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「日本再生特区構想」

米谷邦夫 潟gレンド・ジャパン社長 元大成建設人材開発部長

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Sunnyvale/7283/index.html

【要  旨】

 「日本再生特区構想」の概念を説明しますと、土地の広さととして中央区と千代田区を合わせたくらい。中央にインターナショナルゾーンがありまして、これはシリコンバレーを凝縮したようなもの、常にいろいろな実験を行うところで、丸の内と大手町と皇居を含めたくらいの広さ。インターナショナルゾーンの回りにはゴルフ場があって、ここは緩衝地帯で防災やVIPの警備のために設ける。ただし今あるゴルフ場とは違い、ボールは幾分固めのスポンジボールで当たっても怪我をすることはないし、子供でも遊べる。そのゴルフ場の中に中学校・高校が点在していて、すべて英語で授業を行い本当の意味の国際人を育てる。

 そこから、それぞれリトルアメリカ・リトル日本・リトル中国などが放射線状に広がる。有楽町から晴海まであるいは銀座2丁目から新橋までの間に一つのゾーンがある。一番ゴルフ場よりはアミューズメントセンターで、あらゆるところにその国の文化が凝縮している。各国に劇場や映画館が10個あれば、全体で200個ある。リトルフランスにはオペラ座やルーブル博物館もある。リトル日本には歌舞伎をはじめ地方の伝統文化を素晴らしいライブが見られ、凝縮した日本がある。

 ある著名なバイオリニストが来日したが、東京で1回大阪で1回演奏しただけだった。ところがロスでは10日間くらいずっとやっている。ここからも芸術を愛好する日本人の層の薄さが歴然としていますね。英国ロイヤルバレー団はジゼルを40日間公演するのに対し、日本のバレー団は2日間くらいだったりする。日本の新聞を見ると、スポーツ面だけで4面はあるが、ちょっと意欲的なクラッシク音楽の演奏会は載っていない。それからバレーの批評なんて年に数回。載っても5回のうち3回は外国人。そのへんが島国で、外国人に対するコンプレックスがありながら勝とうしない。また、チャンスがなければ勝てないですよ。そういう違いがある。そういうほんものの芸術を各国が出してくる。

 私が思うに、土地は100年間タダで貸し、100年経ったらそこに出来た施設ごと全部日本に返してくださいというのも一つの案です。何らかのインパクトを与えるために、土地は当面タダでいいです。そこに対する資金は自分たちで持ってください。日本人がわんさと集まり日本人の預金がここに集まってくるから儲かります。儲かるのだから20か国は競争で必死にやるでしょう。では、フィリピンに伝統文化はないでしょうか? 我々が気付いていないだけで、素晴らしい文化があると思う。また素晴らしい製品があると思う。この特区の中で、初めて我々は素晴らしいものに気付く。

 東京ディズニーランドは年間2500万人の集客があるというが、この特区は本物ですからその3〜4倍の1億人は入る。1日に観光客が20万人訪れるが、とても1日で見られるスケールじゃないのです。最低1週間はかかるが、2泊3日としても延べ人数にすると1日40万人。これは世界中どこにもない、世界で初めての都市なのです。日本は世界初のものがウォークマンとカラオケだけじゃなくて、そろそろもっとスケールが大きいものが必要です。

 さて、首都機能移転の目的には、「国政全般の改革促進」「東京一極集中是正」「国土の災害対応力強化」の3点があります。では、なんのために特区を造るのかということは非常に重要ですから、お話しします。まず、今日本はさまざまな規制があって世界に開かれた市場だと思われていないで、開かれた市場であることをアピールする。小さくても自分の国が日本の中にあれば自然に関心を持ちます。自由闊達な場所ということが分かれば、本当の意味の人材が集まってくる。2番目に起業や技術革新が行われやすい実験都市ということで、海外からの直接投資促進の場になってきます。

 それから、消費拡大とか雇用創出とか、いわゆる"グローバルバージョン"というものをどんどん投資していく場所にしよう。従来は何でも日本人だけでやろうとしていたが、優秀な外国人を使って結果的に日本のバージョンにしてしまう。今逆に優秀な日本人がアメリカへ行って作れば、アメリカのバージョンを作っているでしょう。それから、夢と希望の未来都市が出来て、国民の閉塞感や焦燥感や萎縮したムードがパッと変わるわけですよ。将来が明るくならなければ、「消費をしなさい」と言っても消費するわけがない。年金を確保することも大事だけれど、こういうソフト面でアピールしていかないと消費なんて出てこない。

 それから、きちんとした難民や移民の受け入れを行う。日本人はハワイやブラジルに移民して行って、その国を発展させたわけですね。今のように外国人に対して難民も移民も受け入れていないと、ワルばかり集まってくる。それから、世界に先駈けて環境改善技術などの実験をしてどんどん検証して出来てくるわけですから、日本のバージョンになっていろいろな形で日本も動かすし世界にも貢献できるということです。それから、都市であると同時に観光資源ともなって、将来年間外国人客6倍増。現在476万人から3,000万人強へ。フランスは約7,000万人で、シンガポールは400万人。

