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日本国家戦略研究所ビジョン21世紀の会

 序 文
日本国家戦略研究所代表 阿部正寿
はじめに
 小泉総理は、強い信念を持って数々のタブーに挑戦しておられ、その決断と実行力は高く評価されてよいと思う。しかし、山積 みする内政外交上の難題を処理するには、まだ幾多の困難が予想される。
 この提言は、平成12年(2000年) 5月27日に阿部正寿氏が"止むに止まれぬ"憂国の情に駆られて、新任の森喜朗総理大臣に宛てて、エルサレムからインターネットEメールを通して提言した内容を骨格として作成したものである。
私が、阿部氏から原案を見せられた時、かつて故,福田信之先生のもとで国家戦略について研究時の成果も是非参考にして欲しいと思い、その旨提案したところ、快諾していだだいた。
 そこで昭和58年(1983年)2月、当時の中曽根内閣に提言された『80年代ビジョンの会』(代表、福田信之筑波大学長、80年代、わが国をめぐる国内外の重要課題をテーマに取り上げ、広く各分野の学者・研究者を網羅して研究を積み重ね、その成果を世に問うてきた政策研究グループ。『ビジョン21世紀の会』と改名)の提言のいくつかの部分を阿部氏の提言に追加、補足し、内容の充実を試みた。両提言の内容の融合、編集に当たっては、現時点に合うように加筆した。その際は、原文になるべく忠実に行ったつもりであるが、不足な点はご叱責を賜りたい。
 編集しながら痛感したことであるが、ビジョンの会が提言した課題は、ほとんど現在の時点でも通じる課題である。如何にここ、20年近く、日本丸は依然として"漂流し続けている"かを改めて知り、愕然とした。
日本は今や「戦後の総決算」をすべき転機に立っており、同時に明治維新以来の近代文明を超克すべき文明史的大転換期に直面している。21世紀世界が求める、新しいビジョンの創造は容易なことではない。
 しかし、小泉内閣が、現在直面しているこの歴史的な難局を勇気を持って乗り切れば、21世紀日本の軌道を正しく敷設しうるであろう。
 選択すべき道に誤りなきを期待し、総理はじめ政府・与党および関係者に、以下を提言したい。
 この提言が、最近、元気の無い日本に活力を与え、憂国の士と共に希望あふれる21世紀新生日本のビジョンを創造できれば契機となれば幸いである。
ビジョン21世紀の会−初代事務局長・幹事大脇準一郎

1.日本の国家目標 世界の為の日本
  1)新しい価値観の定立と新文明の創造
  2)恒久平和と理想世界実現
  3)全人類的課題への挑戦と克服
2.世界と日本の課題
  1)グローバルな課題
  2)日本の課題
3.国家戦略の構築
  1)国家目標達成のための条件
  2)日本の主な国家原則
  3)国力の諸要素
  4)日本の国家総合戦略の展開
4.戦略の展開
  1)政治力の構築:外交戦略
  2)国家目標完遂のための行・財政改革・構造改革
  3)強固な経済力の確立
  4)平和の戦略の確立と防衛
  5)科学技術力の創出
  6) 世界平和のための文教戦略
  7)「国民意識の改善」と「情報戦略」
5.「日本総合戦略研究機構」設立の提唱

1.日本の国家目標

@アメリカ合衆国、カナダ
Aヨーロッパ連合、東欧諸国
B韓国、北朝鮮
C中華人民共和国、中華民国
Dロシア連邦、モンゴル共和国
Eアセアン諸国
F中近東諸国
Gインド亜大陸(インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブ)
Hオセアニア(太平洋の島嶼国家群を含む)
I中央アジア諸国
J中南米諸国
Kアフリカ諸国(サハラ以北のイスラム教諸国を除く)

(1)米国との協調外交を基本路線とする
 日本は基本的には独自の外交路線を保持するが、現在世界唯一の超大国であるアメリカと対立すれば如何なる外交も成就し得ないという現実に鑑み、対米協調を優先しなければならない。自由由世界は互いに連動しており、「運命共同体」である。日本は、「自由」を擁護するという西側の共通の価値観の上に立っていることを明確にし、自由圏の一員として、防衛・経済・技術・教育・文化等で応分の役割を果たす。

(2)近隣外交によるリージョナル・パワーとしての位置確立
 日米基軸と共に、アジアを離れて日本の進むべき道はない。アジア近隣諸国、とりわけ日韓は「運命共同体」であるから、相互の近密化をより一層図るべきである。
 (韓国やアセアン諸国は、日本は米国にばかり向いていて、自分たちを第二義的に扱っていると考えている。)日本が世界的使命を遂行してゆくには、近隣諸国との信頼と支持がなければ多くの支障が生じる。しかし、現実的にはこれらの諸国との関係が一番難しいのである。すなわち韓国、北朝鮮、中国・台湾との関係である。
 これら諸国との過去の清算を早急に終わらなければならない。日本の非を認めるべきは認め、謝まるべきは謝まり、支払うべきは支払うほうが、何時までも引きずるより利益がある。要は、近隣諸国の支援と協力により国家使命達成の基盤をつくらなければならない。

 日本の外交政策、アジアでは日韓を基軸にする。
 @、韓半島の安全は、日本を含む東アジアの安全にとって最重要である。それ故、日本は自由世界を守るという世界戦略の一環として、韓国の安全保障の為に、経済協力すべきである。
西側の共通課題は、共産圏やイスラム急進派などの脅威をなくし、自由と平和と安全を確保することにある。西側が足並みを乱せば、戦略的敵国の思うツボである。日本は日米協調を基軸に自由圏の結束に努力し、アジア諸国に対しては日韓を基軸に協力・貢献すべきである。
 A、日本は韓国、アセアンと「自由と民主主義」という共通の理念を確認し、相互に緊密な協力関係を維持発展させること。
アジア諸国の中には、わが国の防衛力増強の動きやシーレーン防衛論議に対し、それを日本民族主義への回帰と捉え、増強された軍事力の矛先が再び自国に向けられるのではないかと危惧する動きがある。相互に理解を深めれば、誤解は解消される.
 B、日韓両国間の相互理解を深めるため、教育・文化交流を進める。
今日の韓国の指導者層は、「反日教育」を手段にして国家意識が形成されており、またアメリカで教育を受けた人が多いため、日韓の実情に詳しくない。また日本人にも依然として韓国人に対する歴史的偏見がある。政府や学者による日韓交流を進め、相互理解を深めること。
  ・日韓両国の歴史や民族を紹介した映画を共同で製作し、公開する。
  ・英語は思考のフレームが西欧的であり、アジア人の情緒を伝達出来ない。
  ・日韓両国は日本語と韓国語で通じることができるよう、日本においては韓国語の教育を重視する。
 C、アジアとの共生を!
