出来ないからね。それを解決するためには、若いうちに恥も外聞も捨てて飛び込んで行って、現地の人と苦労をすると言葉も覚えるのじゃないかと思うのですね。

波多野:外国へ行けば、いかに日本が島国かということが分かりますよね。こんな島国ないもの。

大脇:先生にもう一つお伺いしたいのはですね。先日イスラエル参事官の話を聞く機会があったのですが、日本人はイスラエルの考え方をきちんと聞くべきですね。と言うのは、テロへの対応の仕方ですが、各国が足並みを乱して人情的に妥協することは、イスラエルのような国を危なくするわけです。アメリカが中心になって世界が毅然とした態度を取ることは賛成ですが、同時に日本が独自の立場から世界で奉仕活動を展開することが大事だと思います。アメリカが軍事力を用いる父親的な役割であるならば、日本は軍事的な問題の制限もあるわけですから、母親的な役割でもってアメリカとタイアップしながら愛と奉仕ですべてを包み込むことです。日本は外交として、ODAをバックにしてこのようにして平和戦略を展開すれば、解決の道があるのではないかと感じているのですが、どうでしょうか? 国際テロは軍事力だけでは解決できないですね。

波多野:日本は軍事力がないだけでなく、人間が危険なことは出来ないと言うのが問題ですね。

大脇:今それが問題ですね。世界の現状を理解して、軍事力の必要性も分かり、自分たちも命がけで世界に奉仕するという方向性にならないといけないと、僕は思います。

波多野:今度ロシアで119人死にましたね。あれが日本で起こったら内閣総辞職物ですが、ロシアでは85%支持があり、世界中で非難する人がいない。日本では10人死んだらもうたいへんですよね。

大脇:あの時に大量に死んだのは、ガスが原因だったみたいですね。自分たちの安全のために危険度を低くするために、ガスを使ったわけでしょう? 日本では機動隊が突入する時は、自分たちがもう少し危険を被ってでもやると思うのですがね。

波多野:そうじゃないのではないですかねえ。日本の警察や自衛隊ほど死なないところはないですよ。国連平和部隊では、日本人は1人も怪我していないのだから。国連では「危ないことしない」と、世界からせせら笑われているのですよ。

大脇:危ないところへ行かないのですか?

波多野:危ないことしないのですよ。この間、アフガニスタンに関連してインド洋に軍艦を3〜4隻派遣した時、「なんとかして全員を無事に連れ帰りたいものです」というのが司令官の出発時の挨拶ですよ。

大脇:それはおかしいねえ、みんなで危険を分かち合う時に……。

波多野:1993年にカンボジアで選挙監視活動中に2人の日本人、国連ボランティアの中田厚仁という民間人と警察官が亡くなったけれど、自衛隊の人は事件が起こると、基地に籠もり外へ出ないから怪我をしようがない。その時、日本から国連に来て、あまりにも2人亡くなったと言うので、事務総長が「平和維持部隊では1000名以上死んでいますからね」と言われたことがありました。日本は自衛隊をこれだけ出して一人も怪我をしないのは、ピストルしか持たされないので危険なことをしないのです。

 アンゴラの首都ルアンダで動乱が起こった時に、隣のザイールへ自衛隊を500人派遣したのですね。その時機関銃を持たすかどうか国会でもめて、結局500人に対して機関銃を1丁持たせたのです。日本はそういう国ですからね。

福田赳夫総理大臣が「人命は地球より重い」と言った時に、外国人はこれは翻訳の間違いだと思ったわけですよ。日本の総理大臣がそんなことを言うわけがない、「地球は人命より重い」と言ったに相違ないと。ところが、日本ではそれは当たり前になっている。日本は変わった国と思われている。

大脇:もう一つ批判を受けたのは、あの時日本が軍資金を付けて彼らを中東に送ったようなものだと。日本は結局テロの支援をしているという批判がありましたよね。

波多野:その時担当の課長が使い古しの100ドル札で100万ドル持っていったんですよ。日本とは変わった国だと外国人には思われていますね。でもしょうがないですね、日本はそういう国だから。

 今回の北朝鮮の件だって5名の拉致被害者のことで騒いでいますが、日本は北朝鮮の核やミサイルの脅威を感じていないのかと外国からは疑問に思われています。フランシスコ講和条約締結50周年記念の祭典の後行われた討論会の時に、宮沢氏は「北朝鮮が核爆弾とミサイルを持つことは怖くないのですか?」とシュルツ元国務長官から聞かれているのですよ。それに宮沢氏は答えていないのですよ。もしその時に宮沢さんか世論が答えたとしたら、「怖いと思っていません」ということなのでしょうね、これは世界の七不思議ですよ。

大脇:今日中野寛成氏という民主党の幹事長が来て話すのですが、自民党が駄目ならば野党がもう少ししっかりしたことを言えばいいのだが、足を引っ張るだけで本当の意味の野党が育っていないのですよ。

波多野:30歳代で政治家になろうという人は、自民党がほとんど小選挙区に貼り付いていますから民主党から出るしかないのですよ。そこを菅直人氏が抑えているから、延びるはずがないのですよ。古賀さんとか麻生さんなどの4人を通り越して、ワンジェネレーション若返らないと駄目なのじゃないですかね。

大脇:日本の国に対して責任ある発言をすればいいのだけれど、結局無責任な発言をするから付いていけないわけですよね。安全保障に対しても一貫した意見を言っていれば、信頼されるのだけれど。そういう意味で一貫性があるのは共産党なものですから、今共産党の人気は凄いでしょう。

驚くなかれ共産党は地方議会の野党第一党でしょう。ということは裾野があるということですよ。そういう基盤の上に国会へも出してやっていますし、経済的にも赤旗などで潤沢ですから汚職という声も聞こえないので延びていますね。女性を先頭に立てたソフト戦術でやっているけれど、依然としてマルクスレーニン主義、テロと同じ暴力思想を捨てないでやっているのですからね。よくまあ嘘がどこまで通じるのか、そのへんは日本人はムードに弱いから動いていますよね。危険だと思うのですけれど。

波多野:この前の世論調査によれば、公明党と競合していて両方とも支持率は3〜4%ですが、公明党の方がパーセンテージは高いですけれど。北朝鮮の拉致問題によって、共産党と社民党は1%くらいずつ落ちているのですよ。自民党はいざとなったら、秘書献金で共産党を絞ろう思っているのでしょうね。

大脇:あれは何のために増えているかと、自民党に対する批判票ですよ。自民党がしっかりすれば少なくなるのだけれど、自民党が体たらくであればあるほど社民党へ批判票が行かなくなったので共産党へ行くようになったわけです。