 それから、日本の中に20カ国の「共存する世界」が目に見える形で現実にあるわけで、極端な言い方ですが一種の人質ですね。だから、テポドンを打って日本に落ちたら、「ミニ」といえども各国に約1万人ずつ住んでいるから20カ国が「冗談じゃないぞ」と。日本人に手を出せなくなる。若い人にチャンスを与えるために30年以上住めなくしているので、帰国した人たちが日本の良さを伝える。そういうことから「世界に信頼される魅力ある日本」というものがじわじわ世界に浸透していく。

 それから、留学生の受け入れ体制もここではきっちりやる。ここでは、日本の大学のようならば対象外で、大学教育を競争で行う。もう一つは「特殊技術大学」を想定していて、例えば手術士を設ける。医学の世界にも職人を置き、手先が器用な人が手術を担当すれば、難しい手術も可能になってきます。職人に成りたがる人は少ないけれど、特級手術士には医者と同じ報酬を与えればいいのです。そんな形でこの特区というものを考えていくと、子供たちの教育とかそれぞれのリトルワールドへ自分たちの技術や製品をPRするのです。「選べ」と言われてもどこから選ぶのか、この特区へ何回か通っているうちに本当の意味のゆとり教育ができる。

 外環工場地帯では24時間稼働していて、工場を共有する。いろいろな意味の共有スタイルでいくと空洞化の歯止めにもなる。ここで実験して出来た技術は、即この工場地帯にある実験工房ですぐに試される。ベンチャー企業にしても毎日プレゼンテーションする機会があるので、ベンチャー企業の促進になります。これを作るのには、私はやり方次第ではあまり金は掛からないと思います。例えば東京だったら横田基地跡を特区にして、多摩センターを飛び地的にうまく使いながら、横浜には社会資本ができていますから、特区を作ることはさほど困難ではありません。

【討  論】

:共感する点は、ビジョンがないと何も起きてきません。ハンディキャップありますが、日本民族はやれば出来るとそれなりに自信を持っているのですね。世界の優秀なタレントが日本に来ていれば、あのくらいなことは出来ると思っているのですね。世界の人材や知恵が集まるようにすることはとても需要だと。私も財政諮問会議の緊急プロジェクトに関与していまして、そこで特区を作ろうと議論をしています。特区を作れば世の中が変わるようなことを行っているけれども、ビジョンもなければ世界が見せるテーマもなくては世界の人は来てくれないと思うのですね。

 「失われた10年」と言われていますけれど、この10年間に財政出動だけで200兆円も使っているのですね。その他に隠れている個人の金融資産が1400兆円もあるのですね。誰もお金に困っていなのです、多分。お金を使いたがっているのです。お金はどうも足りてる。規制緩和と言いますが、これから作ろうとしている産業再生法などを見ても飛んでもないくらい緩めています。今はハイエナのようにベンチャーキャピタルばかりですよ。こんなチャンスはないんですよね。

 特区を作るのは規制緩和が目的だと言われていますが、本当にそうだろうかと疑問に思っていましてね。日本は世界第二位の経済大国ですから銀行やゼネコンとか巨大な企業群がペストアップされているわけです。出来上がった利権構造がありますから、邪魔をしていることは確かで、日本社会を新陳代謝をよくして活性化するためには壊さなくてはいけません。小泉さんは壊そうと言うことに関しては鮮明なメッセージを出しているので、国民の支持が高いと思うのですね。

 ちょうどソ連を壊したゴルバチョフさんが過去の問題点は的確に言っていたが、崩壊後にどういう社会を作るのかが明確ではなかった。一流国だったのが三流国になってしまって、今頃になってソ連に戻し誇りを取り戻すんだと言っています。同じように日本も小泉流で壊してしまうだけだと、多分戦後築いた世界第二位の経済大国となった富を、ハイエナのような外資の前にどんどん蝕まれてしまう。何かにビジョンや方向性がないと、規制緩和やお金だけが変な形で動いてしまうと思うわけです。

 私が参加している財政諮問会議の下に"動け!日本"(http://www.go-nippon.jp/)というプロジェクトがあって、6月に小泉さんに答申をした内容ですが、「目指せ世界一の日本」というビジョンを作ろうとしました。日本は今たいへんですから、ともするとサプライサイドの話が出てきてしまうのですが、デマンドサイドの国民生活者がニーズを聞いて作ったものが@世界一の健康寿命国、A世界一きれいな国、B世界一安全な国、C世界一教育国の4つのビジョンです。

 日本人は「先ずはやってみて」と言って、先のあるべき姿を議論しないし、努力目標にしない傾向があるのですね。海外へ行くと、政府の代表が「君のような大国が何を言うのだ」と言われてびっくりするのですね。実はそれだけの規模を持っている国ですから、世界に誇れる活動が大事かなと思います。

(以下省略)