  ・価値観を共有する韓国・中華民国(台湾)との共生基盤(東アジア経済共同体・経済開発機構・国家連合)を確立し、両国との協調の下で北鮮・中国と協調する。 卑屈なチャイナロビー・北鮮外交を清算し、・道義に基づく外交を展開すべきである。 日華条約に留意し、台湾外交を重視する。
  ・西洋的価値観とアジア的価値観の融合、世界が目指す新しい価値観をアジアの歴史的伝統の中から、近隣諸国と共に創造していくこと。
 (3)親日諸国との重視
 世界には伝統的に親日国家が存在する。日本が世界での有力な位置を占めるためには、これらの親日諸国との友好と連携を深めることが重要である。ODAの特別取分等の配慮が必要であろう。そのため何らかの機構を構築する必要がある。
〔例〕友好諸国連合
   台湾、モンゴル、タイ、ビルマ、インドネシア、マレーシア、バングラデシュ、
   スリランカ、ネパール、トルコ、イスラエル、フィンランド、ハンガリー、
   ポーランド、ドイツ、オーストリア
 (4)対ロ・中・北鮮関係
 @、たとえば、ロシアはいかなる国か」についての基本認識を明確にすること。
 ・9.11以降、ロシアの西側への接近をさらに強めている。 この変化と共にロシア人は極めて長期的展望に立ち、忍耐心が強く、執拗に目的達成に向けて努力する。国内の経済不振と軍備拡張のジレンマから方向転換しつつある。
 B、わが国が米・欧・韓と歩調を揃え、毅然とした態度で中国・北鮮・ロシアに臨み、国民の意思を固めることは、それらの国の道義的立場を弱め、対日工作の変更をせまることになる。中国への外交戦略の一環として中華民国(台湾)の存在を再検討する。  C、日ロ間の懸案の一つは、北方領土問題である。北方領土は日本固有の領土であり、日ロ間の未解決の外交案件であることをわが国も、執拗にロシアに繰り返し訴えることが重要である。当面の目標としては、北方領土からのロシアの撤退、1976年以来拒否されている墓参復活、田中・ブレジネフ会談の再認識である。
 (5)日本の国連外交のあり方
 国連中心主義を廃止、国連改革を通して日本の影響力を高めるように努める。
 (6)国連常任理事国入りの達成と新しい国際機構の創設
 日本の国連分担金は、2000年には20.573%になり、最高の米国の25%に次ぐ分担金である。それに対して中国は拒否権を持つ常任理事国なのに僅か2.5%で日本の十分の一しか負担していない。これは明らかに不公平である。日本は当然、常任理事国としての資格を有している。世界的使命を完遂するためにも国連常任理事国入りは果たされなければならない。 戦後第2次大戦後の連合国側に有利で敗戦国に不利な敵国条項を改める。(日・独の例→第2国連創設)、親日諸国の重視:
 (7)海外協力省の設置
 たて割行政の弊害を補うため国際協力担当局を一本化し、統合調整すること。
外交・防衛を含めた総合的な国際協力のあり方を、長期的展望に立って計画・調整・決定するシステムが望ましい。
 *1980年代、海外協力省(国際協力省)の提言をしたことがある。
 日本は日本の経済力・技術力・マンパワー(人材)、文化交流を他国の人づくり、国づくりに投入し、貢献する。このことは同時に、わが国にとっての安全保障環境の造成につながる。
日本人は、伝統的に外交が下手である。今まで多くの失敗を重ねてきた。国際社会に生きて行く以上、外交は必須の要件である。しかし、現在のような国益よりは省益・私益を優先する外 務官僚を増やすのは、税金のムダ使いであるので、もっと民間からの外交官登用を推進し、ODAの見直し、NGO、NPO、民間の知恵を活用すべきである。
(8)国連及び国際機関に日本人幹部の登用を推進
 日本は分担金の大きさに比べて国連や国際機関(IMF、WTO等)での日本人登用が極めて少ない。重要な部署は欧米諸国が独占している。日本は、アジア地域の代表として、もっと日本人を幹部または職員として登用するよう働きかけなければならない。 日本人が難しい場合には、中国人や韓国人を推薦すべきであろう。

 国家目標完遂のための行・財政改革・構造改革
 現在、政府の行政改革・構造改革が進行中であるが、数合わせのための行政改革では意味がない。何のための行革・構造改革なのか、その目的が不明確である。これまでの行革を国家目標遂行に適合するように再編成しなければならない。行政官庁は国家的使命の完遂と国民の安寧福祉のため存在するのであって省庁や官僚自体の安寧のために在るのではない。国家の公僕という本然の立場に帰らなければならない。行革・構造改革に当たっては次ぎの諸点が考慮されなければならない。
  @内閣総理大臣の職務権限を強化する。
  A各省大臣に当該官庁の人事権を付与する。
  B国家公安委員会のような曖昧な組織を廃止して、担当大臣に指揮権を付与する。
  C官僚による国会答弁を廃止する。
  D官吏登用制度の抜本的改革を行う。省庁間の人事の流動性を高める。
  E防衛庁の内局における文官支配をやめて、武官の登用を自由化する。シビリアン・コントロールとは文官による武官の支配ではなく、選挙で選ばれた政治家による軍事力の支配のことである。
≪基本認識≫
 (1)行政改革には、(イ)新時代に適応する行政システムの構築と、(ロ)不当に膨張した部門削減の二通りある。後者は直接、財政再建に結びつく。
 (2)行政改革と財政再建は10年ぐらいの長期的政策であるのに対し、景気対策は短期の1、2年の問題である。このままでは、ますます景気沈帯、歳入欠陥の悪循環に陥り、失業率も一層悪化する。また低成長下では行革も実行不可能となるばかりでなく、国際経済に大きな影響を与える。行革・財政再建と並行して不況対策を行うべきである。
 (3)行政改革と景気対策は矛盾するものではなく、むしろ相互補完の関係にある。
行革は財政支出の質的改善である。それに対して不況対策は、与件の中で適正な景気を維持する政策であり、財政収入の量的適正化を図ることである。
財政の健全化は、財政支出の質的改善と、財政収入の量的適正化の、質量両面の改善によって、初めて可能となる。
≪行政改革≫
 (1)行革は長期的展望、国際的視野に立って固い決意で実行すること。年次計画を明確にし、監視機関を設ける。
 (2)今日の時代に適合しない組織や制度に対しては、中期的な具体案を国民に明示し、その事業費を大幅に削減する。
人件費はそのままにして、不必要な事業費を大幅に削減すれば、有能な人材はその間に転職することができるし、退職金や労働争議なしに、古い組織や制度の体質改善を図ることができる。
 (3)郵政・道路公団等の分割民営化を実現する。
何もかも一挙に根本的な改革を実施しようとしてもむずかしい。一つ一つ着実に実行に移すこと。競争原理を導入し、分割民営化を進める。
 (4)地方出先機関の統廃合を実行に移す。
これは地道であるが、人員の削除効果が大きいし、国民に与える心理的効果も少なくない。
 (5)許認可などの事務を減らす。補助金を思い切って整理し、合理化する。
(6)国民は、自分のことは自分で責任を持つという意識の変革が望まれる。すなわち、社会に自己責任体制を明確に導入すること。
 日本では事故が起きると、まず政府の責任にしてしまう。それで役人側も穴をつくらないように法律を増やさざるを得ない。そのため行政事務が増え、公務員の数が増えた。役に立たない法律はないが、それを必要とするか否かは価値観の問題である。国民の意識変革が望まれる。
 (7)地方自治体制の改革
 現行の都道府県制と3000自治体は明らかに限界にきている。これを打破して地方自治体の財政自立と自由裁量権をも付与して、発展を企てる。そのため8道州制と300自治体の体制を構築する。  8道州とは次の通りである。
1.北海道 2.東北州 3.関東州 4.中部州 5.近畿州 6.中四国州7.九州 8.西南諸国州(沖縄諸島)
 (8)日本への移民政策の推進
少子化に伴い、労働力の補填は必須の課題となる。このため、日本は複合民族への対応が課題となり、複合文化国家を目指す必要がある。
≪財政再建≫
 (1)中長期的には、財政構造を改造すること。
低価格石油時代・高度成長期に膨張した財政支出規模を徹底的に圧縮するとともに、効率的な行政府の実現をめざし、財政構造の改造によって財政危機を乗りきる。
 (2)防衛費と経済協力費は、日本が今日の国際化時代において、自由世界の中で孤立的存在にならないための総合安全保障費である。別枠化を図ること。
 (3)高齢化・小子化社会に備え、過剰福祉を改める。給付と負担の調整に関する具体的措置が望まれる。 日本は、欧米の四倍近いスピードで高齢化・小子化社会に突入しており、高福祉・高負担では民間の活力が失われ、先進国病を免れない。
過剰な医療福祉を改め、乱診乱療の無駄な投与を押える。義務教育の国庫負担率を下げる。教科書無償制は廃止する。労働省、厚生省の公的年金の一元化を図る。
 (4)間接税の重視、土地税制の根本的改革を図る。
直間比率を改め、間接税による増徴を図る。だだし、全体的には国民の租税負担率を軽減すること。サラリーマンの重税感や不公平感を緩和すること。
相続税の引き下げ、寄付行為の規制緩和
≪景気対策≫
 (1)大幅の所得税減税を実施する。
不況の最大原因は、消費の長期低迷にある。消費が増大しない限り、企業の在庫投資も設備投資も増加する可能性はない。
内需振興を図るため、大幅の所得税減税(約2兆円)を即刻実施すること。
 (2)即効性のある公共事業投資を行なう。
既存工事の早期繰り上げ、学校・病院等の建設、情報通信関係施設の増強、住宅投資、科学技術博覧会関係の社会資本(道路、鉄道、新交通システム等)への投資がよい。新規の用地取得を伴うものは時間がかかりすぎる。
 (3)中小企業に対する設備投資減税を行なう。
中小企業の不況感は極めて深刻であり、合理化・近代化のための設備投資を必要としている。投資減税措置を構ずること。
 (4)世界をリードする産業育成に投資する。
エレクトロニクス、生命工学的産業、海洋産業、宇宙産業、および農業技術等。
 (5)世界景気のサイクル全体を盛り上げるよう、ロングレンジの発想のもとで景気対策を行なう。
「世界の中の日本」「世界の為の日本」という意識をもって、世界経済の再活性化に貢献する。経済協力や人づくり協力を通じて、途上国の成長率を引き上げ、市場の拡大を図る。特に、東アジアやアセアンは非常に大きな潜在的成長力を持っている。
 (6)積極政策のための財源について
 @、財源の捻出については、行革による徹底的な財政支出削減の実行を中心にし、なお不足する分に関して、当面は、所得税減税に対しては赤字国債で、公共事業追加に対しては建設国債の発行によってまかなう。
 A、現在発行されている赤字国債は、財政収支不均衡に対する後始末国債(尻ぬぐい国債)であって、国民経済に対して何ら積極的な効果を発揮しない。発行不可避の後始末国債の一部を、積極的効果をもつ景気対策国債に切り換えることが必要である。
 B、積極国債は、次の二つの効果をもつ。一つは景気の改善にともなって租税の自然増収をもたらす。第二は、景気改善による所得増の一部は貯蓄増を促し、赤字国債の市中消化資金増となって、赤字国債によるインフレを抑制する。
 C、現在の状況から判断して、積極政策が直接の原因となって、直ちにインフレが生じたり、国際収支が悪化することはない。

3)強固な経済力の確立
 (1)強力な産業経済力の確立に努める
 現時点では日本は世界第二の経済大国であることに変わりはないが、今の状態が継続すれば、やがては中国に追い越され、その位置は低下してゆくことは避けられない。国際競争力比較においても、かつてはアメリカと並んで1、2位を争っていたのに現在は30位に落ちている。今、手を打たないと後悔の臍を噛むことになろう。いま余力があるうちに抜本的改革に着手すべきである。そうしなければ世界貢献どころか、世界から救済されるようになろう。いや、日本救済など誰もしてくれないだろう。
 (2)経済活動のグローバル・スタンダード化を徹底させる
 経済産業活動の総ての分野にグローバル・スタンダードを導入して世界をリード
する積極果敢な政策をとる。欧米諸国によって定められたグローバル・スタンダ−ドを受け入れるのではなく、日本がこれを作るようにならなければならない。多くの商品分野においてデファクト・スタンダード(事実上の標準規格)を確立するように努める。 日本が劇的に市場を開放しても、日米間の貿易不均衡が是正されないことを米国側は熟知している。だだ、その努力の証詞として、今一日も早く、可能な限りの品目に関する市場開放を一般米国民に印象的に行なうことである。立場が強いときこそ一歩先んじて自由化することが、自由貿易を維持する秘訣である。市場開放に伴って損害を被る国内産業に関しては、中・長期的政策として政府がこれを保証する旨を宣言するとともに、国際競争力を強めるよう行政指導を行なう。
 (3)世界一の情報大国を目指す
 現在はアメリカが世界一の情報大国であることに異論はないが、これから携帯電話でインターネットとつなぐ時代になると日本が優位にあるので、これが逆転するチャンスが来る。日本はこれを機に経済のソフト化とIT大国を目指すべきである。
 (4)世界最大の資産の活用を計る
 現在、日本には1400兆円の個人資産と、3000〜5000兆円といわれている公共資産があり、在外資産も68兆円、外貨も30兆円等、膨大な資産があるが、これが活用されていない。かなりの部分がアメリカを助けるために使われている。日本の資産はアメリカを助けるために在るのではない。この資産は世界人類の救済のために使わなければならない。そのために、これを活用できる人材の養成と機関の設立を図るべきである。
 (5)日本独自の経済政策の確立
 経済はボーダーレスであるとは言え、各国は国家意志に基づいた経済政策を遂行することは当然のことである。日本はこれまで対米追従の政策をとり、アメリカ経済に多大な貢献をしてきたが、その割には、米国民は何も知らされていないし、評価もされていない。こんな協力はするべきではない。日本はアメリカを繁栄させるために存在しているのではない。日本は世界人類の発展に貢献する国家目標を遂行するための独自の経済政策を確立しなければならない。たとえば、資本、技術の提携を促進し、現地生産を行なうことによって、欧米諸国の失業対策に貢献するとか、韓国・台湾・中国・アセアンとの思い切った共存共栄のグランドデザインを描くべきである。
 (6)円を世界の基軸通貨の一つにする
    円をドル、ユーロと並ぶ世界の三大通貨の一つにする必要がある。そのためには強い円の維持に努力し、円による貿易決済を拡大し、各国が円で外貨を保有し易いようにしなければならない。財政政策も日本だけを考えるのではなく、常に世界を念頭において行わなければならない。
 (7)新千年紀に相応しい社会基盤の構築
    少子・高齢化社会に相応しい国土の再整備と再配置が必要と思われる。そのために次の五項目を指針とする。
 @、自然と調和した美しく豊かな国土の建設
 A、高度に組織化された陸・海・空の交通組織体系の確立
 B、革新的な情報通信網の整備(情報ハイウエイの構築)
 C、国土・海洋の高度利用と都市の再開発の推進
 D、自然災害の防止と国土の科学的な管理の施行
 4)平和の戦略の確立と防衛
 将来は軍事力の必要ない世界の実現をしなければならないが、しかし現実には、力のバランスのうえに存在している以上、当面、軍事力は国家目標の遂行上、必要不可欠な要素である。日本は軍事国家になる必要はないが、軍事力が弱い場合、国家使命遂行上支障をきたすことが多い。軍事国家と言う場合、国民の生活や福祉を犠牲にして国家の目的を軍事力で遂行しょうとする国家をいう。北朝鮮、中国、イラク等がこれに当たる。 米国は世界最強の軍事力を保有しているが、国民は自由と人権を保障され、高い生活水準と福祉を享受しているので、誰も米国を軍事大国と非難する者はいない。故に日本が国力に相応しい軍事力を保有することは軍事国家になることを意味しない。

 (1)国家戦略を確立する。
日本は、米欧韓と共通の認識に立ち、自由圏全体の生き残りという観点から、わが国独自の国家平和戦略を構築すること。
 (2)総理・政府は日本の安全保障に対するリーダーシップを発揮し、国民の防衛意識高揚に努めること。
 そのためには、
 1.総理は勇気を持つこと。
 2.あらゆる機会(特にテレビ)を通して、防衛に関する現実的認識を国民に啓蒙すること。
 3.公正なマスコミの報道、教育の正常化。
 (3)法的整備を図り、有事即応性を高める。
 自衛隊法を改正し、自衛隊の有事即応性の強化を図るとともに、電波法、道路交通法等関連法規との調整、機密保護法等必要法規の制定等、各種有事法制の整備を急ぐ。
 (4)「防衛計画の大綱」を早期に達成し、同時に見直しに着手する。
 @、日本の安全と平和を確保するためには、防衛費のGNP1パーセントの枠にこだわることはない。
 A、2.脅威の発生源に対する探知能力と打撃力を高めるため、防空能力と対潜能力の向上に努める。
 B、継戦能力の向上に努める。正面装備の他に、弾薬類の備蓄、輸送能力、燃料補給などの後方支援の取り組みを強化する。
 C、シーレーン防衛の三海峡封鎖は西側同盟の基本戦略であり、また海洋国家であるわが国にとって死活問題である。海洋集団安保体制を敷くこと。
 (5)日本独自の情勢判断能力を高める。
 そのためには、国家の統合情報機関の創設、自衛隊の陸・海・空総合情報機関の設置、および情報活動専門家の育成、各省庁の情報機能を強化すること。さらに偵察衛星の打上げや通信網の整備により、科学情報収集・処理能力の飛躍的向上に努める。
 (6)シビリアン・コントロールを実効あるものとし、制服組の待遇改善と士気の高揚を図る。  @、防衛庁長官には、実力者を抜擢し、一つの責務が完了するまで、人事を頻繁に変えるべきでない。(日米間の相互理解にマイナス)
 A、首相は統幕議長と三幕僚長から防衛に関する説明や意見を不断に受けるシステムにする。また優秀な制服組から秘書官を登用する。
 B、自衛隊に軍としての法的裏付けを与え、平時より三自衛隊の任務表を明確にし、権限を与える。統幕議長には陸・海・空を指揮する権限を与える。
 C、幹部候補生学校を充実させ、自衛隊の人材の質的向上をめざす。また十分な訓練をなし得るための社会的背景を与え、士気の高揚を図る。
 (7)日米防衛協力を強化する。
 @、日米二国間問題としてではなく、自由圏を共同で守るという世界戦略の視点から捉える。毅然たる日米防衛協力関係は、仮想的敵国のあくなき膨張を阻止する。
 A、日米安保条約を堅持する。隣国の核恫喝に対しては、非核三原則を修正して、米国の核搭載艦の寄港を認める。
 B、日米共同技術開発(ソフト、ハードの両面)を積極的に推進する。これは費用も安く、日米双方の防衛力強化に大きく貢献する。文科省と防衛庁の協力のタブーの壁を打破する。特に大学における軍事研究、人材交流
 C、日米防衛協力指針に基づく共同作戦計画のあり方を、事務レベルでキメ細かく詰めておくこと。
 D、日米合同演習に対する米国側の評価は高い。積極的に回を重ねることは、隊員の士気の高揚、練度の向上につながり、また日米両軍の連携を容易にする。これと並行して、日米間の幹部の人事交流を活発にすること。
 F、日米共同技術開発を積極的に推進すること。
 日米技術協力は日本が米国と双務的関係を築くのに不可欠であり、これをやれば費用も安く、双方の防衛力強化に大きく貢献する。
 G、自由圏の安全保障のために経済援助をもって貢献することにより、日米間の防衛における「非相互主義(片務性)」を漸次是正する。パキスタン、アフガン・トルコ、中東、アフリカへの戦略的視点での経済協力が効果的である。
 H、日米関係は最重要課題でありながら、ホワイトハウスや議会とわが国を結ぶ
パイプが非常に弱い。日米間に信頼できる太いパイプが必要。そのためには、ワシントンと日本に民間の「日米共同総合戦略研究機構」を創設することである。
 I、議員外交を活発にする他に、学者・文化人の民間外交を促進すること。
何故なら、米国では大学や研究機関の社会的評価が高く、学者の政治に与える力が大きいからである。
 J、日米両国首脳、あるいは政権政党の幹事長と上院院内総務のテレビ討論(NHKと米国側TV局との宇宙中継)を開催し、米国一般国民にも理解を求める。
 (8)1000カイリ・シーレーン防衛を実行に移す。
 自由貿易から得る利益は日本が一番大きいが、それには海の安全確保が必須条件である。ソ連の太平洋進出および米国の地位の相対的低下により、極東においてはわが国がこれをカバーする必要がある。また、このことは、ひいては自由圏の平和と安全に貢献することになる。(そのためには、GNPの1.5〜1.8パーセントが必要である。したがって、「防衛費1パーセントの枠」は撤廃する。)
 @、日本は『専守防衛』をもって方針としており、他国から侵略された時は、自衛隊が初期防戦し、後は米国の支援を待つという戦略をとっている。これを通常戦では、自力で侵略軍を撃退できる戦力を保持する方針に転換すべきである。
 A、日本には徴兵制がないので、兵力を増やすには限界がある。それを補うためには高度のハイテク兵器を開発し、先端的国防力の充実に努めるべきである。日本にそれを可能ならしめるに十分な技術を保有している。
 B、核弾頭防衛網の構築に努力すべきであると考える。核攻撃に対抗するには、核武装することが理論的には最善の選択であるが、日本は内外ともにそれを許さない状況にある。故に次善の策として、核攻撃を防禦できるミサイル網を構築する必要がある。米国か日本に参加を呼びかけているTMD(戦域弾道ミサイル防衛) に積極的に協力すべきである。しかし、資金だけ提供して技術はブラックボックスで製品だけを買わされるのは御免蒙りたい。参加するなら初期段階の設計から加わり、製造も日本で分担しなければならない。効果を疑問視する者も多いが、要は技術を習得できるメリットは大きい。
 C、法律を整備して自衛隊の海外派遣を自由化するべきである。現在、地球上の何処かで常に局地的紛争が起こっている。その紛争地に自衛隊をPKF(平和維持軍) として派遣できるよう、法の整備を急ぐべきである。海外に派兵して戦争の抑止に努めるのは世界平和実現のための重要な貢献である。現在の国連のPKFの場合は、国連が経費を負担しており、多くの途上国からの派兵は資金稼ぎの感が強い。日本が自費で派兵すれば世界から歓迎されよう。また自衛隊としても実地教育になる。 勿論生命を危険にさらすことになるがそれを恐れるようであるなら、始めから自衛隊に入るべきではないのである。
 D、諸外国との軍事協力を推進する。平時から軍事協力を行うことによって、戦争の抑止に資することができる。アメリカとの軍事協力は当然のこととして、その他の主要国や友好諸国とは必要に応じて軍人の派遣、軍事訓練、武器供給、兵器の共同開発等を積極的に行う必要がある。これらの行為は現在の法のもとでは出来ないが、本当に平和を望むのであればそこまでしなければ平和実現など絵に描いた餅である。
 E、武器輸出三原則を廃止するべきであると考える。これほど愚かしい原則は見たことがない。三木内閣の時の閣議決定であって、正式に国会の議決を経たものでもないので、閣議で廃止できる。これほどの自己満足的な原則はない。日本が供給しなくても、兵器を輸出したい国はごまんとあるので、それらの国を喜ばせているだけである。"兵器を輸出したから戦争が起こる"などという幼稚な理論に呪縛されるほど愚かしいことはない。戦争をするためではなく抑止するための目的の方が大きい。日本は兵器輸出を自由化することによって兵器の量産化が可能になり、高い国産兵器の単価を引き下げることができる。それは税金の節約になり、国民の税負担を減らすことができる。日本の優秀なハイテク兵器を買いたいという外国も多いのに真にバカげたことである。我々は深く議論もされていない無知な過去の呪縛から解放されなければならない。
 F、情報戦力の強化に努めるべきである。現在は情報戦の時代である。日本は強大な軍事力を保有できない以上、情報戦能力を高度化しなければならない。偵察衛星等を保有して全世界の軍事情報を収集する能力を保有しなければならない。アメリカに依存しない情報戦力の構築に努めなければならない。
 G、PKF用緊急展開部隊を編成すべきである。世界各地の紛争処理のためにPKF専用の緊急展開部隊の編成が必要である。日本が真剣に世界の平和を希求するなら、これくらいのコミットメントは必要である。軍事力は両刀の剣である。正しく使うことによって平和を確立に寄与できる。"良く切れる包丁は、人を殺すことも出来るので、なくせ"と言う者は愚か者であるが、悲しいことに日本にはこの手の良心家が多い。
 H、国防研究開発を強化すべきである。小兵力で大軍に打ち勝つためには敵より優れたハイテク兵器を保有しなければならない。日本はハイテク兵器の開発のためにもっと研究開発予算を増加しなければならない。予算の飛躍的増大と共に重要なのは優秀な研究者の確保である。自衛隊の中だけで確保できない場合、国立研究機関や大学等と協力して開発する体制を築く必要がある。
≪憲法問題≫
 (1)総理と自民党は憲法改正の方向に向いていることを、はっきりと示すべきである。
憲法改正は自民党立党の綱領だから、常にこれを主張・啓蒙し、世論形成に努力すべきである。
 (2)憲法改正の過程で自衛隊違憲論を唱えることは、自衛隊の士気を損なう。
改憲までは、現状解釈で防衛体制を整備する。二段構えで臨む。
 (3)戦争が起こってから憲法改正を議論すれば、極右になる可能性があり、かえって危険である。今から自由な議論を展開しておくことが大切である。
5)科学技術力の創出
 科学技術政策の推進が重要となる。日本の科学技術力とマンパワー(人材)をバーゲニングパワーとして用い、先進国の再活性化と途上国の国づくりのために貢献する。これは日本の生き残りに決定的な役割を果たすことになるであろう。
 日本を除くどの先進工業国も、採算の合わない軍事技術の開発を行なっているが、結果的にはそれが民間技術発展の源泉となっている。日本としては、人類の未来のため、平和利用としての科学技術開発に多額の先行投資を行なうべきである。
 科学技術は今日の急激に発展する世界を動かす原動力である。従って科学技術能力を持たない国家は世界の潮流から取り残されるだけである。戦後の日本の経済発展も科学技術の進歩によってもたらされたものであることは議論の余地がない。今後とも日本が高水準の経済発展を維持するためには、科学技術の開発は不断に継続されなければならない。
 特に、創造的な科学技術の開発に努力を傾注するべきである。諸外国からは「日本の技術は創造性に欠けており、欧米諸国の物真似が多い」と批判され続けてきた。為にする批判もあるが、言われるだけの理由のあることも事実である。日本人に全く創造性が無いわけではない。創造的な発明発見があっても、それを育てる土壌が豊かでなかったのである。創造的な技術開発に全国民的に取り組まなくてはならない。
≪提 言≫
(1)巨大技術、先端技術の開発に力を入れる。
 欧米各国との技術開発の協調体制を強化し、世界に活力を与える。そのためには、エネルギー、原子力開発、生命工学、ヒトゲノム解読、光通信、宇宙開発、航空技術、新材料、人工知能、等々に関する技術開発に力を注ぐ。民間ではやれない研究は、国家プロジェクトして推進する。 現実的には既に多くプロジェクトが進行している。 しかし問題はチャレンジ精神に欠けた官僚的体質である。 最近、宇宙開発事業団がH−2型ロケットの打ち上げに失敗して、尾羽うち枯らしているが、如何なる開発も100%成功を保証されてはいない。 失敗はつきものである。 原因をよく見極めて次の失敗をしないようにすれば良いのである。
(2)途上国のための科学技術政策を積極的に展開する。
 中間技術の大規模な研究開発を行ない、かつその有効な移転についての協力体制を整備する。科学技術における「持てる国」と「持たざる国」との格差は拡大する一方である。これが貧困の格差を産む原因である。理想世界の実現のためには、科学と技術の平準化に努めることが不可欠であり、これは先進国としての日本の重要な使命である。 そのために途上国からの留学生や研究者の受け入れ枠を更に拡大しなければならない。
 (3)兵器開発競争の抑止力に貢献する技術を開発する。
 米ソの軍拡競争には際限がない。これに歯止めをかける技術を生み出せるのは日本である。
(4)文部科学省の予算を大幅に増額し、効率的に使う。
  @、経済産業省、文部科学省、防衛庁の各々で研究開発費を持っている。これらのたて割の弊害をなくし、相互に協力調整をし、効率的使用を可能にする方策を確立すること。
  A、国の金を少しでも入れると、成果(工業所有権等)が国に帰するのでは、民間は金を出さない。成果を開発者に帰属させること。
  B、債務負担行為など、政府の民間研究投資への制度的支援をもっと強化すること。
  C、研究開発投資の飛躍的な増加を図ることが必要である。鉄道や道路に投資するより、インターネットを普及させて低料金にするとか、情報ハイウエイを建設、大学の実験設備を最先端のものにする、国家的な研究プロジェクトを組む等、工夫すべき。将来的にはGNPの3%位は開発投資にまわす。
(5)産学官の協力体制を進める。
 大学に関して言えば、マンパワーをもっているが、講座制のためにガンジガラメの状態である。現状ではライフサイエンスやマイクロエレクトロニクスなどの先端分野は、大学では対応できない。大学の体質改善を図ること。
(6) 防衛と大学の連携
 皮肉なことであるが、レーダー開発を始め、現代文明に貢献している画期的技術の多くが、戦争の中から生れ急速な発展を遂げものである。米国の大学の発展はとペンタゴンの関係抜きでは語れない。強大な防衛費を大学の研究に委託してきたからである。わが国は、防衛に対するタブーを打ち破り、世界平和の推進のためにも軍学共同のパイプを持つべきである。
また大学を知的創造の中心として世界レベルに引き上げる。日本の大学のレベルは世界的にみて高く評価されていない。研究者の質やレベル、研究施設、世界的権威の不在等いろんな課題が多い。これらの改善には時間が必要だが、大胆な抜本的改革が必要である。
(7) 各分野に世界的権威者を育成する。
 日本にはある分野における世界的権威者という人が少ない。欧米特に米国の大学特定分野の世界的権威者が多い。これが世界の研究者を米国に惹きつける最大の理由である。日本もこの様な世界的権威者を多く育成しなければならない。日本にノーベル賞受賞者が少ないのも同じ原因によるものである
(8) 創造的研究に対する評価と知的所有権を確立する。
 日本では創造的研究に対する評価制度が確立されていない。また知的所有権に関する観念も成熟していない。このような環境のなかでは、優秀な研究者は育ち難い。青色レーザーを世界で始めて開発した徳島の日亜工業の中村博士は、日本を捨ててもっと自由なアメリカの大学に行ってしまった。一事が万事である。これでは日本に一流の科学者は育たない。大学の改革は焦眉の急である。
(9) 国際協力による研究開発を推進する。
 これも何も新しいことではなく、始められてから既に久しい。最近の研究プロジェクトは一国だけでは負担できないものが増えている。宇宙基地等がその代表的なものである。技術開発は国益が絡むので競争的側面が多いが、同じに、協力しなければ負担が大きくなる。日本も一面協力、一面競争で積極的に国際協力に参加すべきだと思う。
6)世界平和のための文教戦略
≪基本認識≫  現在、世界各国がわが国に寄せる期待は実に大きい。われわれは「世界に開かれた愛国心」の涵養を基礎に置き、「世界から信頼され、尊敬される日本人」となることを心がけねばならない。これは国際化時代におけるわが国学校教育の基本的理念とすべきことである。その為にも海外ボランティア派遣は大いに推奨すべきことである。教育目標を明治以来の「日本国のため日本人」から「国際社会に貢献する日本人の育成」に転換すべきである。
A,教育戦略
 わが国の国策の重要な柱として、大規模な「人づくり」協力を位置付ける。現在、世界的に高まっている日本熱のチャンスを捉えて、留学生及び日本人海外留学生の量的拡大、質的向上を図る。
このことは、発展途上国の「国づくり」に対し、「人づくり」を通して寄与するとともに、先進国間との長期的な貿易摩擦の解消につながり、わが国の国際社会への貢献となる。ひいては自国の重要な安全保障にもつながる。
 (1)ODAの一貫として留学生対策予算を位置づけ、日本の貿易黒字の一部をそれに還元する。
 たとえば、約一千億円(国家予算の約0.2パーセント)の追加予算措置をとれば、OECD諸国から優秀な教師、および発展途上国から留学生を年間計1万人以上日本に招いたり日本から海外へ派遣することが可能となる。(日本は国連大学に1億ドル出しているが、他国は相手にしない。効果の上がる予算の使い方をすべきである。)*国立大学の予算の一部(たとえば0.1パーセント)を国際交流費として認知すること。
わが国は、学校教育の集大成ともいうべき大学の国際化が非常に立ち遅れている。まず、国立大学予算の一部自由化を図り、大学が自前で国際交流を推進できるようにすること。これは、世界からの評価を高めるのみでなく、現在の大学の状況に活力を与える。
*「国際学術賞」を設定する。
 日本への期待は高いが、イメージは余り良くない。国際協力費を効果的に使うためにも、現代の技術文明に転機をもたらす新文明の創造に貢献する学者を対象にして「国際学術賞」を設ける。一人当り10万ドル(約2500万円)とし、三人に授与する。
*世界的に著名な学者が参加する国際的な学会には、年間100万ドル、向こう十年間、助成措置をとる。
 (2)わが国の国策の重要な柱として、大規模な「人づくり」協力を位置づけ、留学生の量的拡大、待遇の質的改善を図る。
 留学生10万人の早期達成を図る。この中曽根内閣の決定は、まだ達成されていない。2000年までに10万人が現在のところ半分の5万人にしかなっていない。 留学生の招請は日本が成し得る世界貢献の一つである。少なくとも30万人ぐらいは招請すべきだと思う。日本は少子化で大学生が減少しつつあるので、その分、外国人留学生を迎えることが可能になると思う。世界の若者を日本に迎えて温かく教育するのが、母性国家日本の使命ではないだろうか。同時に日本人の海外留学生を大幅に拡大。支援体制を取る。波及効果として詰め込み主義の日本の学校教育の是正が期待される。
 世界の人々が住みたい国にする。世界中の人達に「どの国に住みたいか?」 と尋ねてみるとき、「日本に住みたい」と答える人がどれくらいいるだろうか。あまり多くはないと思う。多分、米国、カナダ、オーストラリア、西欧諸国が該当する国となろう。これは生活水準だけの問題でなく心の問題であろう。お金があっても心が貧しければ人は寄って来ない。人が集まって来ない所は発展しない。アメリカが発展を続ける原因は、世界の人を惹きつける魅力があるということである。日本にはこれが欠けているのである。如何すべきか、我々の宿題である。
 *日本留学・海外留学に関する情報中枢センターとしての「留学生センター」を創設する。日本に留学したり、海外に留学したいと思っても、情報不足で選択できない。
 *大学における留学生受入体制を改善する。海外に開かれたモデル大学をつくり、日本語修得、カリキュラム、学位取得、宿舎等の設備など大学の閉鎖性を改める。海外の大学と単位相互互換契約を結ぶ。また、工学部に力点をおいて留学生の受入体制の拡充を図る。技術面の修得は日本語のギャップもそれほど問題にならず、帰国しても実力があれば、指導者としての道が開かれる。
 *産学協同の留学生制度を設ける。
 ハイレベルの人材確保のために、現地の合弁会社や学者を窓口として活用する。また、母国に役立つ実学を重視し、日本的経営や価値観、日本文化を知らせ、さらに工場施設、公共施設など、日本社会に接触する機会を多く持てるよう便宜を図る。そのためには、産学が協同して大量の留学生を受け入れる必要がある。また、日本人留学生が海外に留学した経験を持つことは、祖国を考え、愛国心を培う良い機会である。
(3)国際協力に関わる人材の養成と確保は急務の課題である。
 そのためには、大学の国際化を図ることが焦眉の急であり、各学部に一名ずつ外国人客員教授を入れるなどの処置をとる。省庁の中でも最も国際化の遅れているのが文科省である。思い切って諸規制を緩和し、世界に開かれた文科行政を展開すべきである。具体的には国内外大学間の単位互換制度、科研費取得の簡素化等。
国民の理解を得るための積極的な広報を行なう必要がある。
 *日本の幾つかの大学を選んでセンター・オブ・エクセレンスとして育成し、総ての面で世界的レベルに引き上げる。そのための抜本的改革が必要になる。こうして世界の優秀な人材を日本に集めなければ、これからの発展は見込みがない。
 *世界の重要国家に大学を建設する。日本に留学生を招くとともに、海外の重要拠点に日本の大学を建設するのも価値のあることである。アメリカは中近東のレバノンとエジプトにそれぞれアメリカン大学を100年前に設立しており、中近東全体から優秀な学生達が入学している。卒業生は皆アメリカに好意をもつようになる。こうしてアメリカは、中近東に着々と基盤を築いてきたのである。日本も今からでも遅くないので考えてみる価値があると思う。
 (4)世界の多くの国で行われている徴兵制に代わるものとして、ボランティア義務制度を設ける。
このことは、平和国家として歩むことを世界に宣言したわが国の憲法の精神、国是として大事なことなので、断固として実現すること。
 海外青年協力隊を拡充する。日本には兵役がないので、その代わり、同年代の青年に、兵役に行くつもりで、海外にボランティア活動を行うことを提案したい。基本的には給与はなく、生活費と渡航費は政府が支給する。派遣前には教育期間を設けて厳しく訓錬する必要がある。年間10万人を世界185ヶ国に派遣すれば、かなりの影響を世界に与えることになろう。森内閣時代、教育改革で初等・中等教育にボランティア制度を導入することになったが、高等教育は放置されている。高等教育にこそ、ボランティア実習期間を1〜2年間導入すべきてある。この過程を経たものは、公務員採用に優遇する。
(5)シルバー人材の海外派遣を拡充する。
 これから日本では定年退職したシルバー世代の人が急増するが、彼等の多くは未だ健康で働く意欲もあり、技術を身につけている人が多い。彼等の中で希望する人達を彼等の技術や経験を必要としている途上国に派遣する制度をもっと拡充すべきだと思う。基本的にはボランティアであるが(彼等の大半は年金生活者であると思うので) 日本で生活するより購買力が大きくなると思う。医療面の配慮があれば、かなり実現性があると思う。
(6)教育の荒廃・偏向問題に関して
 家庭倫理の確立と青少年の純潔教育を推進する。如何に国家が強大で繁栄していても、家庭倫理が崩壊し、青少年が純潔を守らず淫乱が横行すれば、間違いなく国家も崩壊に赴くことは必定である。欧米諸国の場合、キリスト教という一つの歯止めがあるが、日本は宗教があっても実生活にほとんど影響はなく、際限なく崩壊に傾くのである。最近の日本の少年達による凶悪犯罪は、これを如実に示している。 これを解決するためには、家庭、学校、社会において道徳教育が必要であり、個人中心の教育基本法の行き過ぎが是正されるべきである。
 @、「教科書検定委員会」を設置する。
 文部省の諮問機関である現在の「教科書検定審議会」を廃止し、新たに独立の行政機関として、文部大臣を委員長とし、学会の第一人者若干名からなる「教科書検定委員会」を設置する。
この委員会で教科書の合否を決定し(字句の訂正を求めるのではない)、文部省の教科書検定課は事務的な業務のみを行なう。  A、教科書検定に関する法律を定め、それに基づいて教科書の合否を決める。
どこの国も、教科書に関する肝心なところは法律で押えている。憲法や教育基本法、さらに国権の最高機関である国会の決議等に反した記述のある教科書は不合格とする。(自由と民主主義を擁護する立場を明確にすること。)
 B、教育の正常化の一環として、日教組の違法行為を厳しく処罰する。合わせて良識的な教育研究団体を援助する。
 C、日韓両国の専門家がお互いの教科書を持ち寄って、共同研究を行ない、その成果をそれぞれ自国の教科書に反映させる。日韓の学者による「日韓古代史」共同研究プロジェクトを開始する。
 D、放送大学の講師陣の人選を慎重にする。
放送大学の布石として、NHK大学講座が設けられているが、その講師陣中に特定のイデオロギーを強く持った者がいる。(NHK通信高校講座にも同様の傾向が見られる。)これではテレビを通じて、イデオロギー偏向教育を大衆的に進めるようなものである。与党は、この実状をよく認識し、早急に対処すべきである。
 B)文化の振興による世界平和・精神の高揚
 文化・芸術・スポーツは、民族・国境・宗教やイデオロギーを超えて、全世界の人々の心を1つに結んでくれる和平の力であり、国民を団結させる強力な国力の一つである。 文化は人間精神を豊かにし、潤いを与え次ぎなる創造を生み出す力の源泉であり、文化・芸術を疎かににする国家は永続できない。歴史上の偉大な国家は素晴らしい文化や芸術を残している。ギリシャ、ローマ、ルネッサンス期のイタリア、近世の西欧等枚挙に暇がない。
文化・スポーツ振興のために大幅な予算装置をこうずる。
 (1)日本文化の世界化を図る。文化は本来、民族に固有なものが多く、他の国に移転が難しい場合が多い。しかし、人間精神の感情は世界共通であるので、言語を超えて感動を呼び起こすことが可能である。音楽や絵画、小説、演劇が世界の人々に国境を超えて影響を与えている。モーツアルト、ベートベン、シェクスピア、ミケランジェロ、ダビンチなど私が語る必要もない。日本から世界に残るべき文化や芸術はでていない。せいぜいカラオケ、ニンテンドー、アニメ等である。しかし、歌舞伎、浮世絵、茶道、華道、陶器等いろんなものがある。これらを世界的価値に高めるのは現代に生きる日本人の課題であろう。サッカー、オリンピックの強化策も重要。
 (2)伝統的文化の保存と近代化を図る。
 日本の伝統文化の中でも後継者がいなくて消えてゆく運命にあるものも多い。特に伝統的工芸品の国宝級の職人技が、後継者がいなくて消えて行くことは耐えがたいことである。これらの職人達が生存中にコンピューターを使ってその技術を後世に残そうとする努力が続けられている。もし、日本人の後継者が見つからない場合は外国人でも構わない。人種、国籍を問わず、やる気のある人に相続させるべきであると考える。
 (3)日本語の世界への普及に努力する。
 日本人は外国語の習得に努力する必要があるが、同時に日本語の世界化にも努力する必要がある。そのため、ドイツのゲーテ・インスティチュートや英国のブリティシュ・カウンシルのような普及機関を全世界に配置する必要がある。言語のみならず文化・芸術の学習の機会も与える必要がある。
 (4)日本語圏会議を開催する。
日本語の普及度の高い国の代表を招待して毎年、定期的に日本語圏会議を開催して日本語の普及を図ると共に親善友好を図る契機とすべきである。よく、日本の援助は「顔の見えない援助」と言われてきたが、日本語を通じての親善は効果が大きいと思う。   (5)英語を第二公用語にする。
『21世紀懇談会』において英語を第二公用語にするという提案がなされて以来、にわかに論議が高まってきた。私はこれに賛成する。インターネットと英語はこれからの世界を語るうえでキーワードになる。インターネットを拒否すれば確実に世界から取り残される。英語もそうである。残念ながら英語は実質的には世界語として機能していることは無視できない。それならば、意地を張るより活用する方が得策というものである。世界との距離はぐっと近くなるはずである。  (6)近隣諸国の言語の普及に努力する。
 従来は日本近代化の必要上、英・独・仏語の学習が中心であらざるを得なかった。 しかしこれからは、近隣友好のみならず、通商・学術上も、韓国語、中国語、ロシア語を学ぶ必要性が増加していくであろう。そのような時代を先取りして中学くらいからこれらの言語の教育を始めたら如何であろうか。そして、大学の入試にも組み入れることを提案したい。  (7) 国立翻訳センターを設立する。
 世界同次元性があらゆる面で進行中であるが、現実的には言語の障壁は大きい。 そのために国立翻訳センターを設立して、国家レベルで翻訳の基準を立てるとともに、翻訳・通訳者の養成と国家試験の施行等を推進することにより、日本の世界化に貢献するのではないかと考える。特に科学技術文献の翻訳の必要度は高いと思われる。同センターのもう一つの使命は、コンピューターによる翻訳・音声認識のソフトの開発である。もしこれが高度に利用できるようになれば、その利便性は計り知れないほど大きい。
7)「国民意識の改善」と「情報戦略」
 ≪基本認識≫
 (1) 情報謀略戦は、今後ますます活発化する。
 冷戦が終焉しても、超大国の軍備増強は従来と変わらない。そして、その巨大な軍事力を背景に、今後ますます恫喝外交・心理謀略戦・テロが活発に展開してくる国もある。
 (2) 国民意識の改善が、諸政策実施の大前提である。
 西側民主主義会社にとって、国民の理解と支持をとりつけることは極めて重要である。外交、防衛、貿易摩擦、行革を初めとする内外の最重要政策課題に関しては、総理・政府の強力なリーダーシップとともに、オピニオン・リーダーによる国民意識改善と健全な世論形成が急がれる。
≪提 言≫
 (1) 総理(政府)はテレビを通じて、直接国民に諸政策の意義を訴えること。
 1.総理は行政府の最高責任者として、国民に直接、諸政策を説明する義務と権利がある。月一回、国民向けのテレビ番組を持つことを特に進言したい。
 2.そのためには、速やかにその障害となっている。「放送法」の根本的改正を図ること。
 (2) 首相官邸に情報・宣伝担当のブレーンを集める。
記者クラブの弊害は大きい。政府の諸政策が正しく国民に伝えられる方法について、専門家の助言が必要である。
  (3)学者・言論人対策を急ぎ、これらの頭脳集団やオピニオン・リーダーを積極的に活用して、自由で健全な論議を喚起する。
 マスコミ偏向の是正は容易でない。タブーに挑戦する竹村健一氏の「報道、2002」、のようなテレビ番組がより多く作られ、茶の間から国民意識の改善が図られることが望ましい。
 (4)情報対策委員会を設置する。
 わが国の情報収集と評価能力は極めて低い。政府内に「情報省」のようなものを設置することが望ましい。少なくても自民党内に情報謀略戦に対応できる機関をつくることが急がれる。そして、欧米諸国の専門機関と情報交換を行なうべきである。
 (5)機密保護法の制定を急ぐ。
 情報謀略戦に対応できるよう、軍事・外交・技術などに関する機密保護法を至急成立させること。
5.「日本総合戦略研究機構」設立の提唱
 ≪設立の必要性≫
 (1)今日の国際環境は、非常に複雑・総合的・不明瞭であり、しかも各国間の相互依存度は極めて高い。
 (2)このような国際社会の中で、わが国が生きぬくためには、グローバルな視野に立って、総合的な外交・国家戦略を早急に確立することである。これは国家的な重要課題となっている。
 (3)それは、従来のたて割型の各省庁では対応がむずかしく、民間の総合力を結集した総合的な戦略研究機構の創設が望まれる。  (4)すでに欧米では、シンクタンクや大学研究所が政府のブレーンとして重要な役割を果たしている。
(5)わが国においても、総合戦略機構の設立は不可欠であり、欧米の戦略シンクタンクのカウンター・パートとしての役割を演ずることが重要である。
≪組織、特色、および活動内容≫
 (1)東京に「日本総合戦略研究機構」(財団法人、または社団法人)を設立し、ワシントンに「日米共同戦略研究所」、ソウルに「日韓共同戦略研究所」を設立する。
 (2)理事会、評議員会の構成は、学者、政治家、財界人、官僚OBを網羅する。
 (3)寄付、補助金、研究委託の受注によって運営する。
 (4)日本で初の国際レベルのシンクタンクとし、欧米との共同研究、カウンター・パートとしての役割を重視する。
 (5)わが国が抱える重要課題について、国際的な協力のもとに学際的な研究を行なう。
 (6)与党、政府官庁、マスコミなど、政策決定者に政策提言する。
タブーのため政府が言いにくく、しかも国と世界にとって重要な課題に関しては、大胆に取り組み、提言するとともに、国内外の啓蒙に努める。